
熱気渦巻くベルーナドームにて
昨日、2026年7月26日。私は夏のうだるような暑さを抜け、埼玉県所沢市にあるベルーナドームへと足を運んだ。
目当ては、前半戦の総決算となる西武ライオンズ対福岡ソフトバンクホークスの一戦。半野外とも言えるドーム特有の熱気と、両チームのファンの歓声が交差する中、ホークスの先発マウンドに上がったのは我らが若き希望、前田悠伍。
そして立ちはだかる相手は、西武のエースにして今季のホークスにとって“完全なる天敵”、高橋光成だった。
立ちはだかる「天敵」と、20歳の強心臓
試合前までの今シーズン、ソフトバンク打線は高橋光成を大の苦手としており、なんと4戦4敗と手も足も出ない状態が続いていた。そんな分が悪いデータを背負ってマウンドに託されたのが、まだ高卒3年目、来週には21歳の誕生日を控える20歳の若き左腕・前田悠伍である。
普通ならプレッシャーに押しつぶされてもおかしくないマウンドだ。初回こそ三者凡退に抑えたものの、その後は毎回のように走者を背負う苦しい展開が続いた。しかし、この若きサウスポーの表情には焦りの色は一切ない。顔色一つ変えずに淡々とアウトを積み重ね、スコアボードに「0」を刻んでいく。
その粘りに打線が応えたのは5回表。ホークスはついに天敵・高橋光成を捉え、集中打と周東佑京のタイムリー三塁打などで一挙3点を先制した。前田はこのリードを落ち着いて守り抜き、終わってみれば6回無失点の堂々たるピッチング。見事に「天敵」に投げ勝ち、チームに前半戦ラストの白星をもたらした。
59年ぶりの偉業達成。なぜ彼は「負けない」のか?
この日の勝利により、前田悠伍は今シーズン無傷の開幕8連勝を飾った。高卒3年目以内の投手による開幕8連勝は、なんとあの堀内恒夫氏以来、実に59年ぶりとなる歴史的快挙だ。
では、なぜ前田悠伍はここまで「負けない」のだろうか。ベルーナドームのスタンドから彼のピッチングを食い入るように見つめながら、私は2つの理由に行き着いた。
・「楽しもう」と言ってのける圧倒的なメンタル
試合後、前田は西武のエース格との投げ合いについて「楽しもうと臨んだ」と語ったという。大阪桐蔭高校時代、甲子園という大舞台で数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験が、彼の精神を鋼のように鍛え上げているのだろう。ピンチになればなるほどギアが上がり、相手の呼吸を読んで打ち取っていく姿は、もはやベテランの風格すら漂わせていた。
・「点をやらなければいい」というマウンドでの割り切り
彼は単純に球が速いだけの投手ではない。ストライクゾーンを広く深く使い、打者のタイミングを外す「ピッチングアート」を持っている。毎回走者を出しながらも、要所を締めてホームは絶対に踏ませない。このマウンド上でのクレバーな割り切りこそが、彼に白星をもたらし続けている最大の要因だ。
伝説はまだ始まったばかり
試合終了のサイレンが鳴り響き、スコアボードに輝く「3-0」の文字を見上げながら、私は確信した。前田悠伍が負けない理由は、単なる運や味方の援護だけではない。彼自身が持つ「ゲームを支配する力」そのものなのだ、と。小久保監督も「今日もゲームを支配していた」と絶賛のコメントを残している。
いよいよ勝負の後半戦。この20歳の左腕がどこまで連勝記録を伸ばすのか。私たち野球ファンは、新たな伝説の目撃者になる準備をしておいたほうがよさそうだ。







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