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沖縄・宮古島で全停電発生
2026年3月17日14時28分、宮古島市内全域で停電が発生した。最大で約2万6600戸が停電した。宮古島では、2024年4月25日にも島全体で停電が発生しており、2026年1月28日にも1万2100戸が停電している。今回は19時8分に停電が解消するまで4時間以上を要した。
本稿では、宮古島における大規模停電の発生と復旧に時間を要した要因について、公表資料が限られる中で検討する。
まず、宮古島の電力系統を確認する。図1に示すように、宮古島系統は宮古島に設置された発電設備と、海底送電線で接続された池間島、大神島などを含む宮古市の6島から構成されている。

図1 宮古島系統の発電所と送電線
出典:沖縄電力
事故当日の宮古島の電力系統の状態は、以下のように推定される。
- 宮古島系統の当日の最大需要は約30MW
- 宮古島系統のメガソーラーは約5MW
- 宮古島系統の家庭用PVは700か所以上設置されており、合計約5~8MWと推定される
さらに、宮古島系統の火力発電所を表1に示す。合計出力は94MWであり、加えて系統用蓄電池が12MW設置されている。

表1 宮古島系統の火力発電所および系統用蓄電池
沖縄電力の記者会見を確認した
今回の全停電事故について、沖縄電力は事故時の系統周波数の変動、需給状況、火力発電所の運転状況などの詳細を公表していない。現時点で確認できる主な情報は、琉球新報がYouTube上で公開している沖縄電力の記者会見のノーカット映像である。
この動画から明らかになった内容は多くないが、まず時系列を整理する。
14:28 宮古島第二発電所3号発電機(10MW)が所内用電源の故障により停止
その後、2号発電機(10MW)、4号発電機(10MW)も停止
宮古島市全域(約2万6600戸)で停電発生
15:11 非常用発電機を起動し、所内電源を確保
15:21 6号発電機(12MW)を系統に併入
16:03 1号発電機(10MW)を系統に併入
16:05 発電所からの送電を開始
16:12 配電線への供給を開始
17:26 2号発電機(10MW)を系統に併入
17:32 GT3号発電機(5MW)を系統に併入
17:41 GT2号発電機(5MW)を系統に併入
18:16 4号発電機(10MW)を系統に併入
19:02 供給用蓄電池(12MW)の放電を開始
19:08 停電解消
そのほかに確認された事項は以下の通りである。
- 停電発生当時、稼働していた火力発電機は宮古島第二発電所の2号機・3号機・4号機の3台のみであった。
- ・用蓄電池に関する情報は19:02までなく、停電発生時には停止していた可能性が高い。
各記者からの主な質問と回答の一部を整理する。
琉球新報記者の質問
Q. 3号機停止後、2号機と4号機が停止した原因は何か。
A. 所内用変圧器(図2参照)の下には複数の回路があり、発電機間で連系している。それら内部的な影響なのか、外部系統の変動によるものなのかも含めて調査中である。
NHK記者の質問
Q. 再生可能エネルギーの多さが系統不安定化の原因ではないか。
A. 系統復旧時には周波数や電圧を一定に保ちながら復旧させる必要がある。出力変動の大きい太陽光発電がある場合、調整が難しくなる側面はある。
琉球新報記者の質問
Q. 停電解消まで約5時間を要した原因は何か。
A. 全停電後は周波数や電圧を一定に維持しながら段階的に復旧させる必要があり、時間を要した。
記者会見では、事故発生時の宮古島第二発電所の所内系統図(図2)も示された。これは画面上に映し出された図を基に整理したものである。黒い■は開閉器(スイッチ)を示し、電気の接続・遮断を行う装置である。

