冴えなさすぎる、これが私の見る今のトランプ氏であります。昔から冴えなかっただろう、という声もあるかもしれませんが、このところの裏目ぶりは目を覆いたくなるほどであります。
トランプ氏は建国記念日と中間選挙に向けて一定のバラ色のシナリオを描いていたと思います。イランとの戦争はアメリカの思い通りとなり、イスラエルとの連携の下、中東の安定化達成とアメリカが裏で操る構図を国民に誇るつもりだったのでしょう。今の状況からはイラン戦争は7月4日の建国記念日までに合意している停戦が引き続き延長された状態か、アメリカが一定の妥協をして和平を妥結するかというところであります。

トランプ大統領 ホワイトハウスHPより
これに水を差していたのがネタニヤフ首相で、イスラエルがレバノンのヒズボラを激しく攻めていることに対してトランプ氏がついにネタニヤフ氏に激怒し、厳しい言葉で罵りました。ネタニヤフ氏に対しては今まであまりない言動であります。終わりそうで終わらないイラン戦争についてトランプ氏のマインドはほぼ戦闘モードになく、どうやってアメリカ国民に支持をされながらこの戦争を終結させるか思案しているわけです。にもかかわらず、ネタニヤフ氏がそれをかく乱したことに「刑務所に入らずに済んだのは誰のおかげだと思っているのだ!」と口走ったとされ、日本ならパワハラだと大騒ぎになるような状況です。
トランプ氏を更に怒らせたのが建国250周年を祝うFreedom250のコンサート。これは6月25日から7月10日まで開催される目玉イベントの一つでしたが、コンサート出演予定者が次々と辞退し、トランプ氏が「3流のアーティストめが!」とこれまたパワハラ発言をし、一時は「コンサートは止めだ。代わりに俺がしゃべる」と言い出したりで、まだ先行きははっきりしませんが、何らかのイベントは行うのでしょう。普通、自身への批判があからさまになってくると媚びるとか下手に出やすくなるものですが、トランプ氏はぶち切れ状態で、私としてはアメリカの大統領として情けなさすら感じるのです。氏の年齢と立場からすれば「頭を下げる」なんて死んでも払い下げだと思っているのでしょう。
そして5月28日から始まったアメリカ、カナダ、メキシコの貿易協定であるUSMCAの見直し交渉はメキシコはカナダに比べて分がありそうだとされていたもののここにきてアメリカからの強烈な要求に交渉の先行きは茨の道を予想させるものとなっています。カナダとアメリカの交渉においてはまだ入り口に立ったにすぎず、個別の内容に至っては「これ、落としどころはあるのかな?」というぐらいの隔たりであります。
交渉期限は7月1日ですが、これを超えれば一年ごとの自動延長見直し期間に入ります。USMCAの離脱は6か月の事前ノーティスで行けますので最速今年いっぱいで切れることも物理的にはあり得ます。ただし、この貿易協定のメリットはNAFTA時代を通じて北米大陸で強固な経済基盤を作り出し、世界に対抗できるものにするという本質的な目的があるのです。ですが、トランプ氏は「メキシコもカナダも邪魔だ」とするならばそれはアメリカのサプライチェーンにも大打撃を与え、いったん壊してしまえば元に戻すのは極めて手間暇がかかるプロセスになります。
アメリカが徐々に変わりつつあるのはこの10数年、肌身で感じていますが、トランプ氏の施策や発言はアメリカに利益をもたらさず、選択肢を絞り込み、高いリスクある道を選んでいるとしか思えないのです。多分、あと2年半ほど我慢すれば状況は大きく変わるでしょう。しかし、覆水盆に返らず、であります。カナダは少なくともアメリカ依存体制を猛烈な勢いで解消し、より広範なグローバリズムをプランしています。
日本はアメリカ一辺倒ですが、今のアメリカは皆さんが知っている昔の良きアメリカとはまるで違うことは頭の隅に置いておいたほうが良いかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年6月5日の記事より転載させていただきました。







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