現役世代はなぜ「高市依存症」なのか

高市早苗政権の “高すぎる” 支持率だが、イラン戦争の頃からようやく下がる兆しが見えてきた。「高市離れ」を先導しているのは若年層で、もともと高齢層には「高市嫌い」もわりと多いから、最近はこんな感じらしい。

高市内閣支持率、若年層が初の50%割れ 止まらぬ物価高が背景 | 毎日新聞
若年層の高市早苗内閣の支持率が下落している。高市内閣は若年層の支持率の高さが特徴的だったが、3月から下落傾向が続き、毎日新聞が5月23、24日に実施した全国世論調査では18~29歳の支持率が前月比6ポイント減の45%と初めて50%を下回った...

しかし、3月以降は状況が一変する。18~29歳の支持率は3月に前月比9ポイント減の61%、4月には51%まで落ち込んだ。
(中 略)
18~29歳と70歳以上の高齢層が比較的低く、30~60代が比較的高い構図だ。……若年層を含めた幅広い年代から受けていた支持は、現役世代中心の支持構造に変わりつつあるとみられる。

毎日新聞、2026.6.5
(強調を追加)

半年前も “半世紀前” も変わらないくらい、いまはみんな物忘れが激しいので、思い出そう。昨年の10月に政権が発足した時は、こんな空気だった。

高市政権を作ったのは保守ではなく "リベラル" である。|與那覇潤の論説Bistro
高市早苗内閣の発足が、好評だ。10/22の読売新聞によれば、歴代5位の支持率だという。 時代により調査方法が違ったりするので、厳密には単純に比較できないが、細川非自民連立や最初の安倍内閣と同じなら、かなりのブームだ。「初の女性首相」にしては...

高市内閣を「支持する」と回答した人の割合を年代別にみると、18~39歳が80%で前回9月調査〔石破政権時〕の15%から急増した。
(中 略)
若年層が支持を先導している。若年層の支持が多い傾向は、最近では第2次安倍内閣の支持動向に近い。

読売新聞、2025.10.23
(強調を変更)

トップをすげ替えるだけで「15%→ 80%」と支持率爆増なんだから、若者を釣るなんてチョロいもんだが、しかし彼らは冷めるのも早いのだ。なんつーか、”推し変” ってやつだよね(笑)。

そうなる理由はシンプルで、人生経験が短い方がサンクコストが少ないのである。俺の人生を「ここまで懸けてきた!」みたく過去に拘泥せず、イマイチなら次行こっかな、と割り切れるのは、いつの時代も若い人の特権だ。

言い方を変えると、「うおおおお!」にもネアカとネクラがあり、若いほど前者が多いのだ。むろん個人差が大きく一概には言えないが、逆に現役世代を中心に、支持をやめられない人の「うおおおお!」は闇が深いと思う。

若年層離れが顕著!高支持率維持の影で高市内閣支持層に起きている地殻変動とは?
5月27日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、最新の選挙ドットコムとJX通信社による電話調査とネット調査のハイブリッド意識調査結果から、高市内閣の支持構造分析を解説!発足から半年が経過したタイミングで起きている支持構 …

昨年11月には……支持理由の最多だった「政策に期待できるから」は4割から3割弱に減っています。この一方で増えたのが「他の人よりましだから」で、〔5月には〕昨年11月調査よりも倍増して約3割を占めています。

こうした結果から、米重〔克洋〕氏は「高市内閣の支持率は外形的にそんなに変わっていないように見えたとしても、中身は弱い支持に変わってきている」と指摘します。

選挙ドットコム、2026.6.2

発足時の空気が似ていた(2度目の)安倍政権もそうだったけど、途中からこの人ニセモノっぽい? と気づいても、「でも他にいないんだよ!」でのめり込まざるを得ない事情があるのだ。いやぁ、サンクコストはつらい。

ちょうどホストやホステスに入れあげちゃったような状態で、特定の政治家から離れられないのが、陰性のうおおおおだ。競馬やパチンコでハズレに注ぎ込みすぎて、「このままじゃ帰れない」ときの気持ちだとも言える。

…そろそろわかってきたでしょ? つまりそれは “依存症” の症状であって、どう緩和するかという「臨床」の知見なしには、高市さんを退陣まで導く道筋も見えないんですよ。安倍政権なんて、史上最長まで続いたんだから。

ホンモノの臨床人文主義 vs ニセモノの令和人文主義|與那覇潤の論説Bistro
ある人が「臨床人文主義」というジャンルを提唱するのを聞いて、なるほどなぁと思った。狭い意味の医学書ではなく、(主にメンタルの)ケアや治療から見える知見を鍵に、人間社会の本質を探究する著述を指すものだ。 そんな提案が出るのも、自然科学が暴走し...

上の記事でも言及した、『表現者クライテリオン』7月号の特集のひとつが「さらば、平成保守!」で、まさに世代論として興味深く読んだ。平成期に “保守派” になった5名の著者が、それぞれの実人生をふり返っている。

生まれた年は上から順に、1980年・81年・84年・85年・2002年。最年長は平成が始まるとき小学校の半ばで、いちばん若い寄稿者はその終わりに高校生という感じだ。他では見ない組みあわせの、よい企画だと思う。

もうひとつの特集は「アメリカが世界を破壊する」だが、対米自立論の白井聡さん(1977年生)の次の一節には「ほほぅ」と思った。いわく――

表現者クライテリオン2026年7月号 | 表現者クライテリオン

筆者が希望を確信できることがひとつだけある。それは日本の若い世代の動向だ。大学で教鞭を取るなかで近年感じる学生の変化は、アメリカを尊敬しなくなってきた、という傾向である。アメリカを偉大な国だとは見ない若者が増えてきた、と感じられるのである。

