「去り際」で全部ぶち壊す営業たち

recep-bg/iStock

腹立たしい話をする。商談が終わった後の話だ。これを読んで「自分のことだ」と思った人、今すぐ直してほしい。本当に頼む。

売らない営業』(松本義史 著)新星出版社

真夏の訪問、汗だくで現れる人たちへ

まず、後ろ姿の話の前に一つ言わせてほしい。

去り際の印象を語るなら、「到着時の印象」も無視できない。真夏の炎天下を移動して、汗だくのままビルに飛び込んでいく営業を何人見てきたか。スーツはよれよれ、額には汗が浮いている。そんな状態で「本日はよろしくお願いします」と言われても、相手はまず「大丈夫かこの人」と思う。

私が現役だった頃、部下には必ずコールドスプレーを持たせていた。

今でこそシーブリーズのような爽快感のあるスプレーが手軽に手に入るが、当時はそんなものは存在しない。では何を使っていたか。プロ野球選手がデッドボールを当たった箇所に使う、あの冷却スプレーだ。無臭なのがミソだった。

訪問前、ビルの入口付近や少し離れた場所でたっぷりとスプレーをかける。真夏でもスーツの中がマイナス40度になる。汗など瞬時に引っ込む。あとはビル内のトイレで髪型を整えれば準備完了だ。

真夏にもかかわらず、涼しい顔で颯爽と登場する。相手は人事部や経営企画部の管理職が多かったが、私の「さわやかさ」に驚いた人は少なくなかった。「尾藤さんって、汗をかかないんですか?」と聞かれると、そこで初めて種明かしをする。するとたいてい驚愕された。「不快感を与えない」という当たり前の心がけに、これほど手間をかけているとは、と。

後日談がある。その会社では、私が去った後もコールドスプレーの文化が受け継がれているらしい。営業の作法が「伝説」として残るとは思っていなかったが、悪い気はしない。(知らんけど)

向き合っている間だけ頑張っても意味がない

到着から退室まで、すべてが商談だ。

長年、様々な営業に同行してきた。提案は完璧、話術も申し分ない、なのに「なんか受注できない」という人が一定数いる。不思議でならなかった。あるとき気づいた。帰り際が、壊滅的にダメなのだ。

ある若手の話だ。大手企業の役員との商談、提案は素晴らしく、役員の反応も上々だった。深々と礼をして退室した。その瞬間、役員がぽつりと言った。「なんか、残念だな」

背中がシワだらけ。ズボンの折り目は消えている。後頭部の髪が、座っていた時間の分だけぺたんとつぶれていた。

これだ。これが全部を台無しにする。

エレベーターが動き出すまで商談は終わっていない

これ、絶対に覚えてほしい。

扉が閉まる前にスマホを取り出す営業がいる。次の予定を確認したいのはわかる。でも相手から見れば、「もうあなたへの関心は終わりました」という宣言だ。

扉が閉まる直前まで、相手に目を向ける。笑顔で軽く会釈をする。それだけでいい。エレベーターが動き出すまで、商談は続いている。

心理学に「終末効果」という概念がある。人は最後の印象を強く記憶する。どれだけ中身のいい商談をしても、去り際の1分間でそれが上書きされる。怖い話だ。逆に言えば、去り際を制すれば、平凡な商談でも好印象で終われる。

到着時の爽やかさ、商談中の誠実さ、そして去り際の美しさ。最後の背中が、すべてを決める。

結局、営業は「総合芸術」だと思っている。言葉、資料、ペン、スーツ、歩き方、去り際。どれか1つが崩れると、全体の印象が引きずられる。完璧にやれとは言わない。ただ、去り際だけは意識してほしい。それだけで、あなたの評価は変わる。たぶん。

尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)

23冊目の本を出版しました。日本初のClaude実用書です。

3時間で身につくClaude活用術』(WAVE出版)

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント

  1. 岡本マヤ より:

    勝負スーツ✕タクシー✕清潔感

    私も真夏に面接が多かった人生です。
    6〜8月に面接がある時がほとんどで9月入社です。
    私の場合、アパレルかブライダルでした。
    髪の毛はゆるく巻き髪にして会社まではバレッタでゆるく留めておいてついたら外します。

    巻きが取れていない。

    あと道に迷いそうだとタクシーを使います。
    ワンメーターでも地図を見せてここに行ってくださいって。メイクも汗で取れない。
    駅から遠くなくても迷って焦らないから。
    そして時間までビルの外にいます。

    早すぎても遅すぎてもいけない。

    落ち着いて面接を受ける。だいたい真夏の転職はこれで上手くいきました。ある時4社応募して3社受かりましたがそのうち2社はおなじ日の面接でした。
    午前と午後。正社員面接が1社、契約社員面接1社、事務系派遣1社で採用通知を書面で貰った会社にしました。

    1日に2社以上回る時はお昼はカフェでパンなどの軽い物しか食べません。

    これは見た感じで清潔感が出ると思います。

    あと着て行く服は現在は没個性の黒スーツ姿をよく見ますが面接に着るスーツは黒、紺、グレーになるかと思います。
    フォクシーの前田義子さんも本に書いていましたが

    黒やグレーほど安い生地はダメ。

    私もジュンコシマダのセールで15万のグレーのワンピースアンサンブルスーツを半額の75000円で買っておいて勝負スーツにしました。これは絶対だと思いました。
    オールシーズン着れてどのシーンでも行けるスーツ。
    今の会社は裏方だったので黒いケイト・スペードのワンピースでいきました。雇用形態によってはあまり頑張らないスタイルのほうが好印象です。私は染髪をしていますが(白髪とかあるし)ブライダルに入ってからスケール6です。

    髪のカラーで全てが台無しになると教わりました。

    せっかく決まった売り上げも親族の方がひと目見てあんな頭の店員がいる所なんかに何百万も出せないと言ってダメになるケース。
    私は基本的に裏方でしたが店頭で見られる事もあるからスケール6にしてくださいと言われました。