骨太方針を巡り経済学者「達成できない」が70%。私の言ってることと同じでした

高市政権が7月21日に閣議決定した「骨太の方針2026」については、当ブログでも「PB黒字化の事実上の放棄」「成長率頼みの財政運営の危うさ」を繰り返し指摘してきました。

高市政権の2026骨太の計画は、骨太どころか前提条件が甘すぎて旧日本軍の「このままでは全滅だから万歳突撃で玉砕しよう」と同じ
6月30日の経済財政諮問会議に、骨太の方針2026の原案が出ました。370兆円の官民投資、2040年度にGDP1,100兆円、毎年実質10兆円の追加支出。威勢のいい数字が並んでいます。私はこの文書の数字を一つずつ検算しました。結論から言うと…

特に

・設定のあり得ない甘さ
・妄想としか言えない内容
・計算式でさえ目標に届かない

という、新入社員でさえ書かないようなトンデモの内容で、高市氏はこれを深夜まで精査して眠れないというのも笑ってしまう。どのAIに精査させても内容の杜撰さを指摘する。基本的な経済の知識があれば誰が見てもおかしいことが分かる。7月上旬に長期金利が急騰したいわゆる「骨太ショック」も記憶に新しい。

で、7月23日に日本経済新聞社と日本経済研究センターが経済学者50人に聞いた「エコノミクスパネル」第14回調査の結果が公表されまして、これがですね、わたしがずっと書いてきたこととほぼ同じ結論だったわけです。今日はこの調査結果を整理しつつ、なぜ学界がここまで一方的な評価になったのかを見ていきます。

わたしが高市批判をすると必ず「反日」「親中」のようなバカげたリプが来るのだが、彼女の経済政策についての批判についてまともな反論を一回も受けたことがない。

経済学者の70%が「債務残高GDP比は安定的に下げられない」

政府は今回の骨太方針で、財政運営の中核目標を「債務残高GDP比の安定的な低下」に置いた。官民の投資拡大→経済成長→分母のGDPが増えて比率が下がる、というシナリオだ。これを経済学者50人(調査期間7月15〜21日)に「できると思うか」と聞いた結果がこちら。

出所:日本経済研究センター・日本経済新聞社「エコノミクスパネル」第14回調査より作成

「そう思わない」50%+「全くそう思わない」20%で、否定派が計70%。肯定派はわずか6%。世論調査でここまで偏った分布はなかなかお目にかかれません。学界のコンセンサスと言っていいレベルです。高市氏の周辺にはリフレ派といわれる人たちしかいないのだが、経済学ではいかに異端なのかがよくわかる。こんな異端な普通の常識では考えられない人たちが日本の将来を決めているのである。これはアベノミクスの時から延々と続いている。

用語メモ:債務残高GDP比とは
国と地方の借金残高をGDP(国内総生産)で割った比率。日本は250%超で先進国最悪水準。「分子(借金)を減らす」か「分母(GDP)を増やす」かで下がるが、政府のシナリオは後者一本足のみ。ちなみに従来の目標だったPB(プライマリーバランス=借金に頼らず政策経費を賄えているかを見る単年度の収支)は、今回の骨太で「単年度の黒字化時期を機械的に追わない」と明確に退きました。つまり「インフレにするか」「めちゃくちゃ経済が伸びるか」でないと達成しない超ハイリスクな政策である。
経済学者は何を問題にしているのか

個別のコメントを読むと、批判は大きく3つの論点に整理できる。そしてこの3つ、当ブログの読者にはどれも見覚えがあるはずだ。

① 成長率は政府が「選べる」変数ではない

一橋大の陣内了教授(マクロ経済学)は、成長が債務比率の低下に効くこと自体は事実としつつも、成長率は政府が自由に決められる変数ではないのに、将来の高成長による税収増をアテにして現在の歳出を膨らませる発想を厳しく批判し、財政運営はPBのような政府が直接コントロールできる指標を基礎にすべきだと指摘。内閣府の試算でも、債務比率が下がるのは官民投資の効果がフルに出る「高成長シナリオ」の場合だけで、効果が中程度以下なら2030年度頃から比率は再上昇する想定なのだ。つまり一番楽観的なシナリオが当たった場合のみ達成できる目標を「中核」に据えたわけで、ギャンブルに当たったら借金を返済できるとしているのに等しい。

