高市早苗首相は昨年11月7日、衆院予算委員会で立憲民主党の岡田克也元幹事長の執拗な質問に答え、台湾有事について「(中国が台湾を)北京政府の支配下に置くためにどういう手段を使うか、いろんなケースが考えられる」と指摘した上で「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と答弁した。その答弁に反発した中国の薛剣駐大阪総領事が「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と自身のXに投稿して日本国民を驚かせたことはまだ記憶に新しい。

日中首脳会談 APEC首脳会議で 2025年10月31日 首相官邸公式サイトから
日本の政治家は中国問題を語る時、神経をすり減らすことが多い。欧州の地から日中間の問題をフォローしていると、「あの人は親中派だ」とか「知中派だ」といったレッテルを貼って報じるメディアが多い。最近は、中国寄りのスタンスで語る政治家に対しては「媚中派」というレッテルがあるのを知った。そこで中国へのスタンスから、親中派、知中派、媚中派という用語の意味合いなどについて、人工知能(AI)の助けを借りて整理してみた。
【親中派】は、中国に対して好意的・友好的な立場を取る個人や勢力を指す。政治、経済、文化などの面で中国との協力関係を重視し、良好な二国間関係を維持しようとする。実例としては、公明党は50年以上前から続く中国と歴史的な関わりがあり、親中派を自負してきた。また、岡田克也氏、海江田万里氏、小渕優子氏などが所属する日中友好議員連盟は中国との対話を重視する。
【知中派】は、中国の事情に精通し、客観的な知識や理解に基づいた判断を行う人々だ。中国の歴史、文化、政治体制、国民性などを深く理解していることになっている。林芳正氏が外相に就任した際、一部から「親中派ではないか」と懸念の声が上がったことがあった。本人は「相手(中国)をよく知っている(知中)ことは、交渉において武器になるが、決して相手に媚びている(媚中)わけではない」と説明している。林氏は「知中派であってもいいが、媚中はいけない」と指摘し、相手を熟知することと迎合することを明確に区別している。
【媚中派】は、中国に対して不自然に、あるいは卑屈に擦り寄っていると批判的に捉えられる際に使われるレッテルだ。「媚びる」という言葉通り、自分の利益や保身のために相手の機嫌を伺い、相手の言いなりになるような態度を指す。多くの場合、対中強硬派や保守層から、中国に甘い態度を取る政治家への蔑称として用いられるケースが多い。二階俊博氏は中国との強力なパイプを持ち、自ら「『媚中派』と呼ばれようとも」と発言し、中国とのチャンネル保持を重視してきた政治家だ。
まとめると、親中派は中立~肯定的に中国との友好・協力関係を重視する。知中派は肯定的・実務的相手をよく知ることで、適切な外交や判断を目指す、といったニュアンスがある。一方、媚中派は相手に迎合し、日本の国益を損なっているというマイナスの響きが強い。
ところで、媚中派という用語は政治家としては余り好ましくないレッテルだ。媚中派は「中国の言いなりになっている」といわれ、、人権問題や領土問題(尖閣諸島など)において、中国を刺激しないために抗議の手を緩めていると受け取られ、国内の保守層からは「弱腰」、「売国」と非難される。
日本の政界に中国共産党政権の政治路線を支持し、それを応援する政治家が実際に存在するから媚中派という造語が出てきたのだろう。思想的に北京の共産党政権に近い日本共産党のような政党が北京の政策を支援し、媚びるような政治活動を行ったとしても不思議ではない。彼らをあえて媚中派と呼ぶ必要はないだろう。問題は、政権を担当する政党(自由民主党)内に北京政府の意向に媚びる議員がいることだ。彼らを媚中派議員と呼ぶわけだ。
媚中派の存在は、中国側の工作活動を無視しては論じられないだろう。典型的な工作はハニートラップだ。色仕掛けによってターゲットを誘惑し、機密情報を引き出したり、スキャンダルを捏造して脅迫・失脚させたりする。そして日本の政治家や外交官の中にはその誘惑の罠に陥るものが少なくない。ハニートラップにひっかった政治家や外交官は恥がさらされることやキャリアへの影響を恐れて沈黙することが多いため、さらに深い泥沼にはまる。中国当局から交際女性を盾に機密情報を要求され、それを拒んだ領事館員が自殺した上海総領事館員自殺事件(2004年)があった。
中国共産党が推進する「千人計画」(現在は「啓明計画」と改称)は、海外の優秀な科学者や技術者を、高い給与や研究費で中国に招致し、技術を移転させることを目的としている。国家レベルの人材採用プロジェクトだ。一方、ハニートラップは主に「色仕掛け・弱みの把握」を餌にし、ターゲットを誘惑して関係を持ち、それを盾に情報を流させたり、中国側に有利な行動をとらせる。ここにきて「啓明計画」でハニートラップが利用されるケースが出てきている。
日本の外交は米国との同盟を最重視し、中国に対しては「戦略的挑戦」と位置づけている。経済関係では、中国とのビジネスを完全に断つ「デカップリング(切り離し)」ではなく、リスクを低減しながら関わり続ける「デリスキング(リスク低減)」が願われている。中国との人的交流が大切である点は間違いないが、中国側のハニートラップや「啓明計画」には要注意だ。対象は政治家、外交官だけではなく、学者、実業家、そしてジャーナリストにまで広がってきているからだ。高市政権はスパイ防止法を迅速に施行すべきだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年2月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






