マンション改修費が足りない!:あまりに安すぎる日本の修繕積立金

マンション住まいが当たり前の今日、その大規模修繕費は頭が痛い問題です。かつては修繕の問題は管理組合に任せっきりでうまくやってくれるだろう、ぐらいの感じだったと思いますが、今ではシリアスな問題を内包しているケースも多く、スルー出来ない状態です。

私もカナダではコンドミニアムに住んでおり、様々な通知が管理組合が委託した会社から来ます。日本ではどうか知りませんが、Emailでの通知がほとんどで更にこのマンションオーナーだけがアクセスできるネット上の管理ボックスがあり、そこに過去の管理組合の議事録から予算や工事のことまで全て簡単にわかるようになっています。

先般も管理費の年度予算の審議があり、ざっと見たら保険料が3割も上昇しているので「なぜ?」と聞けば管理会社の担当者が損害保険請求の事故があったから保険料が大きく上がると推測した、という訳です。これはこの担当者の勝手な憶測に基づく「安全と思われる数字」だとすぐに気がついたので「それはダメ。保険屋に見積もりが出来なくてもどれぐらい上がるものか、確認してください」と発言したところ、2日後に「おっしゃる通りに確認したところ、上がっても15%程度との回答だったので予算を修正します」と。こんなものなのです。管理会社はプロか、と言われればプロというより慣れているだけで本質をついていないことはしばしばあるのです。それを見抜けるかどうか、この勘所はなかなか経験者でないと分からないものです。

日本では改修費が高騰し、修繕積立金では足りず、外部ローンをするところも増えてきていると日経が報じています。ふと思うのは果たして管理組合がローンをすることは健全だろうか、しかし、ローンをせずに改修工事をすることも不可能で一種の袋小路にはまっていないだろうか、という懸念であります。

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マンションの改修問題は何処でも同じですが、カナダでのケースをご紹介します。基本的にプロ アクティブ(問題を予見し、問題が起きる前に計画実行すること)を前提としています。例えば私の住むコンドは来年、外装のペンキ塗り替えと必要に応じたコーキング作業が計画されていますが、これはほぼ10年に一度やるように組み込まれているのです。外装のペンキは防水効果があるのでこれを定期的にすることで建物の劣化を防ぐとともに問題になりそうな個所を見つけて補修することが出来るのです。

これらの作業をするにあたり日本との最大の違いは日本は足場などの仮設工事に工事費の3割ぐらいかかるのに対して当地では屋上から作業用ゴンドラをぶら下げる方式であり、仮設費用が極めて少ない点があります。日本で出来ない理由は建物の形状(フットプリント)が日本は大きいのに対して当地は鉛筆のように細い建物なのでぶら下げた方が作業がはかどること、及び人件費の考え方だと思います。

日本でいう大規模改修は15年とか20年に一度、一気に作業をしようとするケースが多いと思います。日経の記事にも建物のライフに対して大規模改修の回数を減らしながらまとめてやるという趣旨のことが指摘されています。私は逆だと思うのです。普段から細かい修復作業やメンテ作業をしながら建物の状態を完全に把握し、管理可能状態にすることで突然のトラブルに対応できると考えています。

では高騰する改修工事費にどう対応するか、です。日本では改修積立金が㎡当たり200円程度なので、多くの方は毎月15000円程度払っているかと思います。カナダには改修積立金と管理費の区別がなく、一括で毎月いくらという仕分けなのですが、私は月に約13万円ぐらい払っています。管理費と修繕費が半分ずつだとしても6.5万円ぐらいなので住宅の大きさを補正しても日本の3倍近く払っています。もちろん、カナダの工事費は日本に比べはるかに高いのですが、日本のタワマンなどの修繕費はいずれ欧米とさして変わらない水準になるのは目に見えており、日本の修繕費は将来的に大きく引き上げざるを得ないと思います。

少なくとも新発のマンションの修繕積立費は完成当初から常識をはるかに超える予算設定をすべきなのです。ところがマンションデベは月々の費用が高いと売れないので初期の費用を安く抑えます。これが後々の命取りになる、ということです。確かに当初予算はデベが決めるわけで私も何度もそれをやってきました。ただ、現実的ではない予算は管理会社から疑問符がつけられるし、それを恣意的にやれば逆に後々訴訟されるリスクもあるわけで予算の妥当性はそのマンションの一生を決めると言っても過言ではないのです。

改修積立金の運用も取りざたされています。確かに大きな金額を長期間に渡り置いておくので普通預金とか定期預金では物価上昇に負けるのです。物価上昇を超える運用を目指すにはどうしたらよいか、そしてそれに精通している人がいるのか、これも大きな課題となるでしょう。

建設会社の姿勢も大事です。管理組合は往々にして建物を施工した会社に大規模改修を依頼する傾向があります。でもそれは違うと思うのです。理由はゼネコンは新しく建物を作るのが得手で改修工事は不得手なのです。なのでゼネコンを雇ってもどうせ、仕事は下請けにほぼ丸投げでゼネコンだけが利益をかっさらっていくのです。世の中、これだけマンションが増えたので改修工事専業の業者が出来るべきで彼らが最も効率的で安くできる手法を編み出すことで日本のマンションの維持管理がよりスムーズになると思います。

日本は終の棲家という発想があり、マンションの住民は築年数分だけ歳を取るのです。築20年なら住民の多くは60歳に差し掛かるころでしょう。そして住民の新陳代謝は極めて少ないのです。よって時間がたてばたつほど日本のマンションの改修工事に対する金銭的耐性は弱まっていくという特性は十分に把握しておく必要があると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年7月8日の記事より転載させていただきました。

 

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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