
会見する片山さつき財務大臣
円ドル相場が160円ギリギリの攻防となっています。もしかするとこの原稿が公開される時には160円を超えていてもおかしくない、そんな状況にあります。
高市首相は円安是認派だと認識していますが、最近はそのことについて明言を避けているような感じが見受けられます。高市氏は為替に限らず、様々な思いを言い放っていたのが首相になる前後でした。例の台湾問題の発言もそうですね。多分、発言の一部にクレームが入ったのでしょうか、最近はあまり高市節が聞こえてこなくなりました。ブレーンを含め様々な関係者から「囁き」があったのかもしれません。
高市氏の円安是認発言は学者や専門家の間では厳しく批判されたのも事実です。私もその発言には疑問を呈したし、そもそも円安バンザイというのは昭和の日本経済の話のようなものであります。
メーカーは一時流行ったグローバル化により地産地消と称して現地生産が進んだし、物流も複雑化、更に決済は為替リスクをヘッジするのが当たり前で年単位で為替予約して企業決算に影響が極力でないようにしています。よって一部企業では円高でも大丈夫というぐらいまで体質が強化されています。
一方、日本経済は基本的に内需主導であって輸入がキーであります。よって今のような為替、特にドル建て決済が多い中での円安は輸入物価を直撃します。それこそ、今の日本の物価水準は肌感覚で東南アジアの一部の国よりも低いわけです。ガソリンについても補助金で170円台という夢のような価格を実現していますが、そこまでしないと日本経済が廻らないのか、とも言えるほど弱体化していると私は理解しています。
私の住むカナダは世界有数の原油産油国ですが、バンクーバーのガソリン価格はレギュラーでリッター約240円ぐらいです。個人的には補助金行政のやりすぎは大局的に見れば悪手であると考えています。
ではこの円安、財務省はどう考えているのでしょうか?為替の管理は日銀ではなく、財務省管轄です。介入も財務省が行ないますので当然日々の為替の動きには神経質であり、160円の攻防は胃が痛くなる思いであろうと察します。
この160円が意味するところの話は過去に何度もしているので繰り返しませんが、プラザ合意以降のドル円のレンジの円安の上限と認識されています。よってここを抜けてくると歯止めが効かなくなるわけです。過去、一時的に162円弱までつけたことがありますが、すぐに収まったので160円の壁を1銭も抜けてはいけないとは言いませんが、それぐらい意味ある攻防戦であります。
日経に興味深い記事があります。「原油先物『介入』案に疑念 円の下落加速、財務省が奇策か 需給調整、副作用大きく」とあります。要は現在の円安の遠因の一つである原油価格の上昇を抑え、ひいては円安に歯止めをかけるために財務省が原油先物市場に介入し原油の売りを行う奇策を検討しているのではないか、という憶測記事であります。
これが本当に検討されているなら奇策中の奇策であります。原油先物市場はマーケットがシャロ―であり、為替市場の1/10程度の規模であり、かつ市場参加者はリテール投資家(個人投資家)は少なく、実需層やプロで占められています。
コロナの際、原油価格がマイナスになったことがありますが、あれは市場参加者の先物取引が価格暴落と市場の売買が極端に薄商いになり、決済できなくなり、まさか原油の実際の買取も出来ないため、「投げ」が生み出した喜劇のような悲劇であります。つまりごくわずかの投資家のエラーが生み出した極めて異例なマイナス価格だったわけです。
原油先物はそれぐらい厳しい市場であり、円安に歯止めをかけるために為替市場の10倍のレバレッジが効く原油市場での介入を検討というのは私から見れば「財務省もそこまで追い込まれているのか」という印象でしかないのです。
片山財務大臣は就任当初は高市首相を支援する立場から「責任ある積極財政」を支持し、それによる円安弊害をどうにかカバーしようとしていましたが、最近の姿勢は明らかにこれ以上の円安を阻止する防波堤役になっています。
ところが首相が未だに円安是認派のように見受けられ、日銀の植田総裁にもやんわりとくぎをさしたような雰囲気は感じ取れます。モチーフである「責任ある積極財政」に対する姿勢は崩せないのが首相の立場ですから、どう責任を取りながら財政を緩め、かつ円相場が崩れないようにするのか、その説明が求められるとも言えます。ある意味、二律背反に近いこの政策のかじ取りは財務省管轄ですから、片山大臣も神経質になっていることでしょう。
ドル高円安の直近の要因はイラン戦争であります。よってこの先行き不透明感が漂う限りドルが買われやすいと言え、そのシーソーである円は売られるということです。ただこの戦争もウクライナ戦争のようにずっとは続かないと想像していますので、一種の体力勝負的な感じを予想しています。こういう状況下では為替介入はまったく意味がないので財務省としても策に限りあり、ということかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年3月27日の記事より転載させていただきました。







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