労働者への分配は多い? 賃金と雇主の社会負担 対GDP比の国際比較

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この記事では、GDPの分配面である雇用者報酬と、その内訳項目の賃金・俸給雇い主の社会負担について対GDP比を計算した結果をご紹介します。

1. 雇用者報酬の対GDP比

雇用者報酬とは、GDPのうち労働力を提供した雇用者に支払われる企業から見た人件費に相当します。

雇用者に直接支払われる賃金・俸給と、直接支払われない企業側の負担となる雇主の社会負担で構成されています。

今回は各国で、GDPのうちこれらの構成比率がどのようになっているのか、国際比較してみたいと思います。

まずは、雇用者報酬(Compensation of employees)です。

雇用者報酬 対GDP比はいわゆる労働分配率に近い指標ですが、GDPには個人事業主の稼ぎ(家計の混合所得)や、持ち家の帰属家賃(家計の営業余剰)も含まれるため、雇用者の稼ぎがどれだけ雇用者に分配されたかという指標とはなりません。

特に、個人事業主の多い国(イタリアなど)と少ない国(アメリカ、日本など)では大きく数値が乖離するはずですので、ご留意いただければ幸いです。

個人事業主に分配される所得は、混合所得と呼ばれ、雇用者報酬とは別の項目として扱われます。

図1 雇用者報酬 対GDP比
OECD Data Explorerより

図1が主要先進国の雇用者報酬 対GDP比を計算した推移グラフです。

各国で50%程度の一定範囲得推移している事が確認できますね。

多くの主要先進国で、GDPの約50%は雇用者報酬として分配されている事になります。

韓国はやや低い水準から上昇傾向が続き、近年ではカナダやイギリスと同程度です。

一方でイタリアは、相対的にかなり低い水準が続いています。

図2 個人事業主割合 2022年
OECD.Statより

各国の労働者のうち個人事業主の占める割合を計算してみると、韓国、イタリアで高く、カナダ、アメリカで低い状況です。

図3 雇用者報酬 対GDP比 2023年
OECD Data Explorerより

図3が雇用者報酬 対GDP比の2023年の国際比較です。

日本、アメリカ、ドイツなど主要先進国は50%を超え、先進国で構成されるOECDの中でも相対的に高い水準となっています。

日本は50.9%で、OECD38か国中8位と高い水準です。

一方で、イタリアが38.4%でかなり低い水準なのが印象的です。

イタリアは個人事業主の割合が高く、失業率も高い事で知られています。

前回までにご紹介した通り、雇用者1人あたり雇用者報酬は先進国の中でも高い方です。

2. 賃金・俸給の対GDP比

続いて、雇用者に直接支払われる賃金・俸給 対GDP比を見ていきましょう。

図3 賃金・俸給 対GDP比
OECD Data Explorerより

図3が主要先進国における賃金・俸給 対GDP比の推移です。

雇用者報酬と同様に、各国とも一定範囲で横ばい傾向でイタリアだけ低い状況です。

ただし、横ばいと言っても長期的に見るとやや低下傾向が続いている事が確認できますね。

雇主の社会負担生産・輸入品に課される税固定資本減耗など他の構成項目のシェアが拡大している事が予想されます。

また、雇用者報酬と比べるとOECD平均値との差が小さい事も確認できます。

他の先進国と比べて、主要先進国では賃金・俸給以外の分配項目の比率が高い事になりそうです。

さらに、賃金・俸給ではフランスの水準が雇用者報酬よりも一段低くなっている事が確認できます。

フランスはイタリアと共に、雇主の社会負担が多く、企業側にとって雇用維持の負担が多い国という特徴があります。

その分、賃金・俸給の構成比率が低下しているような印象を受けますね。

図4 賃金・俸給 対GDP比 2023年
OECD Data Explorerより

図4が2023年の国際比較です。

主要先進国は軒並み雇用者報酬 対GDP比よりも順位を落としています。

日本は43.1%でOECD35か国中9位と、雇用者報酬 対GDP比よりも順位が低下します。

フランスが38.0%で雇用者報酬と比べると大きく順位が低下している事が特徴的です。

3. 雇主の社会負担の対GDP比

最後に、雇主の社会負担 対GDP比です。

企業にとって、人件費のうち雇用者に対して支払う給与以外の追加費用と考えてよいと思います。

図5 雇主の社会負担 対GDP比
OECD Data Explorerより

図5が雇主の社会負担 対GDP比を計算した推移グラフです。

日本は徐々に上昇傾向となっていますが、2022年でOECDの平均値に追いついたくらいで、他の主要先進国と比較して低い水準が続いてきたことになります。

フランスがかなり高い水準で、イタリアも個人事業主の比率が高い割にアメリカを上回る高水準となっています。

アメリカ、ドイツもOECD平均値を上回って推移していますね。

一方で、カナダと韓国が低めなのも特徴的です。

図6 雇主の社会負担 対GDP比 2023年
OECD Data Explorerより

図6が雇主の社会負担 対GDP比について2023年の国際比較です。

日本は7.8%でOECD35か国中20位とやや低い方になります。

フランスが13.3%で先進国の中では最も負担の大きな国です。

高福祉高負担と言われる北欧諸国のうち、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドは中程度、デンマークがかなり低い水準なのが印象的ですね。

再分配の原資を企業側というよりも、雇用者側に求めるような仕組みなのかもしれません。

家計が最終的に支払う純社会負担や、受取側の社会給付を扱う際に注目したいポイントです。

4. 雇用者報酬 対GDP比の特徴

この記事では、GDP分配面のうち雇用者への労働の対価となる雇用者報酬と、その内訳項目の賃金・俸給雇主の社会負担についてGDPとの構成比率を計算し、国際比較してみました。

日本の雇用者報酬は対GDP比で見れば先進国の中でも多い方になります。

ただし、企業側負担分である雇主の社会負担では、かなり低い水準から上昇傾向ではありますが、近年で先進国中程度くらいになった程度で、相対的に見れば他の主要先進国よりも低い状況です。

一方で、生産年齢人口比率が日本と近く、失業率の高いフランスでは雇主の社会負担がかなり大きなウェイトを占めます。

フランスと日本は経済状況が似ている部分も多いですが、このような所得の再分配に関連する部分では異なる傾向も多いのが特徴的です。

付加価値とその分配、更に再分配と所得格差・相対的貧困は関連します。

私たち企業からすると付加価値の生産が基本となりますが、その後の分配・再分配も含めて考えると、色々と示唆深い統計でもあるように思えます。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2026年3月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。

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