生命保険の利鞘は増えたが含み損も拡大:経営は大丈夫か?

生命保険15社の2026年3月期の基礎利益は約4兆4000億円となり、前期比14%増えた。金利上昇によって運用収益が拡大し、2年連続で最高益を更新したという。

超長期債の金利上昇で「利鞘」は拡大

一見すると、これは生保業界にとって明るいニュースである。長く続いた超低金利の時代には、契約者に約束した予定利率を運用利回りが下回る逆鞘が問題になっていた。ところが今は超長期国債の利回り上昇で保有資産の利息収入が増え、運用利回りが予定利率を上回っている。

日本経済新聞

実際、日本生命の基礎利益は初めて1兆円を超えた。富国生命でも運用利回りと平均予定利率との差が拡大し、運用収益は過去最高となった。明治安田生命や第一生命でも、円建ての貯蓄性保険や企業年金、指数連動型商品の販売が伸びている。

保有国債の「含み損」は約30兆円

しかしこの好決算にはもう一つの顔がある。金利が上がれば、保有国債の価格は下がる。これは会計上、含み損として表れる。日経によれば、主要生保14社の国内債券の含み損は3月末時点で約30兆円に達し、1年前から7割増えた。大手4社だけで約14兆円だという。

これをすぐに危機と見るのは早計だ。生命保険会社は銀行と違い、短期の預金を集めているわけではない。保険契約は長期で保険金の支払いも将来にわたるので、国債も満期保有を前提に購入している。満期まで持ち切れば含み損は実現しない。

問題は、満期まで持ち切れなくなる場合である。たとえば契約者の解約が増えれば、保険会社は解約返戻金を支払うために資産を売却しなければならない。低利回り時代に買った債券を金利上昇後に売れば、売却損が現実化する。これが含み損の怖さである。

生保は高利回り債に入れ替え

保険会社はすでに、低利回り債を売却して高利回り債に入れ替える動きを進めている。日本生命は3兆9000億円規模、第一生命も約1兆3000億円規模の円債入れ替えを行った。住友生命は国内債の入れ替えで約3000億円の売却損を計上したが、今後は年間100億円程度の収益改善効果を見込むという。

これは、いわば過去の低金利時代の後始末である。損失を出してでも、将来の利回りを改善するためにポートフォリオを入れ替えているのだが、これは時間との競争である。

金利上昇が緩やかであれば、利益の範囲内で債券を入れ替えて将来収益を高めることができるが、金利が急騰すれば含み損が膨らみ、減損リスクも高まる。日本生命はすでに保有国債で約700億円、住友生命も約200億円の減損を計上している。

貯蓄性預金の中途解約がリスク

特に注意すべきなのは、昔の低い予定利率で売られた貯蓄性保険である。いまは個人向け国債や投資信託、より利率の高い保険商品が増えている。契約者から見れば、古い低利回り商品を解約して、より利回りの高い商品へ乗り換える誘因が強まる。

過去に非常に低い予定利率で販売した一時払い貯蓄性商品では、一定程度のスイッチングが起こる可能性がある。ソニーフィナンシャルグループは、15〜20年前に販売した貯蓄性保険が、ちょうど解約返戻金を受け取る時期に来ているとみている。

結論を言えば、生命保険会社は直ちに危機にあるわけではない。本業利益は好調であり、金利上昇は長期的には収益改善要因である。高利回り債への入れ替えは進んでいるが、その過程では売却損や減損が発生する。さらに、契約者の解約や乗り換えが増えれば、含み損が現実の損失に変わる可能性もある。

生命保険会社に問われているのは、過去の超低金利時代の負の遺産をどれだけ早く処理し、新しい金利環境に合った収益構造へ転換できるかである。その経営が大丈夫かどうかは、いまの利益の大きさではなく、これからの金利上昇に耐えながら、資産の入れ替えと契約の質の改善を同時に進められるかにかかっている。

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