毎月分配型投信の悪夢再び

内藤 忍

かつて日本の投資信託市場を席巻した「毎月分配型投信」の悪夢が株高のマーケット環境の中で再び蘇ってきたようです。

かつての毎月分配金の悪夢の象徴とも言える存在が、かつて一世を風靡した「グロソブ」ことグローバル・ソブリン・オープンです。

目先の分配金利回りの高さに目を奪われた個人投資家の間で人気となり日本最大の投資信託まで成長しましたが、為替リスクや世界的な低金利の波に飲み込まれ結局は元本を大きく毀損させる結果となりました。現在の基準価額は6,000円台です。

グロソブの教訓は投資の本質である「総リターン」を無視して目先の分配金だけに注目してはいけないということです。

毎月振り込まれる配当金の心地よさに酔いしれている間に、元本が削り取られていくタコ足配当の現実に気づいた時には、すでに手遅れになってしまいました。

最近、再び毎月分配型の「世界のベスト」という投資信託が人気になっています。残高は4兆円を超え株式のアクティブファンドとしては極めて巨大なファンドです(図表は決算タイミングや為替ヘッジなどの異なる8つのファンドの合計)。

こちらは債券ではなく先進国を中心とする優良企業の株式に厳選投資しする点でグロソブとは異なります。

グロソブが債券運用と為替リスクの掛け算から分配金を捻出しようとしたのに対し、世界のベストはよりアクティブに世界の株式の配当からのリターンを取り込もうとしているように見えます。

しかし、どれだけ投資対象が「ベスト」であっても毎月分配金を出し続けるという無理な仕組みを組み込んでいる以上根本的な問題からは逃れられません。現状は毎月150円の分配金を出しています。基準価額が9000円台前半ですから年間1,800円の分配金は20%近くになります。

投資信託の評価は目先のキャッシュフローではなく中長期的なトータルリターンで測るべきです。

そしてもう1つの致命的な問題点があります。「世界のベスト」は信託報酬が年1.9%以上と代表的な株式インデックスファンドの「オルカン」の30倍以上になっています。その高コストもあって運用成績は半年でも1年でも3年でも、いずれの期間でもインデックスよりも低くなっています。

どうしても毎月分配が必要なら低コストのインデックスファンドを購入して、ネット証券で提供されている投資信託の定期売却サービスを利用するのが合理的です。毎月自動で売却し、現金化(取り崩し)できるサービスは主要なネット証券の多くが提供しています。

シニア世代が毎月分配型ファンドに惹かれるのはわからないでもありません。しかし高コストの毎月分配型ファンドでグロソブと同じ再び悪夢(One more nightmare)に巻き込まれないように注意してください。

miya227/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年7月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント