AIの普及とつまらない仕事でも耐える従業員の取り合い

最近の報道でAIに絡むニュースがない日がはないとしても過言ではないでしょう。様々なAIが生まれ、AI同士で競争し、その精度や能力を競います。そんな私もAIは使います。特に表計算を読み込ませた場合の能力の早さ、及び文章校正能力は凄まじいと思います。私のように「一人親方」のような仕事をしているとこれらAI新兵器は極めて有効であります。それ以外に株式銘柄の分析もよくできていて鵜呑みにはしないものの全体の流れと概要を掴むには実に有効でおかげさまで投資効率も高まっています。

つまりAIはありがたい存在でありますが、これが一般企業にもどんどん普及する中で果たして人間は業務を通じて働き甲斐を感じることがあるのだろうか、と思ったりするのです。

所有するグループホームではこの春、大幅に植栽を増やし、立派な庭が出来ました。これらの植物が成長すればかなり自慢できる庭になると思います。その弱点は散水設備が導入されていないこと。つまり、人間がホースで水撒きをしないと枯れるわけです。特にバンクーバーは乾季に入ったのですが、気温が20度以上あり、カラカラ状態ですから相当丹念に水撒きが求められます。私も同施設を訪れるたびにホースで水撒き、また電動芝刈り機で芝を刈るような作業が2時間は必ずあります。「えっ、社長がそれをするのですか」とよく聞かれるのですが、水撒きも大事な仕事。「仕事のバリューが違うじゃないですか」と聞かれれば「一日の仕事のうち、時給5000円の能力を要する仕事は何時間やっていますか?」というのが私の回答です。

PonyWang/iStock

どんな成功者でもどんな高度な能力を持っている人でもその能力を駆使している時間は一日のうちでわずかなのです。数時間かもしれないし、数分かもしれません。「俺は繁忙店のシェフだ」と言っても客に料理を作っている時間は昼夜合わせて5-6時間かもしれません。つまり人間の仕事は常にテンションマックスが続くわけではないのです。水撒きも大事な仕事。シェフにとって調理器具を洗うのも大事な仕事であるのと同じなのです。

AIが普及すれば人間が持っている才能を生かす時間は減るかもしれません。様々なシーンで代行してもらえるからです。これに対して自営業や中小企業は案外、対応しやすい気がします。もともと人材不足で手が回らなかったことが多い中で少しゆとりを持てるからです。問題は大企業です。日経に「『無意味な仕事』の4類型 奪われる時間と意欲、働く意義を問い直す」という記事があります。会社において無意味な仕事が多いというわけです。無駄な会議、報われない仕事、達成できない目標を与えられた業務、外面だけの仕事…。

なるほど私もかつて経験しました。上司の保守的意志に基づくどうでもよい仕事。私のある上司のくちぐせは「Just in caseで準備しておこう」であります。なんですか、「もしもの場合?って」であります。そのために半徹夜させらたり、全く無意味な作業を延々と作業してみたり、であります。

20年も昔、当地の領事館に勤める領事と飯を食っていた時、愚痴られたことがあります。「『バンクーバーにある日本食レストランの数を数えろ』という指示が来てどうやろうかと思ったのだけど(当時あった)電話帳で調べているんですよ。こんなの無意味だと思いません?」と。そりゃ無意味です。だって政府が求める日本食レストランって日本人が経営している日本食レストランでしょう。日本食レストランは韓国人経営が多いし、中国人も結構運営しています。だから電話帳では答えは出ないのです。こういうのは統計的一手法を使い、ある地域にある日本食レストランの数を数え、人口比を考えながら類推する計算がさほど狂いなく簡単に出るはずです。瞬間的な私の感覚ではざっくり50以上100未満だと思います。

大企業に入社する新入社員が3年で3割のペースで辞めていく実態をどう捉えるべきでしょうか?学生気分がまだ抜けない彼らは仕事の良い面だけを夢見ています。ですが、実際には泥臭いわけです。これに耐えられないというわけです。しかし怒られるのは新入社員だけではなく人事部。「なんで計画通りに採用できず、採用した者もどんどん辞めるのだ?」と。人事部長の内心は「社長、そりゃ、与えらえる仕事がつまんないからですよ」と言いたいのをぐっとこらえ「来年こそは良い人材の採用にまい進させて頂きます」なのでしょう。

私はこの「3年3割」がAIが普及しつつある今日、どう変化するのかと考えています。将来、「1年3割」になるか「3年1割」になるか、であります。真逆の候補を2つ挙げたのは若者の価値観の変化が読めないのです。会社の仕事を単に給与を稼ぐVehicle(媒体)と考えればやりがいなんて関係ない、所属するだけでお金がもらえると割り切り、今の職にしがみつくでしょう。一方、こんな無意味な仕事ばかりをやらせる会社だと思わなかったと切れまくって辞めるタイプは自立起業型の方かもしれません。どちらが多いかといえば前者が8-9割を占めるわけで案外人事部長がほっとする時代がやってくるのかもしれません。

つまらない仕事でも耐える従業員、そんなおかしな世界が想像できないわけでもないのがAIの普及と働く人々の取り合いと言えそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年5月10日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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