自民党大会で自衛官に歌わせてから1カ月、やっと責任に言及…鈴木俊一幹事長「深く配慮するべきだった」
自民党の鈴木俊一幹事長は11日、現役自衛官が党大会で国歌を歌唱した問題を巡り、同日の役員会で「党側の運営として、政治的な誤解を招かぬようもっと深く配慮すべきだった」との認識を示した。役員会後の記者会見で、自身の発言を明らかにした。自民党がこの問題で責任に言及したのは初めて。
鈴木氏は「当該の自衛官に全く責任はない。結果として本人や防衛省に多大な迷惑をかけたことを心苦しく遺憾に思っている。より適切で慎重な対応を徹底したい」と述べた。一方で、「企画会社から要請を受けた自衛官が、個人の立場で無償で国歌を歌唱することは法的に問題がない」と重ねて説明した。
このあたりで幕引きを図ったということでしょう。
ソープランドで「自由恋愛」しただけだから違法ではないが、奥さんには叱られたみたないいわけです。お金を払ってセックスした事実は変わらない。こういう「ソープランド論法」を政治家はやめるべきです。
自衛隊の政治的な中立という本質的な問題から逃げており、再発を防ぐつもりもない。金を払わなければ政党が自衛隊を利用していいといっているに等しい。この程度の法的な見識で文民統制ができると思っている。
また1979(昭和54)年4月27日の参議院本会議で、当時の社会党所属の野田哲(てつ)議員が大平正芳首相に質問した答弁を無視するものだ。政府はいつ見解を変えたのか?
自衛隊側も政治的な意図がある集会だったら出席していなかったと明言していた。
今回の件では、自衛官による営利企業の「役務提供」も問題だ。「私人であれば自衛官として活動して問題ない」となったとしたら、さらなるエスカレーションが発生しないか。「前も大丈夫だったから、もう少し踏み込んでも大丈夫だろう」とエスカレートして、自衛隊が自民党の私兵化することさえ、十分に懸念されるのだ。
謝礼さえ貰わなければ、民間企業のCMに「私人」として制服着用で出演できることになるだろう。さらに問題なのは、組織的な関与も可能となることだ。
自民党大会で、中央音楽隊の隊長が部下に命じて音楽隊全員が「有給休暇」をとって「陸自中央音楽隊です」と紹介されて演奏することも可能だ。
自衛隊にはこんな不祥事もあった。2020年に、海上自衛隊の森田哲哉1佐が女性向けデリバリーヘルス(派遣型風俗店)を約10年間、実質的に営業したことが発覚して懲戒免職処分を受けた。森田1佐は妻名義で営業届け出を行っており、妻名義なら兼業に当たらないと思ったと述べている。また彼はこれを社会事業だと主張していたようだ。
逆にこの1佐が処分された方がおかしいのではないか?
そうであればこれも「私人」として「役務提供」だと主張でき、懲戒処分はおかしいのではないか、ということになる。今回の件はこのようなグレーゾーンを拡大させることにならないか。
今回の教訓では自衛隊や防衛省、隊員の政治的な中立を求める法律はあるが、政治の側の自衛隊の私的利用を制限する法令が存在しないことだ。得てして自衛隊は政治家から言われると「できません」とは言わない文化がある。
例えば災害派遣で、1000名で十分に足りる派遣を政治家が「3000名を出せ」と要求することがある。「3000人も俺が出させた」と選挙民にアピールできるからだ。これもまた自衛隊の政治利用だが、政治家にその意識が低い。今回の件を奇貨として政治家に対する自衛隊の利用を制限する法令が文民統制の観点からも必要だ。
例えば陸幕長が三菱重工のクーラーのCMに第一種礼装で「私人」として出演して「クーラーはビーバーエアコン!自衛官にも大人気です!」と登場していいのか。その謝礼として金ではなく、天下りの顧問として10年間ポジションを役職するならば金品はもらっていないことになる。こういうグレーゾーンがなし崩し的に拡大する。
例えば女性自衛官がAVに現役自衛官として制服で「私人」として出演して本人はギャラを受け取らず、交際相手が金品を受け取ればセーフになるのではないか?
政府は政治の自衛隊利用、そして自衛官による営利企業や政党に対する役務の提供を禁止する法案を出すべきだ。

自民党党大会 自民党広報より
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編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2026年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。









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