「AbemaTV」より。パーソナリティは福嶋尊
総務省が発表している「民間放送事業者の収支状況」を読み解くと、既存メディアの衰退が顕著に現れている。特にデフレの影響を受けて広告予算の削減傾向にあることが分かる。
このようななか、注目を集めているのが、インターネットTV(以下、ネットTV)である。サイバーエージェント、テレビ朝日によって設立された「AbemaTV」は9月11日(日)時点で番組専用アプリが「800万ダウンロードを突破した」ことを公表した。ネットTVは新しいメディアとして注目を集めているのである。
今回は、「AbemaTV」で番組を放送している、福嶋尊(以下、福嶋)氏に、ネットTVの効果的な使い方と遣り甲斐について聞いた。
■仕事の遣り甲斐とは何なのか
注目したいのは福嶋の経歴である。高校を卒業後に、青山学院に入学し卒業するが遣り甲斐が見つからず就職を断念。次に教員を志して首都圏の国公立大に入学する。しかし、資格を取得するも就職したのは当時人気の流通大手企業だった。
「大企業で待遇は悪くなかったと思います。知人からは、うらやましがられました。しかし、自分の気持ちは疲弊していきました。遣り甲斐のある仕事とは何なのでしょうか。いま言えることは嫌いな仕事をしてはいけないということです。」(福嶋)
「どんな仕事だったら遣り甲斐を実感できるのか。多くの人が悩んでいることです。仕事をしていれば上手くいかないこともあります。遣り甲斐を感じることができるかは、仕事が楽しいと思えるかの尺度が重要だと思います。」(同)
その後、福嶋は資格を取得し整骨院を開院する。もともと福嶋は、スポーツ医学に関して独自の見解を持っていたのでそれを活かすことにしたのである。いまでは、スポーツトレーナーや個別インストラクターまで幅広くおこなっている。主要な資格として、柔道整復師、高等学校教諭一種免許状、司書教諭を所持している。
そして、遣り甲斐とは、「目標を達成することが楽しく思える仕事」でなければいけないと、次のように述べている。
「嫌なことの目標を立てられても『やらされ感』が出てしまいます。ですが、好きなことの目標であれば達成した時のイメージが実感できるので『やる気』が満ち溢れてくるものです。いまの私であれば、番組の視聴率や視聴数などの数値目標は『やる気』を生み出す大きな原動力になっています。」(福嶋)
福嶋の番組は視聴率が高いと言う評価をされているそうだ。視聴率が悪ければ休止を余儀なくされる。そのように考えれば数値目標を負うことは決して楽ではない。しかし、好きなことの目標は、苦ではなく難易度が高いほどに達成感は大きくなっていく。「難易度が高いほどワクワクする感じ」とはこのような感覚なのかも知れない。
■齢四十路を迎えるも夢はこれから
ネットTVの最大の特徴は、テレビやチューナーがなくても見ることができる点である。テレビを視聴するにはチューナーやアンテナが必要になる。しかし、ネットTVはインターネット環境さえあれば、手軽にテレビの視聴ができる。
「ネットTVは、手軽さとインタラクティブな点が優れています。ありのままを伝えるので、コアなフアン層が形成されます。さらに、リアルにするために勉強会などを開催すると効果的です。私は、読書会などを開催しています。読書会には、セミナー講師や著者をゲストで呼びますから、参加者の満足度を高めることにもつながります。」(福嶋)
ネットとリアルの融合によって効果を引き出している事例ともいえるだろう。フアン層を囲い込むことによって満足度をアップさせることが可能になる。しかし、これらの手法は超アナログともいえる。ネットTVというハイセンスなメディアに、超アナログなエッセンスを加味することで促進させているからだ。
「ネットTVの情報発信は難しいものではありませんが即効性を求めないことも大切です。まずは、比較的長いスパンできっちりとした番組を組成していくことが必要です。好きなことであれば、試行錯誤しながらも方向性を導き出すための努力はいとわないものです。整骨院の経営やネットTVは私にとって大きな遣り甲斐となりました。」(福嶋)
なお、福嶋は、齢四十路を迎えているが「夢をあきらめない」と言う。私のまわりでも、同じような人が増えている。遣り甲斐を追求することに年齢は関係ないのかも知れない。
さて、テレビ離れが生じているといわれて久しいが、ネットTVの攻勢により、市場は活性化の様相を呈している。TV地上波や既存メディアは成熟産業とも称されているが、どのような施策を講じるのか各メディアの叡智が試されている。
尾藤克之
コラムニスト
PS
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