7月13日の東京株式市場で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の時価総額が一時42兆円を超え、トヨタ自動車を抜いて日本企業の首位に立った。
最近の時価総額ランキングでは、ソフトバンクグループやキオクシアホールディングスなどAI関連銘柄が上位を争っていた。そこへ巨大銀行が割って入ったのである。これは単なる株価の一時的な逆転ではなく、日本経済がデフレからインフレへ移行したことを象徴する出来事だ。

「金利のない世界」で銀行は苦しんだ
銀行の基本的なビジネスは、預金などで集めた資金を企業や個人に貸し出し、その金利差で利益を得ることだが、日本では長期にわたるゼロ金利とマイナス金利政策で、貸出金利が極端に低下した。巨大な預金を抱えることが強みではなく、むしろ運用先のない預金を抱え込む負担になっていた。
この環境が大きく変わった。日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も金融政策の正常化を進めている。貸出金利や運用利回りが上昇する一方、預金金利の上昇はゆるやかなので、利ざやが改善する期待が強まった。デフレ時代には評価されなかった巨額の預金が、インフレ時代には強力な収益源へと変わったのだ。
純利益は過去最高の2.4兆円
期待だけで株価が上昇したわけではない。MUFGの2026年3月期の株主純利益は、前年度比31.8%増の2兆4272億円となり、過去最高を更新した。ROEも11.3%まで上昇している。
連結業務粗利益は5兆9444億円、業務純益は2兆3772億円に拡大した。円金利の上昇と利ざや改善、国内外の手数料収入増加、海外での買収効果が収益を押し上げた。
さらに持分法適用会社であるモルガン・スタンレーの好業績で、持分法投資損益は8455億円に達した。MUFGの利益構成は国内44%、米国35%、アジア16%と分散している。国内金利の上昇だけに依存しない点も、投資家から評価されている。(MUFG)
株主還元も「銀行らしくない」水準へ
かつての銀行株は、利益を上げても資本を内部にため込み、株主への還元が少ないと批判されてきた。しかしMUFGは、配当性向を40%程度とし、利益成長に応じて1株当たり配当を増やす方針を明確にしている。
1株配当は2021年度の28円から2025年度には86円へ増加し、2026年度は96円を予想している。自社株買いも継続しており、2026年度上期には上限1000億円の取得を決めた。利益成長と株数の減少が同時に進めば、1株当たり利益も上がりやすい。
投資家が評価しているのは、単に銀行の利益が増えたことではない。増えた利益が株主に還元される経営へ転換したことだ。銀行もゼロ金利時代の国債などの運用から積極的なリスクテイクになり、日本経済を活性化させている。
中東情勢の緊迫化とインフレ圧力による波及
銀行株への資金集中を加速させたのが外部環境のショックである。特にイスラエルとイラン間の対立激化をはじめとする中東情勢の緊迫化は、ホルムズ海峡封鎖リスクとして世界のエネルギー市場に深刻な影を落としている。
この地政学的緊張は原油供給の寸断懸念を生み、グローバルなインフレ圧力を増幅させている。日本国内への輸入インフレの波及は、結果として日銀に対する追加利上げの正当性と期待を強固なものにした。
三菱UFJによる40年ぶりの時価総額トップ奪還は、単なる個別企業の好業績にとどまる話ではない。それは、中東の地政学リスクを震源地とするインフレ圧力、政府・日銀の金融政策の転換、そして資本市場の資金が「モノづくり」から「金利・金融」へと急速に循環する日本経済の構造的なパラダイムシフトを鮮明に映し出している。






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