図2 事故発生時の宮古島第二発電所の所内構成(3号発電機の補機へ電気を供給する回路が故障)
今回、3号発電機の所内電力を確保する開閉器が故障し、所内電源が喪失した。所内変圧器の下流には補機と呼ばれる設備群が接続されており、燃料循環ポンプや冷却ファンなどが含まれる。これら補機が停止すると、発電機は自動的に停止する仕組みになっている。
しかし、3号発電機の補機停止が直接的に2号機や4号機の停止に波及するとは考えにくい。仮にそのような設計であれば、複数台の発電機を運転してリスク分散を図る意味が薄れるためである。
むしろ、外部の系統側の要因、すなわち3号発電機の停止によって宮古島系統全体の周波数が低下し、2号機・4号機も運転継続が困難となり停止に至った可能性が考えられる。
ただし、事故当時の周波数変動に関するデータは公表されておらず、現時点では確認することができない。
全停電発生の原因を推定する
沖縄本島であれば、総需要や燃料別の火力発電所の運転実績が沖縄電力のサイトで公表されている。さらに、電力広域的運営推進機関のサイトでも各火力プラントの出力実績が公開されており、一定の解析が可能である。しかし、宮古島のような離島系統では、こうしたデータはほとんど公表されていない。
そのため、本稿では以下の手法により当日の需給状態を推定した。
- 当日の天候は晴れであり、太陽光発電は高出力であったと考えられる。アメダスの日照時間と前述の太陽光発電設備容量から、発電カーブを推定した。
- 沖縄本島の需要カーブを基に按分計算を行い、最大需要が30MWとなるよう総需要の予測値を補正した。
- 総需要と太陽光発電の推定値との差分を、火力発電による供給とした。
以上の前提から作成した、2026年3月17日の宮古島における発電出力の推定グラフを図3に示す。事故発生時の14時28分頃には太陽光発電がほぼフル出力となり、供給力全体の約37%を占めていたと考えられる。