だが、よく考えれば、ここに不思議は何もない。現在20歳の若者は、2006年生まれであり、物心ついた頃にトランプ大統領誕生に遭遇しているような年代である。……要するに、若い世代は、アメリカを尊敬しようにも、尊敬すべきアメリカを産まれてこの方見たことがないのである。

白井聡氏、82頁
(算用数字に改変)

ぼく(79年生)は白井氏より少し下だが、この世代は「物心ついた頃」にむしろ冷戦の終焉があり、まずアメリカが “最強” という刷り込みがあった。その後にイラク戦争とかで、”いい国” とは限らないが、と留保がつく感じだ。

アメリカはなぜ、世界の警察官から「ならず者」に転職したのか|與那覇潤の論説Bistro
冷戦を知る世代にとって、ボブ・ウッドワードは「ジャーナリスト」の代名詞である。ウォーターゲート事件の真相をスクープし、ニクソン大統領を辞任に追い込む顛末は映画になり、昨年亡くなったロバート・レッドフォードが演じた。 本人は今も現役で、一昨年...

逆にいまの学生たちは、小学生の頃に “ヤバそう” なオッサンが初めて大統領になり、大学に入ってみたら彼が戦争に “負けて” たりするわけだ。そこから生まれる感覚は、戦後や平成の日本人とは、確かに違ってくるだろう。

イランにアメリカが敗れるとき、第二次世界大戦の「長い戦後」が終わる。|與那覇潤の論説Bistro
イラン戦争の帰趨はまだ不透明だが、それがアメリカの凋落を世界に晒したことはまちがいない。みんなすぐ忘れるから思い出しておくと、3月6日の時点では、トランプはお得意の「無条件降伏」をSNSで要求していた。 トランプ氏、イランに「無条件降伏」要...

とはいえ、サンクコストを支払っちゃった世代は、簡単にいなくならない。まさにいまネクラな「うおおおお!」で、高市政権支持から離れられない “現役世代” と、それはぴったり重なる。

この状態にいる人は、たとえば「石破よりマシ」なかぎり高市に、「中国よりマシ」ならアメリカに、延々と賭け金を張らざるを得ない。そのまま行ったら破産すると “わかってもやめられない” のが、依存症の特徴だからだ。

これは専門家への依存にも、そのまま当てはまる。コロナでもウクライナでも、彼らが言ってたのは「とにかく欧米に合わせろ」という超シンプルな話で、ところがそれをやってるうちに、西側世界の解体が始まった。

欧米という概念の終わり(BSフジ出演しました)|與那覇潤の論説Bistro
大学院生のとき、フランス出身の留学生へのメールで「欧米」の語を使ったら、”EuropeとAmericaは別だから、自分は欧米もOccident(西洋)も概念として使わない” と返されたことがある。イラク戦争の時代で、欧と米(とくに仏と米)の...

なので彼らにいくら賭けても、お金は自粛や・ワクチンや・ウクライナに “溶けていく” だけなのだが、「肺炎よりはマシ! プーチンよりはマシ!」で賭場から帰れない人は多い。もはやコロナとは別の病気である(苦笑)。

コロナで溶かした分はもう返ってこないので、最後の希望がウクライナだから、いまは「賭け続けたおかげで “勝った”」ことにするのに必死だ。が、その判定基準はこんな感じなので(涙笑)、真に受ければもっと損をする。

「実際には無条件降伏だ」トランプ大統領 イランとの戦闘終結に向けた覚書について譲歩が際立つとの指摘 米メディアインタビュー | TBS NEWS DIG (1ページ)
アメリカのトランプ大統領はイランとの間で署名した戦闘終結に向けた覚書について、「実際には無条件降伏だ」と主張しました。記者「当初、あなたは『無条件降伏だけを望んでいる』と話していましたが、(イランと… (1ページ)

記者「当初、あなたは『無条件降伏だけを望んでいる』と話していましたが、(イランとの)覚書は無条件降伏には見えませんね」

トランプ大統領「実際には無条件降伏だろう。私はそう考えている

TBS、2026.6.19
(初出は前日のAxios)

世代を問わず、そんな時代をどうすれば、健康に生きられるか?

秋に刊行する『なぜ「まちがえた」と言えないのか』は、コロナ禍以降をふり返る同時代史の本であると同時に、”推しの政治家への依存” が蔓延する世界を診断し、治療の道を示す実践の書にもなる。ぜひ、期待してほしい。

参考記事:

資料室:「ウクライナ応援団」はいかにして崩壊したのか|與那覇潤の論説Bistro
秋に出す新刊『なぜ「まちがえた」と言えないのか』を今月入稿する予定で作業していたら、いまになって編集者から「この記事は必ずチェックしてください!」の通知が来てしまった。勘弁してくれとはこのことである。 そうなるのも、同書の副題が「専門家依存...
いったい誰がなぜ、SNSで学問を「ポピュリズム化」したのか|與那覇潤の論説Bistro
3/5の文藝春秋の配信でも述べたが、トランプのイラン攻撃はいよいよ『西洋の敗北』を決定づけたようだ。西側の最大の売りだった「ルールに基づく国際秩序」を自ら放り出したのだからあたり前だが、実態はよりひどかった。 米国での報道によると、プーチン...

(ヘッダーは、今年3月の有名な場面。WHより)


編集部より:この記事は與那覇潤氏のnote 2026年7月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は與那覇潤氏のnoteをご覧ください

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