小選挙区制のゆがみをなくす「コンドルセ投票」

定数削減をめぐって与野党がもめているが、多くの人が指摘するように日本の議員定数は人口に比べて少なく、さらに削減する必要はない。それよりも先の総選挙のように、小選挙区のわずかな票差で自民が圧勝し、野党が乱立してボロ負けするバイアスを是正すべきだ。

これについてエリック・マスキン(メカニズムデザインでノーベル経済学賞を受賞)がコンドルセ投票を提案している。

これは次のような方式である:

  • 順位付け: 投票者全員が連記制で全選択肢に順位をつける。
  • 総当たり戦: 選択肢から2つの組み合わせ(ペア)をすべて作り、どちらが上位に選ばれたかを集計する。
  • 勝者の決定: 他のどの候補と1対1で比べても過半数の票を獲得した候補を最終的な勝者とする。


もし2026年2月の衆議院総選挙にコンドルセ方式を導入した場合、日本の議席数はどうなるだろうか。ジェミニにシミュレーションしてもらった。

今年の総選挙をコンドルセ方式でやったら

結論からいうと、自民党は単独過半数を割り、中道・穏健野党(立憲民主党、国民民主党、日本維新の会など)が劇的に議席を伸ばすという結果が予想される。

コンドルセ方式は「すべての一騎打ちで勝てる候補(中位投票者に最も近い候補)」が勝利する制度なので、極端な主張の候補が不利になり、左右両派から「次善の策(2番目、3番目の選択肢)」として選ばれやすい中道勢力が圧倒的に有利になる。

2026年の第51回総選挙(小選挙区289・比例176)では、高市政権下で自民党が316議席という歴史的圧勝を収めたが、この小選挙区の部分をコンドルセ方式で再計算した場合のシミュレーション(全議席数)は次のようになる(連記制ではなかったので順位は推測):

政党 現在の議席 コンドルセ方式
自民党 316 210〜240
中道改革連合 49 90〜110
国民民主党 28 50〜70
日本維新の会 36 40〜50
公明党 約20〜30 20〜30
共産党・他 約10〜15 10〜15
なぜこのような変動が起こるのか
自民党の「4割の得票で勝てる」構造の崩壊

現在の制度では、自民党候補が40%の得票であっても、野党(中道、国民、共産など)で残りの60%が割れれば自民党が勝利するが、コンドルセ方式では中道や国民の候補が、自民党候補との「1対1の仮想対決」において野党全体の票を独占するため、小選挙区の多くがひっくり返る。

キャスティング・ボートとしての公明党支持層

2026年総選挙の最大の変化のひとつは、公明党が連立与党から外れた点である。公明党支持層の票が、自民党ではなく国民民主党や中道改革連合の穏健な候補に「2位票」として流れる公算が大きく、これが自民党候補をコンドルセ敗者に追い込む。しかし公明党自身の候補は、小選挙区での当選はきわめて困難になる。

「最強のコンドルセ勝者」となる国民民主党

コンドルセ方式が導入された場合、もっとも恩恵を受けるのは国民民主党である。彼らは、左派(中道改革連合や共産党の支持者)からは「自民よりはマシ」として、右派(自民や維新の支持者)からは「左派よりはマシ」として、常に上位にランク付けされる。結果として、第一公約に掲げる有権者が少なくても、1対1の対決では誰にでも勝てる「コンドルセ勝者」になりやすく、議席を爆発的に伸ばす。

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コメント

  1. 早川蒼真 より:

    コンドルセ方式には欠陥が存在します。
    それは、有権者が「正直に投票しない(戦略的投票を行う)」という問題です。
    選挙が嘘つき大会になるのです。

    具体例で考えてみましょう。A・B・Cの3候補が存在し、素直な投票では A が40%、B が40%、C が20%の支持を得るとします。本来、有権者Zの真の選好が「A > B > C」であったとしても、最大のライバルである B を蹴落とすために、あえて「A > C > B」と順位を偽って投票する誘因が生じます。これは ギバード=サタースウェイトの定理 が示す通り、コンドルセ方式が戦略的操作に対して脆弱であるということです。

    思考実験としては確かに魅力的な制度ですが、実装すれば嘘つき大会の様相を呈しかねない——これがコンドルセ方式の抱える根本的なジレンマだと言えるでしょう。