映画『ママがもうこの世界にいなくても』が炎上:タイアップした厚労省はポスター取り下げ

厚生労働省がタイアップした10月2日公開の映画『ママがもうこの世界にいなくても:私の命の日記』がネットで大炎上し、厚労省はポスターを取り下げました。

問題となったのは映画そのものというより、厚労省が思春期のがん患者への支援制度を周知するために病院に掲示したポスターです。そこには映画タイトルの「ママがもうこの世界にいなくても」という言葉が大きく掲げられていました。

これに対し、がん患者や家族から「治療している人の気持ちを考えてほしい」「病院で目にしたらつらい」といった批判が相次ぎ、厚労省は8月24日、病院などにポスターを取り下げるよう依頼しました。

21歳でステージ4の大腸がん

映画は、21歳でステージ4の大腸がんを宣告された遠藤和さんの実話をもとにしています。遠藤さんは抗がん剤治療を受けながら結婚し、治療を中断して娘を出産した後、2021年9月に24歳で亡くなりました。

亡くなる10日前まで書き続けた日記をもとにした手記が原作となっており、映画では川口春奈さんが遠藤さんを、高杉真宙さんが夫を演じています。問題は、その映画をがん診療連携拠点病院に掲示した厚労省のセンスです。

「ママがもうこの世界にいなくても」を病院に貼るのか

厚労省がこの映画とタイアップした目的は、AYA世代(15~39歳)のがん患者に、治療と仕事の両立支援や相談窓口などをまとめた「がんの治療と暮らしを支える制度ガイド」を知ってもらうことでした。

しかしそのポスターに「ママがもうこの世界にいなくても」というタイトルを大きく載せるとなれば話は別です。患者は「もうすぐ死ぬ」という前提で病院に通っているわけではありません。幼い子どもを持つ患者にとって「ママがもうこの世界にいなくても」という言葉は、自分の死や残される子どもの姿を想像させることにもなりかねません。

AYA世代のがん患者・がんサバイバーでもある国民民主党の佐々木真琴衆院議員も、作品や遠藤さんの生き方を否定するものではないとしたうえで、このタイトルを国が患者への支援情報の入口として使うことに「強い違和感」があると指摘しました。

厚労省「配慮が欠けていた」

批判を受けると、厚労省は「患者の方々やご家族の多様な受け止め方への配慮が不足していた」「検討は十分でなかった」と認めました。

すでにポスターは各地のがん診療連携拠点病院などへ配布されていましたが、厚労省は掲示しないよう連絡し、すでに掲示した施設にも取り下げを依頼しました。タイアップそのものを今後どうするかについては、省内で検討するとしています。

この騒動のわずか3日前には、法務省がNetflixの恋愛リアリティー番組『ラヴ上等 シーズン2』とのタイアップを中止したばかりです。法務省は更生保護の啓発を目的に同番組と組んだものの、出演者の過去の犯罪に関する発言などをめぐり「犯罪被害者への配慮がない」と批判され、8月21日にタイアップを取りやめました。

とりわけ厚労省は、病気や死、生殖、障害など、人の最もデリケートな部分を扱う役所です。その厚労省が「このポスターを、実際にがんと闘っている人が病院で見たらどう感じるか」という最も基本的な想像を欠いていたとすれば、問題はポスター1枚の失敗では済みません。

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