自民党の中曽根弘文憲法改正実現本部長の発言が大きな波紋を広げている。中曽根氏は6月28日、富山県高岡市で講演し、天皇陛下の長女・愛子さまによる皇位継承について「あり得ない」と述べたうえで、「愛子さまが天皇になったら、結婚する人もいない」と発言した。(共同通信)
さらに愛子さまが天皇になった場合には「男子を産まないといけないという、すごいプレッシャーがある」とも語ったという。
「愛子天皇を阻止したい」という自民党の本音
現行の皇室典範では、皇位は「皇統に属する男系の男子」が継承すると定められているので、現在の制度のままでは愛子さまに皇位継承資格がないという説明は正しいが、「結婚できない」という女性を侮辱する表現には多くの女性が怒った。
発言の趣旨は、女性天皇を認めた場合、結婚相手となる男性や、その間に生まれる子どもに重い期待がかかるということだったのだろう。中曽根氏はその後、自身の発言について「言葉が適切でなかった点があった」と述べた。
この発言は、男系男子維持論の本音を見せた。男子を産まなければならないプレッシャーがあるのは、現行の皇室典範が女系継承を認めていないからだ。これは悠仁様の結婚・出産に関しても同じで、女系継承を認めればそんなプレッシャーはなくなる。
今まで自民党は、奇妙な養子案の理由を「皇族数の増加」などと説明して皇位継承との関係を隠していたが、中曽根発言は「愛子天皇を阻止したい」という自民党の本音をポロリと見せてしまった。
不自然な「男系養子案」の動機は男尊女卑の古い価値観
いま政府・与党が進めようとしている皇室典範改正案は、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つが、女性には住民基本台帳法を適用するという。これは愛子様が結婚した場合には皇統譜(天皇家の戸籍)から削除し、皇位継承を阻止するためではないか。
旧宮家の15歳以上の男系男子を養子として皇族に迎え、養子本人には皇位継承資格を持たせない一方、その男子の子どもには現行典範を適用して皇位継承資格を持たせ無理な制度にも、大きな矛盾がある。
愛子さまが天皇になれば結婚相手に重圧がかかるというなら、旧宮家から養子に来る男性、その結婚相手、さらにその子どもにも、同じかそれ以上の重圧がかかるはずだ。しかも旧宮家の男性は、現在は一般国民として生活している。そこに皇族としての身分を与え、皇籍離脱は許されない。未成年の運命を政治が決めてもいいのか。
世論との乖離も見逃せない。2024年4月下旬に公表された共同通信の世論調査について、衆議院の質問主意書では、女性天皇に「賛成」「どちらかといえば賛成」が合計90%、女系天皇にも合計84%が賛成だった一方、旧宮家男性子孫を皇族にして男系男子を維持する案への賛成は合計25%、反対は合計74%だった。(衆議院)
中曽根氏はこの世論にも危機感を強め、「皇位継承は人気投票で決めてはいけない」というが、自民党の養子案は自民党の古い支持層の人気取りである。それが若い世代や女性に圧倒的な反発を受けていることは、政治的にも得策でないことを示している。
「男系継承」にこだわって皇室を危機に追い込む男系派
今回の発言が大反響を呼んだのは、単に言葉が乱暴だったからではない。多くの国民が、愛子さま個人の尊厳に関わる話を、政治家があまりに軽く扱ったと感じたからだ。旧宮家養子案という迂回路を使ってまで男系男子に固執する制度設計が、かえって皇位継承者を減らして皇室を危機に追い込んでいる。
問題は「愛子天皇と結婚する男がいるか」ではない。問題は、皇室の存続を一人の女性の結婚や出産、一人の男性の養子入り、その子どもの性別に賭ける制度が本当に安定的なのか、という点である。なるべく幅広く後継者をさがし、皇室の存続を確実にする方法を考えるべきだ。
中曽根発言は、今まで皇位継承論議が避けてきた核心を突いてしまった。愛子天皇を排除しようとする男尊女卑の思い込みが、皇室を先細りさせているのではないか。今回の騒動は、その問いを国民の前に改めて突きつけたのである。







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