黒坂岳央です。
退職が決まった瞬間、人は変わる。いや正確にいうと「本性を現す」という方が正しい。会社でつけていた仮面が外れるのだ。
会社員の行動は、上司の評価、昇進、人間関係の維持、将来の査定といったインセンティブに縛られている。退職が決まれば、これらの大半が消滅する。制約が外れて自由を得た時、その人が何に自由を使うのか?ここに本性が出るわけだ。
ここで多くの人は「いい加減になる人間=人格が低い」と短絡的に評価するが、それは間違いだ。退職後の崩れ方には複数のパターンがあり、原因によって評価は全く異なる。

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契約遵守型
引き継ぎはきっちり行うが、それ以上の労働はしない。定時で帰り、空気を読んで手を出すといった貢献を一切拒否する。
周囲からは「いきなり冷たくなった」と見られがちだが、これは退職時に限った変化ではない。在職中から「労働は契約の範囲内で履行するもの」という価値観を一貫して持っていた人間が、退職という局面でもその一貫性を保っているにすぎない。
これは急に冷淡になったのではなく、元々契約以上のことをしない人間が、契約以上のことを求められる圧力から解放されただけである。
無責任型
「最後くらい困らせてやる」「残った人がどうなっても構わない」という発想で、引き継ぎを雑にする、指示に従わない、嫌味を言う。これは組織への蓄積された敵意が、退職という安全な出口で表面化した形だ。
筆者がいた会社にこのタイプがいた。この社員は退職が決まった瞬間、周囲の目を気にせず全力でサボり出した。引き継ぎはメモ書きレベル、就業時間中はずっとニュースを見たり転職サイトを覗いていた。
「めっちゃサボってるけどいいんですか」と若い頃の自分はイライラして上司に報告をした。だが、「ああ、大丈夫。いいいい。あの人はもう変わらないから」と気にしない様子だった。最後の方はとうとう電話も取らなくなり、昼休みも外出して2時間くらい帰ってこなくなった。おそらく、ショッピングに行ったのだろう。
激怒したもう一人の怖い鬼上司が厳しく叱っても「はーい」みたいな舐めた返事をするだけで最後まで仕事をしなかった。送迎会なども拒否、立つ鳥跡を濁さずの真逆を行くタイプだった。
こうした無責任型は正直、褒められたものではない。仮に会社がブラック企業なら、この反発は動機としては理解できる。だがその場合でも、多くの場合、実際に被害を受けるのは後任や同僚という、当の本人とは無関係な人間だ。
会社への怒りを、会社とは関係のない個人にぶつけている時点で、非常にお子様な人格といえる。
責任完遂型
最後に最も理想的な形、責任完遂型である。手前味噌でおこがましいが、自分自身がこのタイプである。
引き継ぎ資料を丁寧に作る。後任を育てる。最終日まで手を抜かない。周囲への感謝を忘れない。評価も昇進も将来の査定も消えた状態で、それでも質を落とさない。自分はこれを心がけた。
筆者は上司から大変感謝され、「最後まできっちりやってくれてありがとう。次の仕事も頑張って」とワインをプレゼントしてもらえた。社や部署から、というより個人的に贈ってくれたものだった。
自分はこのタイプを「美談」として消費しない。この人物にとって、仕事の質は他者評価によって駆動されていたのではなく、自分自身の基準によって駆動されている。
上司の目があろうがなかろうが関係ない。「退職が決まったからといって、仕事を投げ出す人間になりたくない」という感覚なのだ。これは性分というか、プライドみたいなもので仮に会社がブラックでも関係なくきっちり最終日まで過ごしたいと考える。
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この手の話題で「人間の本性はこういう時に出る」というシリーズがあるが、いずれも共通しているのが「自由を得た時」である。
自分より立場が弱い相手、匿名性や権力を得た時、酒が入った時…すべて自由(もしくは「自由感」)で現れる。
退職が決まれば自由になる。そのため、退職日までの行動にその人の真の本性が現れるのだ。
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