米国の対イラン軍事圧力の目的:ICBM・核開発・政権転覆の背景と狙い

米国とイランの関係悪化は、1979年のイスラム革命以降、長期にわたって続いてきたが、2026年時点では複数の要因が重なり、緊張は一段と高まっている。米国は、軍事力を含む圧力戦略を通じて、イランの核・ミサイル能力の制限、地域的脅威の抑止、さらに体制への圧力を背景とした交渉上の優位性の確保を図っているとみられる。

1.核兵器開発阻止と核能力の不信

米国は現イラン政府が核兵器を保有することを絶対に容認しない立場を強調している。JD・バンス米副大統領も、「イランは核兵器を持つべきでない」と明言し、もし核兵器開発の道を選べば「軍事目標」になる可能性を示唆したと報じられている。これは軍事圧力と外交交渉の両面戦略の一部と位置付けられる。さらに、米側はイランが米主導の核施設攻撃後に核プログラムを再構築しようとしているという証拠を見ていると述べており、外交の場でも核開発の全面放棄を求めている。これらはいずれも核能力の抑止を意図したものだ。

バンス副大統領 同副大統領Xより

一方、イラン側は自国の核計画は平和利用目的であり、核兵器開発を否定していると反論している。米国側の主張を「大嘘」と呼び、核開発とミサイル能力に関して強く否定した。

2.ICBM・弾道ミサイル能力への懸念

米国がイランへの軍事的圧力を強める大きな理由のひとつに、イランによる弾道ミサイル能力の強化、特に大陸間弾道ミサイル(ICBM)への関心が挙げられる。米政府内では、核開発だけでなくミサイル能力の成長を重大な脅威と見なす声が強い。米国務長官やトランプ政権関係者は、イランが米本土や同盟国を射程に入れるミサイル開発を進めている可能性を指摘しているとされる。こうした能力は核搭載と組み合わせると破滅的なリスクを生み得るため、米側は交渉の場で核問題に加えてミサイル開発の制限を要求している。

また共和党内では、2015年に成立したオバマ政権下のイランとの核合意(JCPOA)にミサイル制限が含まれていなかったことへの批判が根強い。テキサス州のテッド・クルーズ上院議員は、当時の核合意がイランに巨額の資金を流入させ、それが弾道ミサイル攻撃に使われた可能性を指摘していた。クルーズ議員は「オバマ政権が核合意でイランに送った資金が、米軍基地を攻撃するミサイルを助けた」と述べ、核合意の構造的な欠陥としてミサイル制限を含まない点を批判した。

この批判は単なる過去の論争にとどまらず、トランプ政権一期目でも核合意離脱の主要な根拠のひとつとして用いられた。共和党内の外交強硬派は、合意が核関連活動の抑制に限定され、弾道ミサイルや関連技術の開発には一切触れていない点を問題視してきた。これは米国の安全保障政策におけるミサイル抑止・制限の優先順位が高いことを示している。

両者の立場を合わせると、米国がICBM・弾道ミサイル能力を含むイランの軍事的能力全般を懸念しているのは、単に核兵器開発だけでなく、核と結びついた長距離ミサイル能力の増強が米国や同盟国にとって安全保障上の決定的な脅威になり得るからだという認識が根底にあるといえる。

3.米国の軍事圧力と外交交渉の二重戦略

現在、米国は外交交渉と軍事的圧力の両方を同時進行させているように見える。外交面では、2月26日にスイス・ジュネーブで核協議が予定され、米国はイランに核放棄と一切の核兵器開発停止を要求している。一方で、米側は複数の艦艇や軍事力を中東に展開し、攻撃に備える姿勢も見せている。これは交渉を有利に進めるための「圧力カード」として機能している。

4.米国内の政治的文脈と体制転換の議論

一部の米国内論者や政策専門家は、イランの体制転換や内部崩壊を視野に入れた観点から現状を論じている。こうした見解では、近年の経済危機や大規模な抗議活動が体制に深刻な亀裂を生み出しており、米国による外交・経済・軍事的圧力が結果的に政権の弱体化や変革を促し得ると主張されている。

その代表例が、トランプ政権一期目に国家安全保障会議(NSC)で要職を務め、現在はトランプ政権に近い保守系シンクタンク「アメリカ第一主義研究所(AFPI)」で安全保障政策を研究するフレッド・フライツの論考である。フライツは、近年の抗議運動は過去とは質的に異なり、経済崩壊、インフレ、資源不足、政治的抑圧への不満が複合的に噴出した結果、体制の正統性そのものを揺るがす「不可逆的な変化」をもたらしつつあると論じている。

同氏は、こうした国内動向が米国の国益とも結び付くとし、制裁や外交的圧力を通じて体制への圧迫を強めることが、イランの行動変容や将来的な体制変化につながる可能性があるとの立場を示している。ただし、これらはあくまで政策論争上の主張にとどまり、体制転換を公式に掲げた米政府方針として明示されているわけではない。

一方、イラン国内では経済悪化と政治的不満が抗議デモという形で継続的に表面化しており、こうした不安定要因は、米国にとっても対イラン交渉や圧力戦略を考える上で無視できない影響要因となっている。

まとめ:軍事圧力の多層的な狙い

米国の対イラン軍事圧力にはいくつかの明確な狙いがある:

  • 核兵器開発の阻止:イランが核兵器を保有することを断固として認めないという立場。
  • ICBM・ミサイル能力の抑制:米国全土や同盟国を攻撃できる可能性のあるミサイル開発の阻止。
  • 交渉での優位性を確保:軍事的圧力が外交交渉でのカードとして機能している。
  • 体制への間接的圧力:内部不満と外部圧力が併存する状況を利用した体制への影響。

これらは一体となって、米国が「イランは地域安全保障と世界秩序にとって重大な脅威である」とする戦略的評価に基づいていると言える。現在の対立は単なる核問題を超え、ミサイル開発、政権の政治的安定性、そして国際的な力のバランスをめぐるより広範な争点を含んでいる。

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