コストコと書店、似て非なるもの、と言われてもそもそも似ていないじゃないか、と指摘されそうです。私が比喩として考えたのは両方とも商品数は多いのです。ですが、その商品構成が圧倒的に違うという点であります。
コストコは例外もたくさんありますが、基本的に一分野一商品の原則があります。ケチャップならこれ、アイスクリームならこれ…といった具合です。一般スーパーマーケットでは例えばポテトチップス、ビールや飲料水の様々な種類が棚にずらっと並んでいます。あれは場所をとる上に各メーカー種類が多く、メーカーも熾烈の戦いをするのでスーパーとしては売り場面積を無駄に食っているのであります。だけど、コストコは広い売り場で扱い分野を多くする一方、商品数を絞り、パッケージを大きくして大量販売することで圧倒的な競争力を持っていると言えます。
では書店。私は東京に行けば池袋書店戦争と言われるエリアで目的に応じて書店を選んでいます。(書籍事業を展開しているのに書店で本を買う理由はなぜ、と聞かれそうですが、それはまた機会があった時に説明します。)ディープな探し方をするなら巨大なジュンク堂は間違いないのですがあの店に行くには心構えと最低1時間が必要なのです。なぜかといえば広すぎるので探すのに時間がかかるのです。割と書籍を見つけやすいのは旭屋か三省堂です。
例えば旭屋は文庫の在庫量は弱く、最近のものとか売れ線しか置いていません。私の好きな司馬遼太郎なんて一冊もありません。よってザーッとみて15分で勝負が決まるのです。その時に書籍を手に取っていなければ欲しいのはなかったということです。池袋三省堂は展示方法にメリハリがあり、店が独自のフェアなどを通じて推している書籍が分かりやすくなっています。一応在庫書籍数は多い方なのでもう少し深堀したいなとという場合でも対応できます。
ではジュンク堂の長短は何でしょうか?まずフロアが地下1階から9階まであって全部書籍なんです。これだけ本があるので欲しい本が手に入る確率が高い、これが長所です。しかしこれは短所とも言えるのです。まず自分の欲しい分野のフロアに行かねばならないのです。それは一部のビル型家電量販店も同じです。ただ問題は家電と違い、書籍は必ずしもジャンルが正しいわけではないのです。私どもも書籍卸業務をしているのでジャンル分け作業はあるのですが、そのジャンルは時として怪しく、また販売側都合もあるのです。すると微妙なジャンルの本が見つけられず、書店員に聞いたりすると全然違うフロアにあるわけです。

ジュンク堂書店HPより
2つ目の問題はジュンク堂に限ったわけではないのですが、文庫の場合、売れっ子作家の文庫は複数の出版社から出ているのです。これは探す方からすると最悪なのです。例えば今野敏といった多作家だと3社か4社にまたがります。一方大半の書店の文庫コーナーは出版社ごとの並びです。ということは今野敏の本を探すのにあちらこちらぐるぐる回らなくてはいけないのです。
3つ目に書架を丹念には見ないということです。書店=書架だと思います。ところが多くの客は目的がなく「何か面白い本、ないかな?」と探します。ということは平積みや面陳列の書籍で帯のキャッチフレーズをみて手に取る、という流れです。書店の場所の大半を占める書架を丹念に見て探せる人は限られた人か、特定の書籍を探している人なのです。だから私はジュンク堂に行くときは心構えがいるのです。
以上の通り、書店の最大の問題点は探せない、これが実は読者が減っている最大の理由の一つではないか、と私は考えています。コストコは一分野一商品なので必要か否か、非常に明白なのです。欲しければほぼ何も考えずに手に取るはずです。だけど書籍の場合は星の数ほどある書籍群から自分の欲しい本を見つけなくてはいけないのです。こんなのは試練であり、苦しく、何も楽しくないのです。
先日、バンクーバーにある日系の食品系の店に行きました。客はわんさか入っていますが、買っている人は少ないのです。ではわんさかいる客は何しに来たのかと言えば「見に来ただけ」なのです。数人でたむろって通路をふさぎながらだべって「あぁ、これ売っている!」「これ〇〇に比べて安くない?」といった具合。なぜそうなるか、といえば店の商品陳列の品数が多すぎる上にメリハリがない並べ方なので目線が定まらず、買い物モードにならないのです。
ドンキ方式、つまり圧縮陳列は客を楽しませる手法ですが、それはどんな商売でも使えるわけじゃないのです。大量に買わせ、客を捌くコストコが圧縮陳列をしたら売り上げは大きく下がるでしょう。書店の陳列方法は元祖圧縮陳列と言っても過言ではありません。しかし、客が選べないのですから、見せ方を大幅に改善すべきだと思います。私なら書架方式から平積み、面陳列主体に変えて書籍に店が用意したQRコードをかざせば似た書籍や同じ作者の在庫状況がわかり、その置き場を示すほか、ボタンを押せば書店員が書架からそれを取り出してピックアップ台に置いておいてくれるといった斬新な手段もあると思うのです。
書籍の乱読をしている私が感じるのは新刊書のクオリティが下がっている点です。これなら古くても名著とされる書を読んだ方がいいと思うことはしばしばですが、書店業を営んでいる手前、読まざるを得ないのです。多分、書店の生き残りというより出版社の乱立に原因がある気がします。出版社によっては超オタク系の書籍を出すところも多く、陽の目を見ない新刊が大半です。個人的には出版業界の再編と読み手、買い手の立場を考えたビジネスをしないと書店がいくらギミッキーな工夫をしても限界はあると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年2月13日の記事より転載させていただきました。





