日本はアニメをどう成長させるのだろうか?

日本のアニメ業界を学術的に分析できる日本有数の専門家、中山淳雄さんと先般、2人で食事をしながら様々なディスカッションをしました。氏とは10年来のお付き合いで様々な接点があったのですが、私どもが業務としてアニメを扱うようになってからあまり話をする機会がなかったので東京に行った際、久々にお会いする機会を設けました。

氏は物事をグローバル、大所高所から見る能力が非常に優れています。どのアニメがヒットするか、というミクロの話ではありません。私もミクロの話をされると窮するのでそのあたりの波長は合います。

実は彼に会いたかったもう一つの理由は日本のアニメを含むエンタメ産業は今や自動車産業の次の規模に育ちつつあるとされ、今後、海外での飛躍的成長が期待される産業だ、とメディアなどを通じて再三言われている点への疑問なのです。私がカナダでその受け皿をしながらBtoCのビジネスをしている限り、「エンタメ、そんなに盛り上がっている?ほんまかいな?」と思わざるを得ないのです。海外における日本企業のエンタメ、アニメ産業の存在感はかなり薄いのであります。

R.M. Nunes/iStock

このギャップは何でしょうか?数字が伴っているので一定の経済規模はあるはずなのになぜ実感を伴って盛り上がらないのだろうとずっと考えていました。そのヒントが見えた気がします。

氏曰く、日本のアニメは年間300本。そのうち、ヒットするのは10本、海外に出せるのは数本、という世界とのこと。一方、アニメ業界は繁忙状態が続く、と言われます。26年度も27年度も28年度分も既にいっぱいだと。なるほど繁忙のようです。でもそれってよく考えるとおかしくないでしょうか?忙しいなら規模を大きくすればよい、ですよね。でもアニメ業界はそれができないのだそうです。理由は人海戦術、そしてそのコンテンツクリエーターは約6200人しかいないのです。この数が増えない、これがほぼすべての目立たない主因であります。

例えば自動車産業にしろ、建設業にしろ、その特徴はすそ野の広さなのです。重層化された産業構造とそこに従事する人はおびただしい人数です。ですが、アニメ産業って6200人のクリエーターがほぼボトムラインなのです。これって中規模企業の従業員数と同じレベルです。これでこの業界を成長させようというのがそもそも無理なのだと私は直感しました。(氏には言っていませんが。)

私が主張したのは日本の本、雑誌が昔から海外で売れる一つの理由は日本の印刷技術、製本技術、写真なりイラストなりのクオリティの高さであり、永久保存できるお宝になるから価格に関係なく欲しい人は抱きかかえるようにして買っていくのです。映像でもその処理や画質、更に盛り上げる仕組みなどコンテンツだけではなく、総合力故のアニメ産業であるのにどうしても注目はコンテンツに傾注しやすいのだと考えています。

例えばアニメやエンタメが作り出す文化的影響度の押出しもあります。以前にも書いたと思いますが、カナダのアニメイベントに行けばコスチュームに身をまとった非日本人のグループが日本のアニソンなどで盛り上がります。歌わず、踊りだけのグループもあれば日本語に長けているのか、日本語で歌い切るグループもあります。少なくとも私は中国語も韓国語の歌も聞いたことがありません。日本のエンタメが如何に若者を中心に浸透しているかはっきりわかります。ですが、そこに日本の会社の姿はほとんどないのです。我々の会社が「本物の原画集を売っています!」とどや顔で出店しているぐらいなのです。

多分、アニメやエンタメ産業を本格化させるには素晴らしいのに目立たない技術の大成であることを理解してもらうことが必要ではないでしょうか?その中で私が氏に強く主張したのが書籍などの多言語化であります。私は今年から日本人の国際化と共に一種の日本学の分野として日本を外国人に理解してもらうことに取り組みます。その中で日本の読書文化は素晴らしく、そのコンテンツも立派なものが多いけれど外国人とはほぼ無縁の関係でした。一部の出版社が版権ビジネスで外国の出版社に売れそうな書籍の版権を売っています。でも私、このビジネスってショートケーキのイチゴだけを売っているようなもったいない発想だと思うのです。

一部の雑誌、例えばブルータス、ポパイなどは不定期ながらも完全英語版を日本国内で発行し始めています。我々はそれを輸入販売していますが、すぐに売り切れます。また一部の書籍は日英併記版が数年前から出ているのですが、それらは確実にさばけます。皆、絵や写真ばかりではなく、コンテンツを読みたいのです。顧客に翻訳機を使えなんて私は言えません。

今、AIがここまで浸透してきたなら翻訳はAIが主体でやり、微調整を翻訳家が行なう仕組みにすれば時間とコストは大幅に削減できるでしょう。そして現地で刷るのではなく、日本の紙質、印刷など最先端の技術を取り混ぜながらジャパンクオリティをハードもソフトも前面に押し出す、そのような仕組みを作れたらよいと思うのです。時計といえばメード イン スイスであるようにアニメはメード イン ジャパンがブランドなのです。

もちろん、日本の出版社は資本的に弱小なところが多いけれど発想を転換したらどうでしょうか?まず海外での書籍販売は返本がない(実務的にできない)のです。これは出版社にとって売り切りになるのでリスクは少ないはずです。次に最近はかなり少量でも印刷できる技術が出来ています。それこそ1000部でもできるのです。それを通じてクリエーターを含むアニメ業界のアントレプレナーを生み出し、彼らが稼げる人になるべきだと思います。

またアニメファンは誰でも知っている王道ばかりが好きというわけではありません。男性好み、女性好みでかなりディープなものも多数存在します。彼らはそこまで知り尽くしている、だけど売る商材がない、これが現実なのです。またアニメのストーリーがファンをくぎ付けにします。それが継続的であり、かつ病みつきになることに意味があるのでしょう。「ワンピース」なんて第1巻から読むにはかなりエネルギーがいります。だけど好きな人がいるからもうすぐ114巻が出るのです。私はライブライブのCD、買いまくっています。もうほぼオートマチックに買っています。それは好きにさせ、まるでサブスクのようにお金を落とし、推し活する継続力があるのです。

この業界ほど成長余力があるところはないと思います。私は書籍文化は窮地にある、と言われますが、これほど金のなりそうな木もないと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年3月17日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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