高校生のなりたい職業1位「国家・地方公務員」はもはや安定の代名詞ではないのか

中高生の将来就きたい職業として国家公務員や地方公務員が上位に挙がる一方、実際の現場では若手職員の早期退職が増えている。安定志向と現実の職場環境との間に生じたギャップは、少子化による人材不足とも重なり、行政の持続可能性に影を落としている。

  • LINEリサーチの2025年調査では、中学生・高校生のなりたい職業で国家公務員や地方公務員が上位に入り、特に高校生では男女ともに1位となった。理由として「安定している」「社会に貢献できる」が多く挙げられ、経済の先行き不透明感やAI進化による雇用不安が背景にあると分析されている。
  • 一方で、総務省のデータによると地方公務員の普通退職者数は過去10年で増加傾向にあり、特に25〜35歳未満の自己都合退職が目立つ。国家公務員でも採用10年未満の退職者は2023年度に203人と、2014年度の3倍超に増えている。
  • 早期退職の背景には、単なる業務の過重さだけでなく、将来像が描けないという「見切り」の心理があると指摘される。硬直的な人事制度や年功序列の残存、頻繁な異動による専門性蓄積の難しさ、管理職手前での待遇停滞などが若手の成長意欲を削ぐ要因とされる。
  • 少子化の進行も状況を悪化させている。2025年の出生数は約66万8千人と過去最少を更新し、生産年齢人口の減少が加速している。地方自治体では2023年度に45都道府県で採用予定数を下回り、受験者層そのものの縮小が顕在化している。
  • 地方では人口減少と高齢化により行政ニーズが複雑化する一方、人手不足が深刻化している。応募ゼロの職種も出始めており、将来的には小規模自治体で公務員充足率が6〜7割に低下するとの試算もある。
  • 若手の離職増加は残存職員の負担増につながり、さらなる離職を招く悪循環を生む。公務員不足が進めば、子育て支援や教育、福祉など基礎的な行政サービスの質低下を通じて、少子化をさらに加速させる恐れがある。
  • 専門家や現場からは、人事院勧告に基づく初任給引き上げや能力に応じた昇進制度の導入、専門職の処遇改善など、年功序列からの脱却を求める声が上がっている。若手が将来像を描ける制度設計が不可欠だとの指摘も多い。

中高生の公務員志向は、日本社会にとって貴重な人材基盤となり得る。しかし、職場環境や制度がそれに応えられなければ、期待は失望に変わる。少子化と人材流出が同時進行する中、行政の持続可能性を確保するためには、人事制度改革と労働政策の抜本的な見直しが急務となっている。

west/iStock

コメント投稿をご希望の方は、投稿者様登録フォームより登録ください。

コメント