尾崎正直官房副長官は25日の記者会見で、イランの首都テヘランで現地時間1月20日に日本人1人が現地当局に拘束されたと明らかにした。米政府系メディア「ラジオ自由欧州・ラジオ自由」は、NHKのテヘラン支局長が拘束されたと伝えた。同メディアによると、支局長は政治犯らが収監されているテヘラン北部エビン刑務所へ今月23日に身柄を移されたという。

テヘラン駐在の日本大使、塚田玉樹氏、IRNA通信2026年2月24日から
「エビン刑務所」と聞いて、サイデ・ファティさんの話を思い出した。イランでは2022年9月、22歳のクルド系イラン人のマーサー・アミニさん(Mahsa Amini)がイスラムの教えに基づいて正しくヒジャブを着用していなかったという理由で風紀警察に拘束され、刑務所で尋問を受けた後、意識不明に陥り、同月16日、病院で死去した。このことが報じられると、イラン全土で女性の権利などを要求した抗議デモが広がった。同抗議デモに参加した一人のジャーナリスト、サイデ・ファティ(Saeedeh Fathi)さんは2022年10月16日、警察当局によって逮捕され、「エビン刑務所」に拘束された。2か月後釈放され、ウィーンで現在、フリー・ジャーナリストとして活躍している。ファティ女史はエヴィン刑務所での体験談をオーストリアの日刊紙「スタンダード」(2025年6月28日付)に寄稿した。
NHKのテヘラン支局長もファティさんが収監されていた「エビン刑務所」に拘束されているというのだ。同刑務所にはペルシャ語と英語で「エビン拘置所」(Evin House of Detention)と書かれた看板が掛かっている。イラン国民は誰でも知っている名称であり、同時に恐れている場所という。ファティさんによると、「エビンは普通の拘置所ではなく、イラン共和国の抑圧装置の典型的な場所だ。そこでは反体制派の活動家、ジャーナリスト、デモ参加者が収容されている」という。同女史が収容された日の夜、8人の囚人が亡くなったという。
ここで気になる点は、NHKの支局長が1月20日に逮捕され、2月23日に「エヴィン刑務所」に搬送されたということだ。逮捕から1か月以上が経過している。そして日本側は今月25日に日本人(NHKの支局長)の逮捕を明らかにしたことになる。
もちろん、駐イランの日本大使館関係者は日本人の釈放を求めてテヘラン当局と交渉をしてきたはずだ。しかし、同支局長は依然、釈放されず、「エヴィン刑務所」に移送された。釈放交渉がうまくいっていないのだろうか。
ところで、イラン国営IRNA通信は今月24日、テヘラン駐在の塚田玉樹大使がテヘラン市当局と会談したという内容の記事を配信した。
記事の見出しは、「駐イランの日本大使、テヘランの市当局者との会合で、テヘランと東京のより広範な協力を求めた」だ。以下、同記事を一部紹介する。
「塚田玉樹氏は、テヘラン市当局との会談を、日本とテヘランの都市管理との関係強化に向けた前向きな一歩だと述べた。彼は、特に文化、技術、災害強靭性分野で、テヘランと東京の二国間協力拡大の重要性を強調した。塚田氏は、アジア市長フォーラムとの協力やテヘラン地下鉄駅での日本人写真展の計画など、共同文化イニシアチブを強調した。また、テヘランにおける日本国際協力機構(JICA)の役割を指摘し、過去の大気汚染防止、廃棄物管理、医療機器供給に関する協力関係を指摘した」
「大使はまた、持続可能な水供給や電力網の安定化、水損失の削減やエネルギー効率の向上など、協力の意欲を示した。テヘラン市長のアリレザ・ザカニ氏は、日本の前向きな姿勢を歓迎し、地震対策がパートナーシップの中核となる可能性があると強調した。彼は日本の病院改修の取り組みを称賛し、テヘランの広範な都市再生、水リサイクルの拡充、危機対応計画を概説し、市当局の長期的な強靭性へのコミットメントを強調した」
上記のIRNA通信の記事はイランと日本両国間というより、両国の首都テヘランと東京間の協力関係についての内容だ。記事自体はごく普通の内容で、拘束中の日本人問題については何も言及されていない。
ただ、IRNA通信が日本大使の話を配信した翌日(25日)、尾崎正直官房副長官は東京で一人の日本人の拘束を明らかにしている。憶測だが、塚田大使はテヘラン当局に拘束中の日本人の釈放を要求したが、何らかの理由から即釈放要求が拒否されたのかもしれない。だから、尾崎官房副長官の発表となったのではないか。
イランは現在、米国の軍事攻撃を考え、緊急事態体制下にある。同時に、国内の反政府抗議デモの再発を恐れ、反体制派活動家、外国人ジャーナリストたちへの言動をこれまで以上に警戒しているはずだ。米軍の攻撃が始まれば、エビン刑務所に拘束中の政治犯の安全が懸念される。それだけに、日本側も焦っているわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年2月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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