高齢者が昼寝すると寿命が短くなる?

瀬戸 まどか

年をとると、日中にうとうとする時間が増えます。昼食後に少し横になる程度なら、疲労回復にもなり、自然な生活習慣ともいえます。ところがJAMAに掲載された研究は、高齢者の昼寝について少し気になる結果を示しています。

結論からいえば、「昼寝をすると寿命が短くなる」と単純に考えるべきではありません。しかし、「長すぎる昼寝」「回数の多い昼寝」「午前中からの昼寝」は、健康状態の悪化を示すサインかもしれません。

ウェアラブル機器で昼寝を測定

この研究は、米イリノイ州北部に住む高齢者1338人を対象にした前向きコホート研究です。平均年齢は81.4歳、女性が76%を占めていました。参加者には手首に装着するアクチグラフをつけてもらい、昼寝の時間や回数を客観的に測定しました。

研究は平均8.3年にわたって追跡され、その間に926人が死亡しました。ここでいう昼寝とは、午前9時から午後7時までに記録された睡眠のことです。

従来の研究では、昼寝の有無や時間を本人の自己申告に頼ることが多くありました。しかし、自己申告には記憶違いや過小評価が入りやすいという問題があります。今回の研究は、ウェアラブル機器によって実際の睡眠パターンを測った点に特徴があります。

昼寝が長いほど死亡リスクが高い

研究の結果、昼寝時間が長い人ほど死亡リスクが高い傾向がみられました。年齢、性別、BMI、うつ症状、身体活動、慢性疾患、認知機能、夜間睡眠などを調整した後でも、昼寝時間が1日あたり1時間増えるごとに、全死亡リスクは13%高くなっていました。

また、昼寝の回数が多いことも死亡リスクと関連していました。1日あたりの昼寝回数が1回増えるごとに、全死亡リスクは7%高くなっていました。

さらに興味深いのは、昼寝の時間帯です。午前中に昼寝をする人は、午後早い時間に昼寝をする人に比べて、死亡リスクが30%高くなっていました。

つまり、問題になりそうなのは「昼食後に20分ほど休む」といった昼寝ではありません。むしろ、朝起きたばかりなのにまた眠る、日中に何度も寝落ちする、1日に長時間眠ってしまう、といったパターンです。

昼寝が悪いのか、体調不良のサインなのか

ただし、ここで重要なのは、この研究が観察研究であることです。観察研究では、「昼寝が死亡を引き起こした」と証明することはできません。

むしろ考えやすいのは、長い昼寝や頻繁な昼寝が、すでに進行している健康問題のサインであるという解釈です。たとえば、睡眠時無呼吸症候群、心血管疾患、うつ、認知機能低下、慢性炎症、薬の影響、夜間睡眠の質の低下などがあると、日中の眠気が強くなることがあります。

午前中から眠くなるというのも、単なる「怠け」ではありません。夜間睡眠が乱れている、概日リズムが崩れている、あるいは神経変性疾患の初期症状が隠れている可能性もあります。

論文の著者らも、長時間・高頻度・午前中の昼寝は、高齢期の死亡リスク上昇を示す「行動上のマーカー」になりうると述べています。

昼寝は一律に悪者ではない

ここで「高齢者は昼寝をしてはいけない」と受け取るのは早計です。

短い昼寝には、眠気の改善、注意力の回復、気分の安定といった利点があります。特に高齢者は夜間の睡眠が浅くなりやすく、昼間に休息を取ること自体は珍しくありません。

問題は、昼寝が生活リズムの一部なのか、それとも体調悪化の結果なのかです。

たとえば、昼食後に20〜30分程度の昼寝をして、その後は活動的に過ごせるなら、大きな問題とは限りません。一方で、午前中から眠い、昼寝が1時間以上続く、1日に何度も寝る、夜眠れない、以前より急に昼寝が増えた、という場合は注意したほうがよいでしょう。

高齢者の健康管理に使えるサイン

この研究の意味は、「昼寝を禁止せよ」ということではありません。むしろ、昼寝の変化を健康状態の早期警戒サインとして使えるのではないか、という点にあります。

近年はスマートウォッチなどで睡眠や活動量を記録することが簡単になりました。高齢者本人だけでなく、家族や医療者が、日中の睡眠パターンの変化に気づくことができれば、病気の早期発見につながる可能性があります。

特に、以前は活動的だった人が、急に日中眠る時間が増えた場合は、年のせいと片づけないほうがよいでしょう。貧血、心不全、感染症、薬の副作用、認知症の進行などが隠れていることもあります。

昼寝よりも生活全体を見るべき

高齢者の昼寝をめぐる議論で大切なのは、昼寝だけを切り出して善悪を決めないことです。

夜はよく眠れているのか。朝に光を浴びているのか。日中に体を動かしているのか。食事は十分か。薬は増えていないか。気分の落ち込みはないか。こうした生活全体を見なければ、昼寝の意味は判断できません。

今回の研究は、昼寝そのものを悪者にしたものではありません。むしろ、日中の眠り方には、高齢者の体調や老化の進み方が表れるということを示した研究です。

「昼寝で寿命が短くなる」のではありません。
「昼寝の増え方に、寿命を縮める病気の兆候が表れることがある」と考えるべきでしょう。

高齢者の昼寝は、単なる生活習慣ではなく、健康状態を映す小さな窓です。長い昼寝や午前中の眠気が目立つようになったら、無理に起こすより先に、まず体調の変化を疑うべきです。

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