イラン戦争は何故早く終わると思うのか?

ここにきて様々な識者がイラン戦争はさほど続かないだろう、というコメントが目立ってきました。その理由としてトランプ氏側の都合が取りざたされています。政治日程的に5月14-15日に延期された習近平氏との会談においてその時もまだ今と同じような戦闘状態であれば首脳会談を有利に進められないという焦りがあるというのが1つ。7月4日の独立記念日は250年目という節目だけにアメリカが如何に盤石な体制で世界に君臨するかを示す必要があるというのが2つ目。秋の中間選挙は以前から言われていた節目の理由でこれらのキーになるイベントがトランプ氏が戦争遂行を止める十分な理由づけになるというわけです。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

それは確かに正しいと思います。個人的にはその3つの節目のうち、一番早い5月の習近平氏との日程がトランプ氏が最優先するとみています。今日はそれに加えて、それ以上に弾切れによる強制終了もあり得るという点を考えてみたいと思います。まずは過去の例から考察してみたいと思います。

日本が戦争中、弾切れとなったケースはしばしばありますが、有名なものに日露戦争の旅順戦があります。とにかく鉄砲はあれど弾がないわけです。前線の兵士はたまったものではありません。同様に遼陽会戦では一日の砲撃は25分に限定とか、決戦だった奉天会戦後は日本の弾薬庫は空だったともされています。そういう意味からは日露戦争は本当に神風が吹いたともいえるかもしれません。

第二次大戦も弾切れに悩まされます。ガダルカナルの悲劇では大砲は一日数発のみで最後はバンザイ突撃と言われる銃剣突撃で多数の犠牲者を出します。インパール作戦は補給路が伸びすぎてジャングルで弾切れになり無計画で無謀ながらも引くに引けない突撃が悲劇を生みました。

他の国でも同様で、あのロンメル将軍率いるドイツ/イタリア軍がエジプトで補給路が伸びすぎてついに敗れたケースもあるし、朝鮮戦争でアメリカ軍が既定の5倍の砲弾を打ちまくり、弾薬が底をついた失態もありました。

結局、言えることはどれだけ優れた性能の兵器があっても銃弾やロケット砲、ミサイルといった実際の飛び道具をいかに制御しながら戦争を続けるか、War Management (戦争管理)ができるかどうかが勝敗の行方を決めるとも言えるのです。当然、この管理にはその戦争がどれぐらい続くのかという全体像を描き、それに対する弾薬やロケット砲の在庫量を照らし合わせ、それこそ、現代ならスーパーコンピューターに計算させて戦術を決めるぐらいでないと勝てないのでしょう。

ところが戦争の指導者は概して感情が先行しており、「ここを押さえればどうにかなる」という賭けに挑むケースが多いのです。アメリカにはせっかく高度なITがあり、AIもあるのに十分に活用しているとは思えないのであります。

トランプ氏はオプションの一つとして地上戦という人海作戦に出ようとしています。どこをどう攻めるのか次第ですが、アメリカの地上部隊は精鋭であることは確かですが、攻め落とすのと攻め落とした領地を時間軸を伴いながら防御するのではまるで違う戦略を求められます。アメリカ軍は突破口を開くのは上手です。ですが、その後を維持するのはアフガンでもイラクでも上手だったとは言えないと思います。もう1つはイランはベトナム戦争ぐらいの要衝だらけである点です。イラン側は分散能力に長けています。つまりベトナム戦争の時もアメリカ軍はジャングルの中で非常に苦労したのですが、今回も仮にカーグ島のみならず、本土に向かうなら同じ過ちを繰り返す公算はあると思います。

今回の戦争でアメリカ軍の弾切れの話は既にあちらこちらで出ているのでご存じの方も多いと思います。元をただせばウクライナにパトリオットなどの武器を供与していたため、在庫は減りつつあったのです。そしてイラン戦の緒戦100時間でミサイル2600発、迎撃ミサイルのSM3は全量の25%、THAADも3割費消しています。当初はこの戦争が1か月程度で終わると見込んでいたこともあり一気に叩き潰す戦略だったのでしょう。ですが、私にはイランの反撃が小出しで兵器を温存すると同時に兵器工場で猛スピードで製造していると考えています。

もちろんイランにも弱みはあります。それは弾切れよりも球を打ち出す発射機が破壊され続けている点です。つまりこの戦争、アメリカは弾不足、イランは発射機不足で双方、ギリギリの戦いに転じる公算があります。ただ、もしも地上戦が主力になればアメリカは本当の泥沼戦争になるため、トランプ氏はそこは避けるだろうとみています。故に戦況次第でトランプ氏はある日突然、自己査定に基づき、「十分やった。アメリカの勝利だ」と一方的な宣言をして終戦を言い出しかねない気もします。

その尻切れトンボ感に世界は「この戦争は何だったのだろう」と思わせることになるのでしょうか。私が「市場と対話」した限りではトランプ氏は戦争をやめるタイミングを積極的に図っていると判断し、今日、手持ちの原油関連株は全部きれいさっぱり売却しました。風は明らかに変わりつつあると判断しました。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年4月1日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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