5月9日はロシアでは「戦勝記念日」で法定休日だ。日本では「対独戦勝記念日」とも呼ばれる。第2次世界大戦(ソ連の呼称では「大祖国戦争」)において、旧ソ連がナチス・ドイツに勝利した(ドイツの降伏文書調印)ことを記念する日だ。ロシアにおいて最も重要な祝日の1つで、毎年各地で軍事パレードが行われる。

プーチン大統領 2026年4月30日 クレムリンHPより
昨年の戦勝記念日は第2次世界大戦終結から80周年という節目の年だったこともあって、 中国の習近平国家主席やブラジルのルラ大統領ら25カ国以上の国家元首、首脳が参加したが、今回は国家元首級ゲストは数カ国と見られている。
参加が確定しているVIPはベラルーシ: ルカシェンコ大統領、カザフスタン: トカエフ大統領、キルギス: ジャパルフ大統領、そしてマレーシアから イブラヒム国王が主賓として招待されている。一方、西側からはスロバキアのフィツォ首相が唯一参加するが、軍事パレードへの出席は見送り、無名戦士の墓への献花とプーチン大統領との会談のみを行う予定だ。今年の戦勝記念パレードは、安全上の理由から「重兵器の行進がない」など大幅に簡素化される見通しだ。
ところで、5月9日の軍事パレードを前にロシアでは緊張が高まっている。ロシアは、ウクライナが記念式典を妨害した場合、キエフ中心部への報復攻撃を行うと警告を発している。その一方、モスクワの外務省は、ウクライナの首都キエフへの攻撃が発生した場合に備え、在キエフの外国大使館に対し職員の避難を促している。異例の対応だ。
ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、「モスクワが祝賀行事を開催できるようにするための停戦合意は真剣に受け止めるべきではない」と述べている。ロシアは、ウクライナのドローンが「赤の広場上空を飛行する」ことを懸念している。ウクライナ軍の攻撃無人機は改良され、ロシア領土深くまで攻撃できる能力を有しているからだ。なお、ロシアは9日の祝日を前に、インターネットの接続を切っている。
ロシアから不穏がニュースが流れてきている。CNNの報道によると、ロシアのセルゲイ・ショイグ元国防相(現・安全保障会議書記)がプーチン大統領に対するクーデターを計画しているという。クーデター説は欧州の情報機関がまとめた内部報告書がもとにしている。それによると、プーチン大統領は政治エリートによる「ドローンを用いた暗殺」や「クーデター」を強く警戒している。クレムリン(大統領府)に出入りする職員の身元確認の厳格化、側近の自宅への監視カメラ設置、主要スタッフの公的身分証の取り上げや移動制限といった「異例の警護強化」が実施されている。
ちなみに、オーストリアのインスブルック大学ロシア問題専門家、マンゴット教授は6日、ドイツ民間ユース専門局ntvとのインタビューで「ロシアでは戦争疲弊と不満が蔓延しており、普段は抽象的な批判が、異例なほど直接的にプーチン大統領に向けられているが、近いうちにクーデターが起こるとは考えられない」と、CNN報道には懐疑的だ。西側に流れてるモスクワでのクーデター説は、ロシア内部の疑心暗鬼を煽るための「情報戦(心理作戦)」の一環である可能性が排除されないからだ。
西側に亡命した元ロシア中央銀行職員のアレクサンドラ・プロコペンコ氏は、ロシアのエリート層の間で、国の指導部に対する恐怖と不信感がますます顕著になっているという。2022年に西側に亡命した同氏は、「偏執的なレベルは非常に高く、人々は考えることさえ恐れている。ましてや話すことなどできない。恐怖は完全に偏執的で、スターリン並みのレベルに達している。ロシアの政府関係者やビジネスマンは、監視されることを恐れて、重要な会議の前に携帯電話をロックしたり、スマートウォッチを外したりするようになった」という。
なお、ロシアの軍事エリートや実業家の間で「窓からの転落」や「自殺」といった不審な死が相次いでおり、内部での粛清や権力闘争が激化している兆候が見られる。その一方、ウクライナによるロシア国内の製油所などへのドローン攻撃や、政府によるインターネット接続制限(SNS遮断など)により、国民の間でも不満が高まっており、これが政権の安定性を損なう要因となっている。
このコラム欄でも報告したが、長年プーチン政権を支持してきたロシアの著名なブロガー、イリヤ・レメスロ氏(Ilya Remeslo)が突然豹変し、プーチン大統領を激しく批判し出した。プーチン氏の権力構造に歪みがでてきたのかもしれない。プーチン氏は多くの時間をシェルターの中で過ごし、限られた側近とだけ接触しているという。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







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