病院のキャンセル料にまつわる誤解と予約患者の待ち時間

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病院の予約キャンセル料をめぐり、「6月から病院の予約をキャンセルすると金を取られる」といった受け止めが広がっている。

【解説】病院の予約キャンセル料…なぜ誤解が? 厚労省「無料予約では発生せず」【 #みんなのギモン 】(2026年5月29日掲載)|日テレNEWS NNN
6月1日から一部の病院やクリニックで、診療予約のキャンセル料を請求できるようになりますが、すべての患者にキャンセル料が発生するかのような誤解が広がっています。厚生労働省は、医療機関側に誤解を招いたとして通知の言葉を訂正する方向で調整していま...

しかし、これはかなり雑な理解である。

今回のキャンセル料は、診療報酬として新設されたものではない。厚生労働省通知上は、「療養の給付と直接関係ないサービス等」として、予約に基づく診察の患者都合による直前キャンセル料などが整理されたものだ。

費用を徴収するには、院内掲示、ウェブ掲載、内容や料金の説明、患者の同意、社会的に妥当な金額、他の費用と区別した領収証などが求められる。つまり、病院の予約をキャンセルしたら一律に金を取られる、という話ではない。

また、保険外併用療養費に係る選定療養としての予約診察制度には、従来から予約料を届け出る枠組みがある。今回のキャンセル料を、この予約診察制度と混同して、「すべての外来予約でキャンセル料が取られる」と理解するのは誤りである。

では、どこでキャンセル料の議論が現実味を持つのか。

ネット上の反応を見る限り、中心は歯科、健診、内視鏡、MRI、日帰り手術、精神科・心療内科、リハビリ、専門外来などである。これらは、人員、機器、薬剤、部屋、診療枠を具体的に確保する「枠運用型医療」だ。

歯科であれば診療台とスタッフを押さえる。内視鏡やMRIでは機器、検査技師、前処置、薬剤などが関わる。健診も同じである。患者が直前に来なければ、その枠をすぐに別の患者で埋めることは難しい。実損や機会損失が生じる。

ここに一定のキャンセル料を認めることには合理性がある。私は、キャンセル料そのものに反対ではない。

実際、医療機関向けには、キャンセルポリシーの案内、空き枠の再案内、決済リンクの発行までを支援するサービスも出てきている。医療機関側の損失を管理する仕組みは、すでに市場が作り始めている。

だからこそ問いたい。患者側の時間を管理する仕組みは、同じ速度で整っているのか。

問題は、歯科や検査と総合病院の一般外来を、同じ「予約」として扱ってよいのかという点である。

一般外来でキャンセル料徴収が広がるとは、現時点では考えにくい。理由は単純で、多くの一般外来の予約は、厳密な時間枠予約ではないからだ。

10時予約と書かれていても、実態は「10時に診察する約束」ではなく、「10時頃に来院・受付してください」という目安に近いことが少なくない。救急患者が入る。重症患者が優先される。前の診察が長引く。検査結果待ちや病棟対応もある。医療は美容院や飲食店とは違う。

これはその通りである。

しかし、そうであるなら、総合病院の一般外来で本当に問うべきはキャンセル料ではない。待ち時間である。

2023年受療行動調査によれば、病院外来患者の79.4%は予約をしている。特定機能病院では94.0%、大病院でも90.5%に達する。つまり大病院外来は、すでに予約中心である。

問題は予約がないことではない。予約しても待つことである。

同調査では、外来患者の項目別満足度で、最も不満が高いのは「診察までの待ち時間」だった。不満の割合は全体で25.5%、特定機能病院では37.1%、大病院では33.8%に達する。

さらに診察時間を見ると、「5分から10分未満」が40.9%、「5分未満」が28.1%である。病院外来では、およそ7割が10分未満の診察で終わる。

すべての患者が数時間待っているわけではない。しかし、患者が「長く待って、短く診られる」と感じることには、統計的な裏づけがある。

患者側も馬鹿ではない。待ち時間を減らすため、朝一番の予約を取ろうとする。朝一番なら、前の診察が押すことも少ない。しかし、その枠はすぐに埋まる。朝一番を取れなかった患者は、前の診察、検査、急患対応が積み重なった外来に放り込まれる。

開業医では、順番予約やウェブ受付、呼び出し通知を導入している例も珍しくなくなった。もちろん十分ではないが、患者が自宅や職場で順番を確認し、近づいたら来院できる仕組みは広がりつつある。

問題の本丸は、むしろ総合病院の一般外来である。

待ち時間管理システムは、すでに存在する。順番表示、呼び出し通知、ウェブ受付、会計待ち短縮など、技術要素はそろっている。問題は技術の不在ではない。それが総合病院外来の標準インフラになっていないことである。

単に院内で番号を表示するだけでは足りない。患者が知りたいのは、すでに病院に着いてからの順番ではなく、いま家を出るべきか、仕事を抜けるべきか、付き添い者に連絡すべきかである。来院前に判断できる情報が必要なのだ。

医療DXというなら、オンライン資格確認や電子処方箋、電子カルテ情報共有だけでは足りない。患者にとって最も身近なDXは、「今日はどれくらい待つのか」「いま家を出るべきか」「再予約した方がよいのか」が分かることである。

総合病院こそ、診療科別の遅延状況、来院前通知、現在の呼び出し番号、検査や会計の進行状況を見える化すべきである。大幅に遅れるなら、無償再予約や来院時刻変更も選べるようにすべきだ。

キャンセル料が患者の時間不履行を可視化する制度なら、待ち時間通知は医療機関側の時間不履行を可視化する制度である。

歯科や検査のキャンセル料は分かる。

では、総合病院で患者が失っている時間は、いったい誰が負担しているのか。

厚労省はDX加算を患者の利益のために設定しても良いのではないだろうか。

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