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正直に言う。起業本に書いてある「自分の強みを見つけましょう」というアドバイス、あれは半分嘘だと思っている。
いや、嘘は言い過ぎか。でも少なくとも、あの言葉を真に受けて「自分探し」に3年費やした人間を何人も知っている。
探して見つかるなら、とっくに見つかっているだろう。

『限界OLから年商1億円を突破した社長が教える 「お金のある人生」を叶える習慣』(三浦さやか著)KADOKAWA
ある女性起業家の話が面白い。
彼女が最初に始めたのは「笑いヨガ」の講師だった。2016年のことだ。自分で集客して、会場を借りて、参加費は1回500円。で、会場費は700円。算数ができる人なら一瞬でわかる。1回やるたびに200円の赤字である。ビジネスとしては完全に破綻している。
でも本人は嬉しかったという。「少しでも誰かの元気につながったら」と。この感覚、わかる人にはわかるだろう。
その後も試行錯誤は続く。日本のカメラを海外サイトで転売してみたり、文房具を輸入販売してみたり。小さな複業をいくつも回した。結果は? 利益はごくわずか。「好きなものを売る」だけでは食べていけない。当たり前といえば当たり前の結論に辿り着く。
ここまで読むと「よくある失敗談か」と思うかもしれない。が、話はここからだ。
彼女はFacebookやブログで日々の気づきを発信していた。読書感想とか、日常のちょっとした学びとか。特に戦略があったわけではない。ただ書いていた。すると周囲の反応が変わり始める。
「さやかさん、その考え方、わかりやすい」「発信のコツを教えてほしい」
教える側? 自分が? 戸惑ったらしい。そりゃそうだ。200円の赤字を出していた人間が、いつの間にか「教えてほしい」と言われている。人生というのは本当にわからない。
で、やってみたら喜ばれた。2019年2月にFacebookライブに初挑戦。最初は月1回がやっとで、視聴者もまばら。それでも2020年4月から週5回のライブ配信を始めたところ、年商が前年の3000万円から約3倍に跳ね上がった。
ここで注目すべきは構造だ。彼女が「これを売ろう」と自分で決めた事業は、ことごとく伸び悩んだ。一方で、周囲から「教えて」と求められたことが、結果的に本業に育った。「おしゃべり起業講座」という彼女の看板商品も、受講者からの質問に答えているうちに自然発生的に生まれたものだ。
ぶっちゃけ、これは起業家だけの話ではない。
会社員だって同じだろう。「これ、やっておきました」と先回りできる人間には、黙っていても仕事が集まる。上司に言われる前に動ける人を、組織は手放さない。逆に「自分のやりたいこと」ばかり主張する人間は——まあ、想像がつく。
仕事というのは結局、誰かの「困った」や「どうしよう」に手を差し伸べたときに生まれる。自己分析シートを埋めている暇があったら、隣の人が何に困っているか観察したほうが早い。
最初は小さな「ありがとう」で十分。その一言が、次の仕事の種になる。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)








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