地方移住に成功する人、失敗して帰る人の違い

黒坂岳央です。

筆者は東京で働き、地方に移住した人間である。最近、地方から別の地方へ引っ越しをしたのだが、新天地では東京から来た人が意外に多くて驚かされる。彼らの仕事は士業、医師、経営者、リモートワーカーばかりで、「東京での子育てが厳しいのでここに来た」という話だった。

しかし、東京から地方に来てうまくいく人間ばかりではない。沖縄移住者の8割が数年以内に本土へ戻るという話もある。正確な統計ではなく経験則的に語られる数字だが、「地方移住の定着率が低い」という現象自体は広く指摘されている。

一方で、筆者のように長く地方に根を張り生活を送っている人も存在する。両者を分けるものは何か。実際に地方移住をした立場から述べたい。

takasuu/iStock

地方の企業に就職するな

単身で地方にやってきたが、夢破れて東京に帰る人には共通点がある。

その筆頭は「地方企業に就職する」という人だ。全員とは言わないが、地方移住で失敗する人の多くがこの選択肢を取っている。

「東京は生活費が高い」と考えて地方に来る人は「支出を減らす」という発想が強いが、地方は収入が減ってしまうことはあまり直視できていない。そのため、地元企業に就職しようとして「いい仕事がない、給料が安い」という問題に泣くことになる。

だが、生きていくためにはどうしても仕事は必要だ。おすすめの選択肢は東京水準の収入を維持できる仕事をすることである。具体的にはリモートワーク、起業、医師や士業である。自分自身も9年前にやってきて自営業に加えて、ずっと東京にある会社と取引をしてきた。周囲の移住組も医師や弁護士、税理士や経営者、そしてリモートワークのエンジニアばかりだ。

収入問題を解決せずに地方移住すると、生活水準の低下が不満に直結し、数年で撤退することになる。逆にここをクリアすれば、経済的合理性は非常に高まる。

他にも細々したことを言い始めるといくらでもある。娯楽がない、人間関係の感覚の違い、車が必須などである。だが、地方移住の成否における最大級の決定打は「収入と支出」だ。ここをクリアすれば、「まあ東京より圧倒的にお金が溜まるから」と他を許容しやすい。

地方移住に成功する人は何が違うか

では地方移住して10年以上住むような人は何が違うのだろうか?自分自身が来年で東京を離れて10年になるので、その立場から言うと「地方移住を手段として見る」ということである。

下手に過剰な夢を見るから、あてが外れて絶望する。地方移住は冷静に、合理的な手段であってそれ以上でもそれ以下でもない。

筆者はフルーツ事業の必要性から熊本県に移住した。東京への不満が動機ではなく、ビジネスをするには熊本県へ行くしかなかった。自分は地方移住をしたが、東京も地方もそれぞれの良さがあって両方大好きだが、あくまで人生の必要性で動いただけに過ぎない。

また、筆者の知人にこういう人物がいる。彼は根っからの釣り好きで、「釣りに人生を捧げる」という明確な目的のもと、琵琶湖近くに移住して釣りビジネスを立ち上げた。すでに10年以上定着し、地域コミュニティとの関係も良好だ。この人の場合も、「琵琶湖で釣りをするため」という確固たる目的があって、その目標達成の手段として移住したにすぎないのだ。

その逆に「東京が嫌だ」「人生をリセットしたい」という負の動機だけで移住する人は失敗率が高いと思っている。理由は単純、厳しい事を言うが「場所が悪い」のではなく「本人の適応力がない」のが原因だからだ。

つまり、東京に不満を感じて地方移住を考える人は、移住先でも別の不満を見つけて文句を言っているのだ。自分が変わらなければ一生、不満を次々と見つけ続けるだけである。それでは幸せな場所を掴むことは難しいだろう。

郷に入っては郷に従え

筆者が熊本へ移住した直後、最初から100%満足というわけではなかった。

たとえば地域の子供たちを集めるイベントの相談は、正直、いくつかの面で非効率に感じる部分はあった。

しかしそこであれこれ文句や不満を言うのはお門違いだ。自分はよそ者であり、その土地のやり方にはその土地の文脈がある。郷に入っては郷に従えの精神を持ちつつ、和を壊さない範囲で「こうすれば効率化できると思いますがどうでしょうか?」と下手に出ながら謙虚に提案する形を取った。摩擦は起こらず、それでうまく受け入れてもらえたことも多い。

自分の快適さを実現するために「周囲を従わせよう」とする我の強すぎる人は、地方移住に向いていない。いや、そういう人はどの場所にも向いていないだろう。問題は地方ではなく、本人の思考にある。

重要なのはメタ認知だ。「地方が合わない」ではなく「自分が適応できていない」と認識できるかどうかだ。この差は大きい。自分の適応力不足を自覚できれば、思考や行動を修正する余地が生まれる。

どの土地にも欠点はある。東京も通勤地獄・高い家賃・孤立というコストを抱えている。それを受け入れているのと同じように、地方のコストも当たり前にある。そのため、地方移住を検討する人は「自分に合う理想の土地を探す」という発想自体を疑った方がいい。

合わせるのは相手側ではなく、常に自分側なのだ。

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なめてくるバカを黙らせる技術」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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