「自分は賃貸なので金利上昇と関係ない」は間違い

黒坂岳央です。

金利が上昇しても自分は賃貸だから関係ない、そう考えている人は多いのではないだろうか。実際、SNSでもそうした投稿がよく目立つ。「自分は賃貸で住宅ローンを組んでいないのだから金利上昇は他人事」という理屈である。

だが、これは間違いである。賃貸に住んでいる人も、金利上昇の影響を受けるのでまったく他人事ではない。主に理由は3つある。

理由1:大家全体の採算ラインが切り上がる

ポイントは、金利上昇の打撃は特定の大家一人だけでなく、市場に参加するローンを組む大家全員が同時に食らうという点にある。

金利が上がると、大家は利益が削られるので賃貸経営という選択肢の相対的な魅力が下がる。資金を賃貸に固定しておくより、預金や国債に置くほうが得になる局面が増える。すると「この家賃でなければ貸したくない。家賃を上げたい」というベクトルへ圧力がかかる。

これは市場の供給曲線そのものが上にシフトするという話で、既存物件にも新築にも時間差なく効いてくる。

理由2:買えない世帯が賃貸に流れ込む

これに加えて、もっと即効性のある経路がある。それは住宅を買えない層が賃貸へ流れるのだ。金利が上がれば住宅ローンの借入可能額が下がり、家を買いたくても審査が通らない世帯、月々の返済額が跳ね上がって断念する世帯が増える。行き場を失った世帯は賃貸市場に流れ込むのだ。

実際、2026年に入ってからの首都圏の家賃動向調査では、全国主要都市の全面積帯で前年同月比が軒並みプラスとなり、統計開始以来初めての事態になっている。特にファミリー向きの上昇幅が大きいのは、分譲マンション価格の高騰で賃貸に滞留する世帯が増え、需給が逼迫しているためだ。

家を買えない人自身が、賃貸市場に押し寄せることで家賃が押し上げられる。

理由3:新規供給が細る

金利上昇で新築物件の採算ラインが上がると、新規着工が減る。数年後に供給そのものが細り、家賃上昇圧力になる。3つの理由の中では最も遅れて効いてくるが、無視できない経路だ。

なお、「東京は金利が上がっても物件価格が上がり続けていて、コスト転嫁されているからだ」という主張を見かけるが、これは因果を取り違えている。金利上昇は本来、将来キャッシュフローの現在価値を下げる方向に働くので、単独では資産価格を押し下げる要因になる。

それでも価格が上がっているのは、円安による海外マネー流入や人口の一極集中、インフレ期待といった他の要因が、金利の押し下げ圧力を上回っているからだ。金利さえ上がれば価格が上がる、という単純な図式ではない。価格上昇を理由の根拠にするのは避けたほうがいい。

賃貸のメリットは身軽さだとよく言われる。だが、金利上昇で賃料上昇となれば、その身軽さがコスト高になる。すべての人は生きていく上で家が必要となるが、金利が安い時期に固定金利でローンを組んだ人、それからキャッシュで買った人、さらにローンを完済済みの人を除けば、金利上昇はほぼ全員が打撃を受けるのだ。

 

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Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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