イトーヨーカ堂が非正社員比率を90%に引き上げるという。
厚労省の推し進める正社員化の流れをあざ笑うかのような決定だ。
見出しだけ見て「労働者の使い捨てだ!けしからん!」と思う人がいるかもしれないが、それは全然違う。というわけで、以下に重要なポイントをまとめておこう。
・正社員削減というより、むしろ非正規雇用のキャリアパス整備
実は、もともと業界平均で80%が非正規という状況でそれを9割に引き上げることにそれほどの意味はない。むしろ重要なのは、非正規の中に専門職や上位マネジメントへのキャリアパスを整備し、基幹雇用と位置付けていることだろう。
専門性の高い職務には職務内容に応じた「現在の2~3倍の給与」を払うわけだからこれは適正な職務給化への第一歩だ。
正社員がとれるだけとった後の残りカスを下請けや非正規で分配している業界とどちらが健全かは言うまでもない(個人的に本件をメディアがどう報じるかに興味がある)。
「格差是正のために正社員制度を守れ」じゃなくて、格差是正のためには正社員制度を無くすことが必要だということだ。
・非正社員化で雇用数が増えている。
計画によれば、非正社員化にともない、全体の従業員数は増えている。
たまに「終身雇用をやめれば失業者が増えてしまう」なんてとんちんかんなことを言う人がいるが、現実にはむしろ雇用が増えるわけだ。
終身雇用という不条理なコストを無くすのだから当然だろう。
という具合に、労働者にとっても企業にとっても、雇用の流動化はハッピーな結果をもたらしてくれるものだ。
厚生年金保険料等の天引きが出来なくなる厚労省としては実に面白くないだろうが、非正規雇用の比率の高い流通系を中心に、これからどんどんこういった流れが広まり最終的に正社員制度は空洞化するはずだ。
とりあえず、ヨーカ堂の勇気ある決断にエールを送りたい。
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2012年9月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。