
高市早苗政権の “高すぎる” 支持率だが、イラン戦争の頃からようやく下がる兆しが見えてきた。「高市離れ」を先導しているのは若年層で、もともと高齢層には「高市嫌い」もわりと多いから、最近はこんな感じらしい。
しかし、3月以降は状況が一変する。18~29歳の支持率は3月に前月比9ポイント減の61%、4月には51%まで落ち込んだ。
(中 略)
18~29歳と70歳以上の高齢層が比較的低く、30~60代が比較的高い構図だ。……若年層を含めた幅広い年代から受けていた支持は、現役世代中心の支持構造に変わりつつあるとみられる。
毎日新聞、2026.6.5
(強調を追加)
半年前も “半世紀前” も変わらないくらい、いまはみんな物忘れが激しいので、思い出そう。昨年の10月に政権が発足した時は、こんな空気だった。

高市内閣を「支持する」と回答した人の割合を年代別にみると、18~39歳が80%で前回9月調査〔石破政権時〕の15%から急増した。
(中 略)
若年層が支持を先導している。若年層の支持が多い傾向は、最近では第2次安倍内閣の支持動向に近い。
読売新聞、2025.10.23
(強調を変更)
トップをすげ替えるだけで「15%→ 80%」と支持率爆増なんだから、若者を釣るなんてチョロいもんだが、しかし彼らは冷めるのも早いのだ。なんつーか、”推し変” ってやつだよね(笑)。
そうなる理由はシンプルで、人生経験が短い方がサンクコストが少ないのである。俺の人生を「ここまで懸けてきた!」みたく過去に拘泥せず、イマイチなら次行こっかな、と割り切れるのは、いつの時代も若い人の特権だ。
言い方を変えると、「うおおおお!」にもネアカとネクラがあり、若いほど前者が多いのだ。むろん個人差が大きく一概には言えないが、逆に現役世代を中心に、支持をやめられない人の「うおおおお!」は闇が深いと思う。
昨年11月には……支持理由の最多だった「政策に期待できるから」は4割から3割弱に減っています。この一方で増えたのが「他の人よりましだから」で、〔5月には〕昨年11月調査よりも倍増して約3割を占めています。
こうした結果から、米重〔克洋〕氏は「高市内閣の支持率は外形的にそんなに変わっていないように見えたとしても、中身は弱い支持に変わってきている」と指摘します。
選挙ドットコム、2026.6.2
発足時の空気が似ていた(2度目の)安倍政権もそうだったけど、途中からこの人ニセモノっぽい? と気づいても、「でも他にいないんだよ!」でのめり込まざるを得ない事情があるのだ。いやぁ、サンクコストはつらい。
ちょうどホストやホステスに入れあげちゃったような状態で、特定の政治家から離れられないのが、陰性のうおおおおだ。競馬やパチンコでハズレに注ぎ込みすぎて、「このままじゃ帰れない」ときの気持ちだとも言える。
…そろそろわかってきたでしょ? つまりそれは “依存症” の症状であって、どう緩和するかという「臨床」の知見なしには、高市さんを退陣まで導く道筋も見えないんですよ。安倍政権なんて、史上最長まで続いたんだから。

上の記事でも言及した、『表現者クライテリオン』7月号の特集のひとつが「さらば、平成保守!」で、まさに世代論として興味深く読んだ。平成期に “保守派” になった5名の著者が、それぞれの実人生をふり返っている。
生まれた年は上から順に、1980年・81年・84年・85年・2002年。最年長は平成が始まるとき小学校の半ばで、いちばん若い寄稿者はその終わりに高校生という感じだ。他では見ない組みあわせの、よい企画だと思う。
もうひとつの特集は「アメリカが世界を破壊する」だが、対米自立論の白井聡さん(1977年生)の次の一節には「ほほぅ」と思った。いわく――
筆者が希望を確信できることがひとつだけある。それは日本の若い世代の動向だ。大学で教鞭を取るなかで近年感じる学生の変化は、アメリカを尊敬しなくなってきた、という傾向である。アメリカを偉大な国だとは見ない若者が増えてきた、と感じられるのである。
だが、よく考えれば、ここに不思議は何もない。現在20歳の若者は、2006年生まれであり、物心ついた頃にトランプ大統領誕生に遭遇しているような年代である。……要するに、若い世代は、アメリカを尊敬しようにも、尊敬すべきアメリカを産まれてこの方見たことがないのである。
白井聡氏、82頁
(算用数字に改変)
ぼく(79年生)は白井氏より少し下だが、この世代は「物心ついた頃」にむしろ冷戦の終焉があり、まずアメリカが “最強” という刷り込みがあった。その後にイラク戦争とかで、”いい国” とは限らないが、と留保がつく感じだ。

逆にいまの学生たちは、小学生の頃に “ヤバそう” なオッサンが初めて大統領になり、大学に入ってみたら彼が戦争に “負けて” たりするわけだ。そこから生まれる感覚は、戦後や平成の日本人とは、確かに違ってくるだろう。

とはいえ、サンクコストを支払っちゃった世代は、簡単にいなくならない。まさにいまネクラな「うおおおお!」で、高市政権支持から離れられない “現役世代” と、それはぴったり重なる。
この状態にいる人は、たとえば「石破よりマシ」なかぎり高市に、「中国よりマシ」ならアメリカに、延々と賭け金を張らざるを得ない。そのまま行ったら破産すると “わかってもやめられない” のが、依存症の特徴だからだ。
これは専門家への依存にも、そのまま当てはまる。コロナでもウクライナでも、彼らが言ってたのは「とにかく欧米に合わせろ」という超シンプルな話で、ところがそれをやってるうちに、西側世界の解体が始まった。

なので彼らにいくら賭けても、お金は自粛や・ワクチンや・ウクライナに “溶けていく” だけなのだが、「肺炎よりはマシ! プーチンよりはマシ!」で賭場から帰れない人は多い。もはやコロナとは別の病気である(苦笑)。
コロナで溶かした分はもう返ってこないので、最後の希望がウクライナだから、いまは「賭け続けたおかげで “勝った”」ことにするのに必死だ。が、その判定基準はこんな感じなので(涙笑)、真に受ければもっと損をする。
記者「当初、あなたは『無条件降伏だけを望んでいる』と話していましたが、(イランとの)覚書は無条件降伏には見えませんね」
トランプ大統領「実際には無条件降伏だろう。私はそう考えている」
TBS、2026.6.19
(初出は前日のAxios)
世代を問わず、そんな時代をどうすれば、健康に生きられるか?
秋に刊行する『なぜ「まちがえた」と言えないのか』は、コロナ禍以降をふり返る同時代史の本であると同時に、”推しの政治家への依存” が蔓延する世界を診断し、治療の道を示す実践の書にもなる。ぜひ、期待してほしい。
参考記事:

(ヘッダーは、今年3月の有名な場面。WHより)
編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年7月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください







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