イラン戦争は停戦中でありますが、これが交渉を経て終戦となるか注目されます。予断は許しませんが、個人的には何らかの形で終戦にこぎつけるのではないかとみています。
終戦に向けた協議はパキスタンにて11日から行われます。以前にもご紹介した通り、イランはアメリカと国交がないため、パキスタンの在ワシントン大使館内にイラン代表部があります。つまり、ワシントンでイランと交渉するにはパキスタン大使館経由であります。ではなぜパキスタンなのか、と言えばイスラム教シーア派の国民の数がイランに次いで2番目に多いことはあります。もちろん、国境を接しており、緊密な関係にあることもあるでしょう。
パキスタンとしてはアメリカとのパイプを太くしたいという野望もあります。先般のインド-パキスタン戦争ではパキスタンが実質的に敗北しており、国内経済も疲弊、特に天災で多くの被害を毎年のように出していることもあり、アメリカの経済的支援を必要としているのです。今回、仲介役として選択されたのは消去法とされ、従来の仲介国である中東諸国やトルコが今回の戦争当事者となってしまったため、より中立性を保つためにパキスタンが選ばれたということになります。
高市首相が周辺から背中を押されるように「私どもも何かお手伝い出来ますでしょうか?」とイランのペゼシュキアン大統領と25分間電話したようですが、どちらかと言えば「ホルムズ海峡の日本船籍の通過、宜しく」であり、和平仲介などと言う大それたことは述べることはなかったようです。基本的には電話したという事実づくりに留まっています。
さて、停戦交渉ですが、アメリカ代表はバンス副大統領で補佐にウィットコフ氏とクシュナー氏の体制、イラン側はアレーフ副大統領、ガリバフ国会議長とされ、実質的にはガリバフ氏が仕切るのではないか、とみられています。バンス氏はトランプ氏からハッパをかけられているのですが、氏はもともと非交戦派で今回の戦争もやむを得ず賛成するも長期化することを当初から懸念していたとされます。よってバンス氏としては周旋させるために諸条件を一つでも多くアメリカに有利な形にするのが最大の使命とされます。

トランプ大統領とバンス副大統領 ホワイトハウスXより
アメリカの次期大統領候補の話をするのはまだ尚早ですが、現状、共和党からはこのバンス氏とルビオ氏のどちらか、とされます。バランス感覚と中南米に強さがあることで着実に仕事をこなしたのがルビオ氏でバンス氏はこのところ目立たない存在でした。特に欧州首脳からはバンス氏のあの上から目線の態度が気に食わず、煙たがられており、挽回のチャンスが廻って来たとも言えます。よって次期大統領になれるかの試金石ともいえ、必死になるはずです。
では交渉そのものですが、個人的にはアメリカがネタニヤフ氏をどれだけ抑え込めるか、交渉舞台の場外が行方を占うカギになるとみています。ネタニヤフ氏はこの戦争の完全勝利とイランの攻撃能力のせん滅化を目論んでいるわけでアメリカが甘めの条件で妥結しそうならば猛反発するのは目に見えています。それをトランプ氏が抑えられるのか、あるいはトランプ氏がバンス氏に罵声を上げて「あいつがへっぴり腰なんだ」と口から出まかせをいって防戦するのでしょうか。
もう1つは中国の存在です。今回の停戦合意でイラン側に囁き、一役買ったのが中国とされます。中国はイランと親密な経済関係を結ぶ中で今回の戦争でより疲弊した同国を経済面で支える絶好のチャンスといえ、アメリカがイランを叩けば叩くほど中国を利する関係にあります。ただ中国は戦争そのものものには興味がなく、一切の口出しもしていません。それは5月の米中首脳会議をにらんだもので今、中国はアメリカと敵対する気は全くない状況にあります。よって中国側も裏で終戦を支援するものと思われます。
こう見ると戦争をやりたがっているのはネタニヤフ氏だけで、イランの革命防衛隊は怒り心頭なものの全面戦争では勝ち目がないことからイラン側の条件闘争のためにホルムズ海峡を「人質」する作戦となるのでしょう。
ところでイランは戦争の賠償を求めています。賠償ということはイランは負けたとは思っていないとも言えます。この賠償をホルムズ海峡の通行料で拠出する案が出ており、トランプ氏もまんざらではない様子です。これに対して英国が中心となって40か国以上が参加するオンライン会議で「通行料はまかりならぬ」と決議されています。これは国際海洋法条約に基づく「無害通航権」に基づくものであります。
とすればイランの今後の経済復興を含めた課題は山積であり、イランがやすやすと条件を飲むとは思えません。イランの国体護持、つまりイスラム共和制のもと、法学者による統治と革命防衛隊による国防の体制は絶対的な条件でしょうし、復興資金の財源としてイランの原油輸出を一定程度認めるなどの経済措置でアメリカが合意するかがポイントとなりそうです。
この交渉の落としどころはホルムズ海峡より狭いピンホールを通すような話になるでしょうが、交渉の矢面に立つメンバーが停戦を望んでいる中でどこかで妥結できるとみています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年4月10日の記事より転載させていただきました。






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