AI開発会社のトップが鳴らした警鐘:10年後に激減する職種と生き残る仕事

「AIを作っている本人」が雇用の危機を叫んでいる

AIで仕事が奪われる、という話はもう聞き飽きた、という方も多いと思う。でも、その警告を一番大きな声で出しているのが、外野の評論家ではなく「AIを作っている当事者」だとしたら、少し受け止め方が変わる。

私が普段から注目しているAI開発企業のひとつに、いつも使っているClaudeを開発するAnthropic(アンソロピック)がある。同社のダリオ・アモデイCEOは2025年5月、Axiosのインタビューでこんな趣旨の発言をして、世界中で話題になった。

「AIは今後1〜5年で、ホワイトカラーの新人レベルの仕事のおよそ半分を消し去る可能性がある。その結果、失業率は10〜20%まで跳ね上がりかねない」

しかも彼は、ぼんやりした遠い未来の脅威としてではなく、金融・コンサル・法律・テックといった具体的な業界名と、具体的な時間軸を挙げて語った。AIで儲けている人間が、自分の作っている技術の危険性をここまで率直に言うのは、正直かなり珍しい。

アモデイ氏が印象的だったのは、「良いシナリオ」を描いてさえ怖い、という指摘。彼の言い方を要約すると——「がんが治り、経済は年10%成長し、財政は均衡する。でもその一方で、2割の人には仕事がない」。つまり、技術的なバラ色の未来が来たとしても、雇用の問題は別個に残るかもしれない、ということですよ。

そして彼は「ほとんどの人が、これがもうすぐ起きることに気づいていない」「技術を作っている我々には、何が来るのかを正直に語る義務がある」とも。

ダボスでの「認知の幅広さ」という指摘

この警告は一度きりではなかった。2026年1月のダボス会議では、アモデイ氏はAIの「認知の幅広さ(cognitive breadth)」という概念を持ち出した。

これまでの自動化は、業界を1つずつ順番に飲み込んでいくものでした。ATMが銀行の窓口係を、というように。ところがAIは、金融・コンサル・法律・テックを同時に揺さぶる。だから、ある業界がダメになったら隣の業界に逃げる、という従来の「職替え」が効きにくい。AIは特定の1職種ではなく「人間労働の汎用的な代替物」として振る舞うことになる

ところが2026年、論調が変わってきた

ここが面白いところで1年間ずっと「ホワイトカラーの大量失業」を警告し続けたアモデイ氏は、2026年5月、JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOと並んだ場で、まったく別の枠組みを持ち出してきた。「ジェボンズのパラドックス」です。

ジェボンズのパラドックスとは、19世紀の経済学者ジェボンズが石炭で観察した逆説です。蒸気機関の効率が上がって石炭が安く使えるようになると、石炭の総消費量は減るどころか増えた。効率化は需要を縮めるのではなく、むしろ刺激する、という考え方のこと。

これを労働に当てはめると、こうなる。AIが弁護士の生産性を10倍にすれば、法律サービスは安くなる。安くなれば使う人が増える。需要が増えれば、弁護士は減るどころか増える——。アモデイ氏自身の表現を借りれば、「仕事の90%が自動化されたら、みんなが残りの10%をやるようになる。その10%が膨らんで仕事の100%になり、生産性が10倍になる」というイメージですね。

ただ、私が注目したのは、彼がこの楽観論を口にしたその同じ口で釘を刺したこと。「AIはこれまでのどの技術よりも速く動いている。システムに普段以上の負荷がかかると、変な挙動や大きな混乱が起きうる」と。

ジェボンズのパラドックスが機能するには時間がいる。市場が新しい需要に気づく時間、労働者が学び直す時間、企業が雇用を縮小ではなく拡大に振り向ける時間。ATMが窓口係を減らすのに20年かかったように。ところがAIは20年の時間軸では動いていない。長期的には雇用が増えるとしても、その調整が間に合う前に、いま現場にいる人が振り落とされてしまう——彼の楽観論には、この問題が解けないまま残っているわけですね。

(ちなみにFortune誌は、この論調変化について「本当に考えを更新したのか、それともペンタゴンとの訴訟や規制環境のなかで“悲観論”の政治的コストが高くなっただけなのか」と、やや意地悪な見方も併記していました)

データで見る「消える職種」

CEOの直感だけでは話が進みません。もう少し硬いデータを見てみます。

世界経済フォーラム(WEF)の『Future of Jobs Report 2025』は、世界1,000社超・1,400万人の労働者を代表する企業を調査したもので、現時点でもっとも体系的なデータのひとつです。結論はこう。

  • 2030年までに9,200万の雇用が失われ、1億7,000万が生まれる。差し引き純増7,800万
  • ただし、労働者のコアスキルの約4割が、2025〜2030年で陳腐化または変化する
  • 100人のうち59人が学び直しを必要とし、そのうち11人は学び直しの機会を得られない見込み