② 市場が財政規律の弛緩を疑えば、金利上昇で自壊する

中央大の塩路悦朗教授は、市場が財政規律の緩みを察知して国債金利が上昇すれば、利払い費の増加で財政運営そのものが一段と苦しくなるリスクを指摘。トロント大の伊神満准教授に至っては、高成長の前提を非現実的と断じた上で、実効性の怪しい総花的な投資枠を口実に歳出規律を緩めることは財政悪化を意図的に加速させる行為だ、という趣旨の相当に辛辣な評価をしています。

これ、わたしがトラス・ショックの英国を引きながら書いてきた話とまったく同じ構図です。そして重要なのは、これが仮定の話ではないこと。6月30日の骨太原案公表直後に長期国債金利は暴落して一時3%ギリギリまで急騰し、日経自身が「骨太ショック」と名付けて「財源なき政策は結局、市場から修正を迫られる」と総括しています。債券市場は経済学者より一足先に答案を提出していたわけです。

③ 370兆円の官民投資、「呼び水」になるかも怪しい

成長シナリオの土台である「2040年度までに370兆円の官民投資」(AI・半導体など戦略17分野)についても、同じ調査で「民間投資を十分に促進できない」が44%。政府が投資分野を選ぶ目利き能力への疑問に加え、長江商学院の森田穂高教授は、370兆円のうち「政府支援がなくてもどのみち行われた投資」と「支援で追加的に生まれる投資」が区別されていないと計画の実効性を疑問視。ブリティッシュコロンビア大の笠原博幸教授は、政府支出の規模すら示されていない点を挙げ、市場の信認低下による金利上昇が投資コストを押し上げて呼び水効果を殺す可能性、つまり官が民を押しのけるクラウディングアウトの懸念を指摘している。

用語メモ:クラウディングアウトとは
政府が国債を大量に発行して支出を増やすと金利が上がり、民間企業の資金調達コストが上昇して民間投資が「押し出されて」しまう現象。「官民投資で成長」のつもりが「官の投資が民の投資を食う」結果になりかねない、という教科書レベルの警告です。
日経の社説も同じ結論

ちなみに日経は社説でも、骨太方針について持続可能な財政運営への道筋が見えず信頼性を欠く、と明確に書いています。経済学者の7割、日経の論説委員、そして債券市場。三者が同じ方向を向いて「この目標は達成できない」と言っている状況です。

まとめ:わたしの見立ては「異端」ではなく「多数派」だった

当ブログでは骨太2026について「PB放棄と成長頼みは危険」「市場の信認を失えば金利上昇で自壊する」と書き続けてきました。SNSでは「財政破綻論者」「緊縮脳」などと言われがちなポジションですが、今回の調査で明らかになったのは、この見方こそが経済学者の圧倒的多数派であるという事実です。肯定派6%。むしろ「成長すれば借金比率は勝手に下がるから大丈夫」派のほうが、学界では6%の少数派なんですね。

債務残高GDP比は、金利・成長率・インフレ率という政府が直接いじれない変数に翻弄される指標です。r(金利)がg(成長率)を上回る局面に入れば、高成長シナリオは音を立てて崩れます。そして市場はすでに7月、その予行演習を一度やってみせました。次に市場が採点するのは、年末の予算編成でしょう。

参考資料
財政目標「達成できない」70% 骨太巡り経済学者、高成長頼みに警鐘(日本経済新聞)
370兆円投資、民間促進「できない」44%(日本経済新聞)
エコノミクスパネル第14回調査(日本経済研究センター)
経済学者50人の回答一覧(日経ビジュアルデータ)

わたしは前々から言っているように、高市早苗という人は悪意があってこんな馬鹿げた政策をしようとしているんじゃないと思うんです。彼女のモリモリの嘘で固めた経歴を見てもけして頭がいいとは思えない。高橋洋一を頭から信じ込んで丸投げしているわけです。右曲がりの爺さんたちをヨイショしてのし上がってきたせいぜい保険のおばちゃん程度の知識しかないこの人をリーダーにしてしまった日本国民のせいだと思うんですよ。


高市早苗という病 (ベスト新書)


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年7月24の記事より転載させていただきました。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント