ベッセント財務長官の目論見:首相・財務相・日銀総裁を別々に訪問する理由

ベッセント財務長官が今日から3日間来日します。14日からの中国での米中首脳会談に先だち、日本に立ち寄るというニュアンスが強いのですが、今回の面談は高市首相、片山大臣、植田日銀総裁をそれぞれ別に訪問するというものです。おやっと思った方も多いでしょう。

ベッセント財務長官4月17日Xより

なぜ別々なのか、ぱっと考えるとテーマが違うからだと私は考えています。

まず高市首相とは米中首脳会談の行方を想像しながら日米と日中関係についてアメリカの考えを伝えるのではないかとみています。本来であればルビオ国務長官の役目でしょうが、彼は中南米問題やイラン問題を抱え手一杯な感じがするので日本との相性がよいベッセント氏が代行する部分があるのではないかと予想しています。ただ、財務長官ですから外交など担当外のことにはさほど踏み込めないとは思います。

片山氏とは為替問題の議論だと思います。ベッセント氏は円高容認派で、円の過剰な動きについてけん制することについては片山氏と同じ立ち位置にあるとみられます。よってどうやって円の過剰な動きを抑えるか、円相場の水準のターゲットを設定するのか、具体的な日米協調の作業を行うのか、このあたりが一つの興味どころではないかと思います。ただ、為替のボリュームを考えた時、一時的に円高を演出できても時間稼ぎと揶揄されるのは世の中の大枠トレンドには逆らえないということです。

ではお前はどう見ているのか、と言えば為替は基本的に国力勝負であり、円が対ドル160-80円のレンジに収まるとしたプラザ合意後の動きからレジームチェンジが起きつつあるのか、ここを見極める必要があると考えています。個人的には160円の壁はもう抜けそうで今後、時間軸と共に180円とか200円になる可能性が出てきたとみています。日本はそんなに国力がないのか、と言われるとないかもしれない、と思います。それは一言で説明できるものではありませんが、端的にわかりやすい説明をするなら欧米の物価水準に日本は全然ついていけてない、ということであります。

日本は政府が様々な支援策を実施してとにかく物価に対して国民が安全安心でいられるよう最善の努力とバラマキをします。これが日本の国力の足腰を弱くしてしまったということです。それも昨日今日に始まったわけではなく、たぶん90年代から始まったその「国民保護政策」が今では取り返しのつかないレベルにまで広がってしまったとみています。

では植田総裁との話は何か、ですが、ずばり「利上げしてくれ」だと思います。もちろん為替防衛もあります。しかしそれより日本が踏み込めない様々な躊躇に対して後ろから背中を押す、その役割ではないかとみています。但し、ベッセント氏の予定が変更になったのでこの面談は無くなるかもしれません。

ではベッセント氏の目論見の本当の意味は何か、と考えると私は日本が中国に対抗できる力をつけてくれ、ということではないか、と考えています。つまりアジアの盟主であり、橋頭保になれ、そのために経済や財務を強化せよ、アメリカの受け皿として機能できるように後ろ支えするぞ、ではないかと思います。愛のムチとも言えるかもしれません。

ベッセント氏はアメリカの主要閣僚の中で金融の実務経験者として一目置く存在です。もちろん、トランプ政権下に入ればやりたいこと、自分の思っていることには時として封印をすることもあるでしょう。しかし、決して無謀で出来ないことは要求しないはずです。世界経済や財務、トレンドを見る中で日本が抱えているかもしれない問題をよく理解した上での助言になると思います。

氏の訪問を経てパブリックに公表できることとできないことがあるはずで、たぶん、会談後の報道からは全部は読み取れないと思いますが、それは我々の読解力を試されているとも言えるかもしれません。

今週はそういう意味で米中首脳会談も含め、目が離せない動きとなりそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年5月11日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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