つまり「全体では雇用は増えるが、中身がごっそり入れ替わる」。この入れ替わりに乗れるかどうかが勝負、というわけです。

減る職種(絶対数で最大の減少)は、見事に事務・定型業務に集中している。言い換えるならPCの前で仕事をしている人たちから始まる

  • レジ係・チケット係
  • 一般事務・秘書・エグゼクティブアシスタント
  • 郵便局員、銀行窓口係(テラー)
  • データ入力係
  • 経理・簿記の事務、会計士・監査人

そして2025年版で初めてグラフィックデザイナーが減少リストに入った。生成AIが画像・テキスト・動画を量産できるようになったから。

アモデイ氏が名指しした「新人レベルで特にリスクが高い職種」も重なる。ジュニアのソフトウェア開発者、法律事務所の1年目アソシエイト(書類レビュー業務)、ジュニアの金融アナリスト、新人コンサルタント、パラリーガル、医療コーダー、ジュニアのマーケター、データ入力。いずれも「専門職への入り口」だった仕事です。

実際の足元のデータも、警告の方向と一致しています。2025年はテック企業の新人採用が3〜5割減少し、米国ではAIを直接の理由とするレイオフが約5万5,000件、ウォール街では新人アナリスト中心に約20万人規模の削減が報じられました。

ただし、ここは冷静に。雇用調査会社チャレンジャー社によれば、2025年のレイオフ全体に占めるAI起因の比率は約4.5%。決して小さくはありませんが、「ホワイトカラー大虐殺」という見出しが煽るほどの黙示録ではない、というのも事実です。

日本の事情——「49%」の正体

日本の文脈も押さえておきます。野村総合研究所とオックスフォード大学のオズボーン准教授らの共同研究(2015年)では、日本の労働人口の約49%が、技術的にはAIやロボットで代替可能と試算された。これは米国の47%、英国の35%を上回る数字ですよね。

なぜ日本が高いのか。野村総研は「ホワイトカラーの労働生産性が低く、AIやロボットで代替できるような仕事をしている人が多いから」と説明しています。耳が痛い話わあ。

ただし、この「49%」には大事な注釈があります。これは「技術的に代替可能な最大値」であって、実際に半分の仕事が消えるという意味ではないと。AIの研究開発にもコストはかかるし、人材を雇うほうが安ければすぐには置き換わらない。むしろ日本の場合、深刻な人手不足があるので、AIによる代替は「失業」ではなく「足りない労働力の穴埋め」として歓迎される面すらある。

逆に、AIが超速進化しても高給で生き残る仕事

AIに仕事を奪われた人たちは、いやおうなしにブルーカラーやAIに置き換わらないに転職します。
具体的には

  1. 介護職・訪問介護・施設介護
  2. 看護師・訪問看護・救急医療スタッフ
  3. 保育士・幼児教育・小学校低学年教育
  4. 建設技能者、大工、配管工、電気工事士、設備工
  5. 医師、歯科医師、救急・外科系専門職
  6. 理美容師、整体師、マッサージ、鍼灸、パーソナルケア
  7. 料理人、現場調理、個人店の接客型飲食
  8. 警察、消防、自衛隊、警備、災害対応
  9. 農業・漁業・林業の現場技能者
  10. 営業、交渉、経営者、現場マネージャー

あたりですが、介護や保育士は賃金の大部分が社会保険料や税金なので賃金は低めです。そこで次の項では、AIが普及しても高い賃金で働ける職種は何かをAIと考えました。

ここからが本題の後半です。では、何が残るのか。複数の分析を突き合わせると、生き残る仕事には驚くほど共通の「堀(モート)」がありました。次の3つ+1のどれかを持っている仕事ですね。

  1. 予測不能な環境での物理的な存在・手わざ(現場でしか起きない作業)
  2. 高い責任を伴う、免許制の高度な判断(間違えたら誰かが責任を取る仕事)
  3. 深い信頼にもとづく人間関係(相手が「この人だから」と指名する仕事)
  4. AIそのものを作る・使いこなす側

具体的な職種を挙げると——

  • 熟練技能職:電気工事士、配管工、空調(HVAC)技術者、溶接工。これは特に強い。北米では大都市のトップ層が年20万ドル超を稼ぎ、しかもデータセンターやEVの普及で需要が増えています。ユニークで予測不能な現場で起きるため、物理的に大規模な自動化が困難。
  • 医療・ケアの実務職:看護師(特にナースプラクティショナー)、専門外科医(心臓血管・脳神経・整形外科など)、理学療法士。ミリ単位の運動制御、その場の判断、絶対的な説明責任が要る。AIは診断を補助できても、最終判断とベッドサイドの振る舞いは人間に残る。
  • メンタルヘルス・対人:臨床心理士、セラピスト、カウンセラー。あらゆる分析で「AI耐性が最も高い」カテゴリの常連。
  • シニアの専門職:M&A担当のシニア弁護士、最高AI責任者(CAIO)、サイバーセキュリティ部門の責任者、トップクラスの法人営業、シニアプロダクトマネージャー、エグゼクティブコーチ。共通項は「高度な判断・対人関係・高いリスク」。
  • 創造的ディレクション:クリエイティブディレクター、ブランド戦略家、UXリサーチャー。AIは画像や文章を量産できても、文化的文脈やブランドの歴史、刺さるキャンペーンの裏にある感情の心理までは理解できない。AIを制作ツールとして使いつつ、方向性と「刺さるか」の判断を人間が握る人が伸びています。

