挫折しない生き方

『GOETHE』に一年程前、『挫折をして落ち込んでいる人は「挫折をできた人」であり、成長の見込みがある』という記事がありました。挫折というのは、出来るとか出来ないといった類ではないでしょう。

指であやつる 将棋の駒も 一手違いで 負けになる 油断すまいぞ この世の中は 辛い勝負の 辛い勝負の くり返し――美空ひばりさんの歌「人生将棋」より冒頭部です。「勝負は水もの」です。「勝負は時の運」であって、形勢変化に対する柔軟性維持が、常時求められます。また、勝負には相性があります。それは実力拮抗の下、何となく何時も負けているようなケースです。故に我々は、毎回相手を過小評価せず互角以上と思い、現状分析を的確に行い「人事を尽くして」勝負に挑み、唯々一生懸命頑張るというだけであります。そもそもが此の世の中あらゆる事柄は常に不確実であり、色々な所で必ず失敗があるものです。失敗は寧ろ当然にも拘わらず、初めの期待が大き過ぎるが為、挫折を味わうことにもなるのでしょう。「勝つと思うな 思えば負けよ」と美空ひばりさんも「柔」で歌われている通り、況してや必ず勝つなどと思えば必ず負けますから、期待過大は禁物です。最終「任天・任運」という考え方で、「失敗ではない。此の方が寧ろベターなんだ」と、自分に言い聞かせることであります。

それからもう一つ、自信過剰も禁物です。時に誇大妄想的な自信過剰の人を見掛けますが、言わずもがな行き成り飛躍できるはずはありません。私は、飛躍とは何時もそうですが、今持てる全てを出し切り乗り越えた所に新たな境地が開ける、といったものだと思います。此の出し切るとは、全身全霊を以て一事に立ち向かうことであり、その達成の先に新たな自信が出来て行きます。自信とは、自らに対する信頼です。その自信が「きっと次の壁も乗り越えられる」と、実績に基づいたより高い目標を達成して行く原動力になるのです。物事は常に凡事を徹底するに始まり、二宮尊徳翁が説かれる「積小為大…小を積みて大と為す」という基本姿勢を貫かねばなりません。その基本の上に大きな事柄を考えて行くと、小さな問題にぶち当たった時それを克服できるようなると思います。人生は、積み上げて行くものです。その時持てる全てを出し切り続け、積み上げた努力の結果として、本当の人物になって行きます。小成に安んじたり、自信過剰の横着者になったり、才あるがゆえ傲慢になったりしては、結局人物として大成しないのです。

私は嘗て、『心が強い人』と題したブログの結語で次のように述べましたが、肝要なるは、自分の本質というものを自分自身できちっと知り、「恒心…常に定まったぶれない正しい心」を保つということです――事業家でもそうですが、どこかで少し躓いたら直ぐ駄目になってしまう弱い人も結構いますが、いま苦しいのは「人間成長のためだ」「天が与えたもうた試練だ」として歯を食い縛り、之を頑張り抜く人間でなければ駄目だと思います。何らか事を成そうと志す時、「発心」・「決心」までは誰でも行きます。しかしながら何年、何十年とそれを倦まず弛まず主体的に持続することは、並大抵ではありません。それ故仏教で言われる「相続心」というものが、最も大事になるのです。之が無いが為、多くの志が頓挫してしまうわけです。自分が一旦決めた事柄は何があっても貫き通すとか、貫き通すべく最大限の努力をし続けることが大事なのです。(…北尾吉孝日記2020年9月9日)

出光興産創業者の出光佐三さんは「順境にいて悲観せよ。逆境にいて楽観せよ」と言われています。『菜根譚』という中国古典に、「達人はまさに順逆一視し、しかも欣戚(きんせき…喜ぶ事と悲しむ事)二つながら忘るべし」また「君子はただこれ逆に来たる所を順に受け、安きにいて危うきを思う」という一節があります。順境も逆境も同じものと考えて喜びも悲しみも忘れ、そうしたことを超越して天命に安んじるのです。平常心で逆境を耐え忍び精神修養に役立てることが重要であり、境遇の順逆は心掛け次第で如何様にもなるわけです。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2026年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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