イラン戦争下で景気は浮揚できるか?

遂に石油の備蓄放出が決まりました。IEA(国際エネルギー機関)が放出を決めたのは全部で4億バーレルで前回のウクライナ戦争の時の1.8億バレルの2倍以上になります。日本も同様に放出を行い、ガソリンなどの末端価格の抑制を行います。日本ではガソリン価格がリッター当たり200円という節目が近づく中で政府が無策であれば世論から厳しい批判を浴びるので、それを交わすためにも早期の判断を下したのだとみています。

戦争の行方がまだわからない中で放出するには早すぎないか、という意見もあるようです。正直賭けだと思います。戦争を止めるかどうか、ホルムズ海峡の通行の実質封鎖を解除できるかはトランプ氏次第であり、氏のころころ変わる発言には信憑性と精度がほぼなく、また取り巻きの発言も最近は「あくまでも大統領の判断だが…」と断りを入れるケースが目立っています。

トランプ大統領と高市早苗自民党新総裁

ご承知の通り、トランプ2.0の取り巻きはYESMANばかりを集めているので言われたことを黙々とこなす高官ばかりであり、政権内に対立軸がありません。ただ、私にはどうも口にはしないけれど不満を抱えている高官がちらほらいるようで我慢をしながら言われたことだけをする感じも見受けられます。高官たちもそれなりに賢いわけで物事の行方を見ながら刻々と判断をする中で気持ちと行動が裏腹と感じているのかもしれません。

では景気の話です。日本を含むアジア地区はインフレが再び騰勢になるとみています。理由は原油が十分ではなく高騰していることが理由であり、これは農産物から小売業や飲食業まで多くの分野で影響を受けるとみています。多少、備蓄放出をしても価格は大きくは下がらないと思います。消費者物価指数はこのところやや収まりを見せていましたが、4月に行われる3月分のCPI発表で大幅な上昇となると見込んでいます。実際にはその数字の発表を待たなくしてじわじわと生活実感として価格上昇を感じる上に、4月1日は一般的に価格改定の日に当たるのでボディブローのように効いてくるとみています。

ではあまり原油に影響を受けないはずのカナダはどうかと言えばこれも違う理由で酷い状況で散々であります。特に不動産開発業者が詰まってしまい、青色吐息と言ってもよいでしょう。明日、ある中堅デベロッパーの社長が私に会いたいというので何かと思えばシニアケアビジネスについて相談したいと。彼らは高層のコンドミニアムを開発し続けてきたのに今更シニアケアというのも変わり身が早すぎます。

繁華街を歩けば商店にはFor Leaseの看板が軒並み並び、店舗が閉まってしまったところが数多くあります。スタバも街からどんどん消えている中、個人事業主がしゃれたカフェをちらほら開業していますが、カフェ事業を当地で8年間経営した者として言わせていただければ一等地の賃料が払えるほどコーヒーは儲からないのであります。ある飲食系経営者はぽろっと「今は儲かるかどうかよりもやらなきゃいけない」という一種の悲壮感すら漂います。

様々な指標と肌感覚を掛け合わせながら見る限り、北米経済は精彩に欠く状態がしばらく続くとみています。どれぐらいになるかわかりませんが、半年では収まらないと思います。1-2年は覚悟かなという気がします。理由は関税問題と外国人労働者や留学生の絞り込みを行い過ぎたことで経済のエンジンに推進力が無くなっていることが最大の理由です。これは日本が北米に学ぶべきですが、外国人労働者が支える経済の底辺は非常に重要なものがあり、政策変更でそれを急変させたアメリカとカナダは高い授業料を払っていると言えます。

ましてやイラン戦争が勃発している中、浮いた話はまずないと考えてよいでしょう。先日も述べましたが、戦争がいつ終わるかはトランプ氏の判断もありますが、怒るイランがどこで矛先を収めるか次第でもあります。アメリカは戦争の実践が決して巧妙とは言えないので、この戦争は武力では勝るものの得るものはあまりない結果になるとみています。つまりかつての朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン侵攻などと同様、実質負けか、良くて引き分け程度だと思います。それを考えるとしばし悲観主義の雲が覆うかもしれません。

日本経済はファンダメンタルズは悪くなく、建設需要もオフィス需要も旺盛なので底堅さはあると思いますが、消費はリード出来ない可能性が出てきています。財布の紐に関しては外から見ると多少踊っているな、と感じるレベルだったのでちょうどよいぐらいなのかもしれません。日本のGDPはインフレもあることから引き続き1.5%程度の成長は可能だと思います。一方のカナダは成長率がフラット、アメリカもかなり低い成長率になるとみており、今後の金融政策などのかじ取りが注目されるでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年3月12日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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