また、各火力発電機の出力は約8MW程度で運転されていたと推定され、ほぼ高負荷運転の状態であった可能性が高い。
この状況下で、14時28分に3号発電機が停止し、約10MWの供給力が失われた。これにより系統周波数は低下したと考えられる。具体的な低下幅は不明であるが、系統全体の約20%に相当する電源が失われたことから、周波数は大きく低下した可能性がある。
ディーゼル発電機は一般に、周波数が57Hz程度まで低下しても短時間であれば運転を継続できる。一方で問題となるのは、太陽光発電のパワーコンディショナ(PCS)の挙動である。PCSは太陽電池で発生した直流を交流に変換し、系統と同期させて電力を供給する装置である。
PCSは通常、系統周波数が58.5Hzを下回ると保護機能により運転を停止するよう設定されている。技術的にはさらに低い周波数でも運転継続は可能だが、系統安定性を維持する観点から停止する仕様となっている。
沖縄電力の離島系統では、PCSの設定は以下のように異なるとされる。
・家庭用PCS:本土と同様に、58.5Hz以下で停止する設定
・メガソーラー:周波数低下時でも運転を継続する設定
離島系統は規模が小さく周波数変動が大きいため、供給力不足時にメガソーラーが停止すると周波数低下がさらに進行し、全発電機停止に至るリスクがある。このため、メガソーラーについては停止しない設定が採用されている。一方、家庭用PCSは設置数が多く個別設定が難しいため、本土と同様の仕様が用いられていると考えられる。
以上を踏まえ、全停電に至る過程は次のように推定される。
宮古島第二発電所3号機の停止により周波数が大きく低下
↓
周波数低下により、メガソーラーは運転を継続したが、家庭用PVが一斉に停止
↓
家庭用PVの停止により供給力がさらに減少し、周波数が一段と低下
↓
周波数低下により2号機および4号機も停止し、供給力が急減
↓
全島停電に至る
すなわち、家庭用PCSの普及拡大により、周波数低下時に同時停止する電源が増加し、結果としてディーゼル発電機が運転継続できない水準まで周波数が低下した可能性がある、というのが本稿の仮説である。
実際には電圧低下や保護装置の動作など、より複雑な要因が絡んでいると考えられるが、現時点では詳細データが公表されていないため、確定的な評価は困難である。今後、沖縄電力からより詳細な事故分析が公表されることが望まれる。
全停電からの復旧に時間を要した原因
停電発生から復旧までに時間がかかりすぎではないか、という指摘は記者会見でもなされている。実際、停電発生から非常用発電機の起動まで約43分、さらに発電機の起動から送電開始まで約1時間を要している。
一般に送電線事故による停電であれば、発電所設備自体は健全であるため、比較的迅速に発電を再開できる。しかし、今回は発電所構内設備に起因する事故であり、設備の健全性確認や安全確保に時間を要した可能性が高い。
問題はその後の復旧過程である。配電線への供給を開始した16時12分から停電解消の19時8分まで、約3時間を要している。この要因について検討する。
全停電状態からの復旧は容易ではない。復旧が進むにつれて電力需要は増加し、それに合わせて発電量も段階的に引き上げる必要がある。この需給バランスを適切に維持できなければ、周波数や電圧が大きく変動し、再度の停電を招くおそれがある。
本土のように系統容量が大きい場合、一般家庭の需要が一時的に増加しても全体への影響は限定的である。しかし、容量の小さい離島系統では、需要の変動がそのまま系統の安定性に影響を及ぼす。
さらに、数時間の停電後には、各家庭で調理や洗濯などの電力使用が一斉に再開されるため、復旧直後の需要は通常時よりも増加しやすい。この需要増加に対応して発電量を慎重に引き上げる必要がある。
加えて、家庭用太陽光発電(PV)のパワーコンディショナ(PCS)の挙動も復旧を難しくする要因となる。PCSは連系している配電線が停止すると自動的に停止し、復電後も直ちには運転を再開しない。多くの場合、復電後数分(一般的には約5分)経過してから再起動する。
このため、例えば停電前に自家消費の一部を太陽光で賄っていた家庭でも、復電直後は電力会社からの受電が一時的に増加する。その後、PCSの再起動により太陽光発電が再開されると、受電量は逆に減少するという変動が生じる。
さらに、図3に示すように、16時以降は日射量の低下に伴い太陽光発電の出力が徐々に低下する。その結果、時間の経過とともに電力会社からの供給量は再び増加する方向に働く。
このように、家庭用太陽光発電は復旧過程において出力が大きくかつ不規則に変動するため、火力発電側では需要増加への対応に加えて、より複雑な出力調整が求められる。その結果、復旧作業に時間を要した可能性がある。
実際、17時26分以降に発電機を段階的に系統へ併入し、供給力を確保している点からも、慎重な需給調整が行われていたことがうかがえる。また、沖縄電力の記者会見においても、表現には配慮しつつ、太陽光発電の変動が復旧作業を難しくした側面があることが示唆されている。
蓄電池はどの程度役に立ったのか
宮古島には、出力12MW(容量48MWh)の大型蓄電池が設置されている。しかし、この蓄電池が送電を開始したのは、停電対応が一定程度落ち着いた19時2分であった。
蓄電池は本来、出力の応答速度が速いことが特長であり、需給バランスの急激な変動に対して有効に機能する設備である。このように複雑な出力調整が求められる復旧局面においてこそ、その特性を活かし、復旧時間の短縮に寄与することが期待される。
しかし今回のケースでは、蓄電池の活用は限定的であった可能性がある。蓄電量が十分でなかったのか、あるいは運用上の制約があったのかは明らかではない。ディーゼル発電機に比べて高コストで導入される蓄電池が、今回の事故対応にどの程度貢献したのかについては、現時点では評価が難しい。
今回の停電について、沖縄電力の対応を批判する意図はないし、現場の対応を軽々に評価できるものでもない。記者会見で謝罪が必要な事案であったかについても、慎重に考えるべきだろう。
むしろ、沖縄電力は増加し続ける太陽光発電の出力変動に対応するため、平常時から高度で負担の大きい運用を強いられていると考えられる。今回のような全停電事故は、家庭用太陽光発電の増加により、迅速な復旧対応が難しくなっている現状を示している可能性がある。
マスメディアは、その点を正確に伝える必要がある。今回の事象については、事故の詳細な状況をデータとともに積極的に公開し、太陽光発電の増加が電力系統にどのような影響を与えているのかを明確に説明することが求められる。
政府は2027年以降、メガソーラーに対するFIPなどの財政支援策を廃止する方針を示している。これは、湿原破壊などの環境問題が顕在化したことを背景に、社会的批判への対応として打ち出された側面がある。
一方で、家庭用太陽光発電については、屋根上設置が中心であるため環境負荷が小さいとみなされているのか、導入促進の姿勢は依然として強い。東京都や川崎市に続き、仙台市でも新築住宅への太陽光発電設置義務化が検討されている。
しかし、太陽光発電の拡大は、電気料金の上昇や将来的な廃棄物問題だけでなく、電力供給の安定性にも影響を及ぼす可能性がある。こうした点について、電力会社はより丁寧かつ具体的に説明していく必要があるだろう。







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