各社の世論調査で内閣支持率が急落:「賞味期限」が切れた高市政権

高市内閣の支持率に、ようやく重力が働き始めた。各社の世論調査では調査方法によって数字にかなりの差があるものの、支持率が前月から下落しているという傾向は共通している。これまで高市政権は高い支持率を誇り、「国民の信任を得ている」と胸を張ってきた。

しかし、支持率とは選挙で与えられた議席ではない。ましてや、何をやっても許される免許証でもない。政権側はどうやら、高支持率を国民からの白紙委任状と読み違えていたようだ。その採点結果が、今回の支持率下落なのだろう。

期待を実績と勘違いした政権

政権発足直後の高支持率は、高市内閣が何かを成し遂げた結果ではない。「前の政権よりはましだろう」「何かやってくれそうだ」という期待値にすぎなかった。株式市場でいえば、将来の成長を織り込んだ高い株価である。

ところが政権は、この期待値を早々に実力値と勘違いした。高い支持率を背景に、国会運営では合意形成よりもスピードを優先し、政策について十分に説明するよりも、「決断する政治」を演出することに熱心だった。

期待で買われた政権が、実績を出さないまま強気の経営を続ければ、いずれ株価は下がる。政治も同じである。

バラマキ財政がインフレ・円安を加速する

支持率低下の最大の原因は、やはり物価高だろう。国民はスーパーのレジで毎日のように値上げを実感している。コメ、野菜、加工食品、電気代、ガソリン代。政府が「賃金と物価の好循環」を唱えている間にも、家計では物価だけが元気よく先行している。

これに対して政府が掲げるのは、2027年4月からの食料品の消費税減税である。インフレの最中に物価を上げる減税を掲げ、骨太の方針では370兆円の産業政策などの大風呂敷を広げて、インフレを悪化させた。

おまけに「バラマキ財政のために日銀は利上げを自粛しろ」とも受け取れる文言が問題になり、1ドル162円台まで円安になり、長期金利は3%に近づいた。

「中傷動画」で国会から逃げ続けた首相

高市首相は発信力のある政治家とされてきたが、発信力と説明責任は同じではない。自分の言いたいことを大きな声で話す能力と、疑問や批判に答える能力は別物である。

いわゆる「中傷動画」をめぐる問題でも、国民の多くが説明に納得していないという調査結果が出ている。問題の内容以上に深刻なのは、「都合の悪い話には正面から答えない」という印象を与えたことである。

支持率が高い間は、こうした態度も「毅然としている」と評価される。しかし支持率が下がり始めると、同じ態度が「独善的」「説明不足」と呼ばれる。政治家の長所と短所は、支持率という照明の当て方で簡単に入れ替わるのである。

皇室典範が支持率急落のきっかけ

国会運営にも問題がある。議員定数削減や副首都構想、皇室典範改正など、国民生活や国の制度に関わる重要なテーマについて、政権は審議を急いできた。皇室典範では、会期末にわずか2日で戦後初めての大改正を強行した。

皇室典範そのものはほとんどの人が中身を知らない法律だが、すべての新聞(産経を除く)が反対の社説を掲げる中で、野党の求める付帯決議も拒否して可決した。その直後に支持率急落したのは、偶然ではない。

明治時代の男尊女卑の法律を現代に合わせて改正するのではなく、女系天皇の余地をなくすために皇室典範の禁じている養子を入れるという常識はずれの法律を通してしまった。マスコミだけでなく、圧倒的多数が反対だったのに、高市政権(麻生副総裁)は数の力で押し切った。

政治的資源を右派的な政策で使い果たした

高市政権は「決断できる政治」を売りにしてきたが、決断できる政治と、勝手に決める政治は紙一重である。丁寧な説明や合意形成を省き、反対意見を「抵抗勢力」として処理すれば、短期的には政治が前に進んでいるように見える。しかし、国民の理解が追いつかなければ、その政策は長続きしない。

高い内閣支持率は高市政権のポリティカル・キャピタル(政治的資源)だったが、それを生活改善ではなく、皇室典範や国旗損壊罪など右派を喜ばせる法案に使い、連立パートナーである維新の顔を立てる副首都や定数削減に資源を使い果たした。

今回の下落はまだ政権崩壊を意味する数字ではないが、高市内閣にとって最初の警告灯が点灯したことは確かだ。「強い経済」とか「成長投資」などの掛け声だけで、中身は何もないのだから、今の支持率でも高すぎる。「何かやってくれそうだ」という期待が失望に変わると、支持率が転がり落ちるのは早い。

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コメント

  1. 早川蒼真 より:

    記事の指摘は鋭い

    皇室典範改正に関する記述には、事実と照らして看過できない誤りが複数含まれています。事実関係を正確に扱うべきです。

    第一に、「マスコミだけでなく、圧倒的多数が反対だった」という断定です。これは直近の世論調査と正反対です。7月18~19日に実施されたANN世論調査では、旧宮家の男系男子を皇族の養子とすることに賛成47%・反対34%、養子となった男性のもとに生まれた男子へ皇位継承資格を認める規定についても賛成48%・反対34%でした。賛成が反対を13~14ポイント上回っており、「圧倒的多数が反対」という記述は数字と真っ向から矛盾します。新聞社説の論調を国民全体の意思にすり替え、都合のよい前提だけを「民意」と称するのは、フェアな論評とは言えません。

    第二に、「野党の求める付帯決議も拒否して可決した」という記述も不正確です。実際には参議院特別委員会で、見直し時の環境変化を考慮するよう求める付帯決議が採択されています。しかも法案は与党単独ではなく、参議院本会議で賛成184・反対57、国民民主党や公明党なども賛成に回って成立しました。立憲民主党でさえ、原案には反対しつつ正副議長による取りまとめへの敬意から付帯決議案には賛成したと説明しています。これを一括して「数の力で押し切った」と要約するのは、賛否の分布を正確に伝えていません。賛成多数による可決をすべて「押し切り」と呼ぶなら、議会制民主主義の採決そのものが成り立たなくなります。

    第三に、養子案を高市政権が突然持ち出した「右派的政策」であるかのように描く点です。これは経緯を大きく欠いています。旧皇族・その男系男子子孫を皇族とする方策は、2005年の小泉政権下「皇室典範に関する有識者会議」の報告書にすでに記載されていました(同会議は当時これを採用困難と評価しましたが、議論の俎上には20年以上前から載っていたのです)。その後、2012年には質問主意書で、2020年には衆議院内閣委員会でも取り上げられ、2021年12月の菅政権下の有識者会議報告書で、女性皇族の婚姻後の身分保持案と並ぶ正式な方策として提示されました。以降も衆参正副議長の下で各党・各会派への意見聴取や全体会議が積み重ねられています。したがって正確には「20年間ずっと同じ法案を審議してきた」のではなく、「20年以上前から断続的に検討され、2021年以降に現在の制度案が具体化した」と言うべきです。これを「常識はずれの法律」「思いつきの拙速な政策」と一蹴するのは、積み重ねられてきた検討の経緯を無視した評価です。

    まとめ
    世論調査の数字を反対向きに引用し、可決の実態を歪めて伝えるのでは、批判の土台そのものが崩れてしまいます。政権を採点する前に、まず事実を正確に採点すべきではないでしょうか。健全な批判は、正確な事実認識の上にこそ成り立つものだと考えます。