世界的にみて中央銀行の金融政策決定会合の判断の行方がここまで漏れ伝わる国もないと思います。日銀は来週15-16日に定例会合を開催しますが、その際に現状の政策金利を0.25%引き上げて1.00%にするかどうかの判断をします。しかし、経済紙のみならず一般のニュースサイトにもあたかも引き上げが既に内定しているがごとく報じられているのは非常に違和感を感じます。

日銀・植田総裁と高市首相 2026年2月16日 首相官邸HPより
この背景は日銀総裁とメディアのコミュニケーションはシームレスであるべきというメディアの押し付けがあったことがあり、総裁をはじめ、副総裁や委員がほんの少しだけメディアにリークをしてサウンディング(市場への打診)を行うことで日銀の実際の決定が市場のコンセンサスと合致し、大きな波風が立たない様にする方針なのでしょう。特にこの傾向が強まったのが植田総裁になってからです。
ここまで漏れてしまったので1%に引き上げるのは既成事実であり、逆に引き上げないととんでもない衝撃が起きてしまうとも言えます。今の時点で利上げは100%と申し上げてよいと思います。
さてここに行きつくまでに植田総裁は高市首相と会談しています。高市氏は就任当時から利上げには消極的でどちらかと言うと黒田前日銀総裁のような政策を好んでいました。あくまでも個人的な印象ですが、高市氏は経済に関しては就任当時から多少違和感を持っています。もともとがマクロ経済というより経営畑の方ですし、安倍氏の経済政策を今でも踏襲しようとする姿勢がややもすれば古臭く、たぶん、経済のアップデートが十分ではないような気がします。高市氏は保守的姿勢に基づく各種政策を推進することは圧倒的強みを持っていますが、たぶん、経済についてはブレーンが弱いか本人が聞く気を持っていないような気がします。
経済は循環するものだというのは経済学の一年生で習うのですが、リフレ派が跋扈した2010年代初めは民主党政権の名残で日本経済が完全にシュリンクしていた時でした。よってその時のリフレ政策、及びそれによる80円を割るような円高からの政策転換で円安誘導は当時の政策としては正しく、黒田氏のマネーじゃぶじゃぶ政策も有効でした。が、時間軸と共に黒田氏の政策がほぼ無力化したのはその時点で経済のファンダメンタルズが変わりつつあったからであります。事実、黒田氏は現在の植田氏の政策について正しい方向と認めており、自分が総裁の時代とは違うのだ、ということを明白に示しています。
今は景気が良いのか、という話をすると多くの方は「物価が上がって大変」と言うでしょう。が、今の日本経済は需給ギャップもプラスでスタグフレーションの兆候はなく、物価上昇を吸収できる経済の強さというのが実際のところであります。(異論がある方は多いはずですが、自分の懐の話ではなくマクロの話なのでそこはご了承ください。)つまり今は経済はアクセルを吹かす時期ではなく、多少、抑制的にしておくことで経済の暴発を防ぐ必要があります。高速道路で100㌔で走っている時に更にアクセルを吹かして120㌔にすれば事故になるリスクが高まるのと同じです。
日銀は今年、もう一度利上げをするか、と言う点については私はあり得る、と申し上げました。ブルームバーグに元日銀理事の早川英男氏のインタビュー記事があります。それによると氏は中立金利は現状、実質的に1.50%程度、よって早ければ10月にも再利上げがあるかもしれないと述べています。私はこのストーリーは支持できる流れだと思います。
一方、あまりいただけなかったのが日経の記事。編集委員記事に「日銀利上げ静観の高市首相 背景に2つの風圧、問題は『次の次」」と言うのがあります。その文中、日銀の6月の利上げは市場がほぼ織り込み済みで懸案の円安や国債価格の下落が止まらないならば「高市氏は逆にさらなる利上げに意味はあるのかと考え、反対姿勢をとる展開もありうる」とあります。これは違うだろうと思うのです。
為替や国債価格は世界との金利水準の差である「相対評価」はそのエレメントの一部に過ぎず、あくまでも総合的な国力が絶対評価として存在します。国力は経済のみならず、日本の置かれた立ち位置なども当然考慮されます。ここを強化したいのか、今のような過去のポピュリズム政権方針を引きずるようなポリシーでよいのかは時の首相の判断次第であります。
その点からすると私が勝手に見る高市氏の経済スタンスは引き続きポピュリズムに偏っているとみています。選挙の際、有権者が一番重視するのは経済政策です。が、今の状況は決して「経済の高市」と誇れるような政策方針とは感じませんし、今のところ、ご本人の考えも首相就任当時から大きくは変わっていないように見えます。
このブログの読者は私が高市氏を嫌いだと思っている方もいるでしょう。子供じゃあるまいし、そんな単純なものではありません。彼女は出来る部分と不得手な部分が非常に明白に分かれているのです。できる部分については立派だと思うし、応援していますが、できない部分をブレーンの力を借りるなどして修復するのが得手ではないことが今のところ残念な点であり、時々苦いコメントをさせて頂いているのであります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年6月10日の記事より転載させていただきました。







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