最高裁に負けても日本に12.5%の追加関税を課すトランプ政権の執念

「相互関税」が別の名前で復活

トランプ米政権は7月24日、日本や中国、欧州連合(EU)など60か国・地域からの輸入品に対し、10%または12.5%の新たな関税を発動した。対象となる国・地域は、米国の輸入額の99.4%を占める。日本については、既存の関税率が12.5%未満の品目は、新たな関税を加えた税率が原則12.5%になる。既存税率が12.5%以上の品目は、その税率が維持される。

これは突然始まった新政策というより、最高裁に無効とされた「相互関税」を、別の法律と別の名目で復活させたものだ。

トランプ政権は2025年、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に各国へ10~50%の相互関税を課した。しかし米連邦最高裁は2026年2月、IEEPAは大統領に関税を課す権限を与えていないと判断した。政権は直後、通商法122条に基づく一律10%の「代替関税」を導入したが、同条による措置は最長150日という制限があり、7月24日に失効した。

そこで今度は、通商法301条が持ち出されたのである。

トランプ大統領 ホワイトハウスHPより

「強制労働」は人権問題か、関税の口実か

米通商代表部(USTR)は、日本を含む60か国・地域が、強制労働によって生産された商品の輸入を十分に禁止していないと認定した。禁止措置を導入、または導入を約束した国には10%、十分な措置を取っていない国には12.5%を課すという。

もちろん、強制労働の排除は重要な課題だ。しかし、特定の商品や企業ではなく、対象国からの輸入品全体に一律関税をかけるとなれば、人権対策というより関税政策の口実とみられても仕方がない。

日本政府も、強制労働製品の輸入禁止制度がないことを理由に関税を課す今回の措置は「遺憾だ」と米側に申し入れた。ブラジルやオーストラリアなども、根拠が不十分で恣意的な措置だと反発している。

日本への打撃は「2.5%」だけではない

もっとも、今回の12.5%が、すべての日本製品に新たに丸ごと上乗せされるわけではない。直前まで10%の代替関税が課されていたため、対象品目の多くでは実質的な引き上げ幅は2.5ポイントとなる。

また、自動車、鉄鋼、アルミニウム、銅など、すでに通商拡大法232条に基づく別の関税が課されている品目は今回の措置から除外された。石油・天然ガス、肥料、一部食品、航空機や重要鉱物などにも例外が設けられている。

したがって、12.5%という数字だけを見て、日本の対米輸出全体が直ちに12.5%不利になると考えるのは正確ではない。

それでも問題は小さくない。関税を支払うのは米国の輸入企業であり、その負担は販売価格への転嫁、あるいは日本企業への値下げ要求という形で表れる。日本企業は、米国での値上げ、利益率の低下、米国内への生産移転という三つの選択を迫られることになる。

ルールではなく大統領の裁量で動く通商政策

さらにUSTRは、日本や中国、EUなど16か国・地域を対象に、過剰生産能力を理由とする別の301条調査も進めている。今回の12.5%が最終地点とは限らない。

最高裁が相互関税を無効にしても、通商法122条を使う。それが失効すれば、今度は301条を使う。トランプ政権の関税政策は、法律によって制約されるのではなく、使える法律を次々と探して実行される政策になっている。

日本政府は「日米合意を守らせた」と説明するだろう。確かに、昨年の合意による税率の上限は形式上維持された。しかし、昨日まで合法だった制度が今日は失効し、明日には別の理由で新関税が登場する状況では、企業は安心して投資計画を立てられない。

最大のリスクは12.5%という税率そのものではない。米国の通商政策が、安定したルールではなく、トランプ大統領の政治的都合によって書き換えられ続けていることである。

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