野村総研の整理もここに重なります。同社は「芸術・哲学のように抽象的な概念を扱う仕事」「他者との協調・説得・交渉が要る仕事」は代替が難しいとし、アートディレクター、映画監督、医師、経営コンサルタント、心理学研究者、レストラン支配人などを例に挙げていた。

一番大事なのは「職種」より「立ち位置」

私がこの一連の分析でいちばん腑に落ちたのは、安全かどうかは職種だけでは決まらない、という視点。

同じ会計でも、ジュニアの経理担当は危ない。でもシニアのCFOは安全。同じエンジニアでも、ジュニア開発者は危ない。でもシステム全体を設計するスタッフエンジニアは安全。AIに圧縮されているのは「中間」なんです。定型的な実装や処理の部分は機械が引き受け、判断・設計・責任の部分が人間に残る。

だから、いま伸びる人の働き方は「AIに置き換えられる側」ではなく「AIを束ねて指揮する側」です。100人のジュニアに100人分の単純作業をさせる代わりに、20人の優秀なジュニアにそれぞれAIエージェントを5人分付けて、5倍の仕事をさせる。給料はむしろ上げる。——これがアモデイ氏の同僚たちが描く近未来の組織像ですね。

いまのうちに転職するなら、ここを狙う

長くなりましたが、実用的な結論です。「10年後に向けていま動くなら」、私なら次の方向を勧めます。

① いまの専門領域で「上」に抜ける

分野を投げ捨てて逃げるのは、たいてい悪手です。それより、自分の職種の中で「判断・設計・責任」を担うシニア側へ一刻も早く突き抜けること。AIをいち早く道具として使いこなし、生産性を10倍にして見せる人が、結局いちばん安全です。中間層の椅子は減り続けるので、座り続けるより早く立ち上がるイメージです。

② 熟練技能職(手に職)

日本は深刻な人手不足で、しかも電気・空調・建設・インフラ保守は「予測不能な現場」の塊です。AIが超速進化しても、現場で手を動かす技能は最後まで残り、人手不足ゆえに賃金も上がりやすい。学歴より資格・徒弟・実地が効く世界で、参入障壁の低さも魅力です。

③ 医療・介護・ケア

日本の超高齢化は、好むと好まざるとにかかわらず巨大な構造的需要を生みます。看護・リハビリ・対人ケアは、まさに「物理的存在+信頼関係」というAI耐性の高い要素の塊。社会的にも経済的にも、当面いちばん固い土俵のひとつ。

④ AIを「作る・束ねる」側へ

AI/機械学習エンジニア、ビッグデータ専門職、フィンテックエンジニア、サイバーセキュリティ——WEFの「最も伸びる職種」リストの上位はここで占められています。フルにエンジニアにならなくても、「自分の業務領域 × AIを使いこなす力」を掛け算するだけで、希少性は跳ね上がります。

まとめ——「適応し続ける力」こそが最強の資産

最後に、いちばん本質的だと思った指摘を紹介して終わります。ある分析家がこう書いていました。「リストのどの仕事を選ぶかも大事だが、本当にAIに強い資産は、何十年も適応し続けようとする意志そのものだ」と。

AIを作っている当事者でさえ、1年で「大量失業」から「ジェボンズのパラドックス」へと見立てを変えています。それくらい不確実で、速い。だとすれば、「絶対に安全な職種」を探すより、「変化の中で立ち位置を更新し続けられる自分」を作るほうが、はるかに堅い投資なのだと思います。

10年後、あなたの仕事は「消える側」でしょうか、「束ねる側」でしょうか。動くなら、たぶん、いまのうちです。

完全に断言できるのは、
「Fランに遊び半分にいって大学生活を楽しみ、なんとか綺麗そうに見える職場に潜り込んで最低限の労働時間で楽しく過ごす」という価値観ではあと5年で職を失いブルーカラーにならざるを得ないということです。考えなくて良い仕事はAIに取られる。PCの前で働く仕事も取られる。学生時代から必死に勉強して研鑽する仕事でしかまちもに稼げなくなるでしょう。

※本記事はAxios、世界経済フォーラム『Future of Jobs Report 2025』、Fortune、野村総合研究所の公開情報をもとに構成しています。各種予測はあくまで将来の可能性であり、実際の雇用動向を保証するものではありません。


理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年6月10日の記事より転載させていただきました。

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