現役サラリーマンは「オルカン100%」のポートフォリオで問題ない

内藤 忍

日本経済新聞の匿名コラム「大機小機」において、全世界株式(通称オルカン)への集中投資に対する批判的な論調が掲載されていました。ちなみにオルカンの正式名称はeMAXIS Slim 全世界株式・オール・カントリーで、これ1つで世界中の株式に丸ごと投資できる人気の投資信託です。4月から6月までの四半期の資金流入額もトータルの残高も日本一のファンドです(図表も同紙から)。

コラムの主張はこの投資信託だけで資産運用すると資産が外貨に偏り過ぎてしまい、また債券が組み入れられていないので株式だけのポートフォリオになってしまうといった批判です。

リタイアしたシニアに対するアドバイスであればまだしも、仕事で収入を得ている現役サラリーマンの投資戦略という観点から見れば、この批判は的外れではないでしょうか?

確かにオルカンは外国株式の比率が9割を超えており、単体のファンドとして見れば外国株式資産に極端に偏ったポートフォリオです。

しかし、資産運用を考える際は金融資産だけではなく自分自身の「人的資本」も含めたポートフォリオで考える必要があります。

現役サラリーマンは毎月定期的な給与収入を日本円で受け取っています。

この毎月の円収入を生み出す人的資本は、実質的に日本円の社債を保有しているのと同じ価値を持ちます。

たとえば、年収1000万円で定年まであと30年あるサラリーマンなら今後得られる生涯賃金は「利回り10%で運用される額面1億円の30年物社債」と同じです。満期に償還される1000万円は退職金と考えればわかりやすいでしょう。

そう考えると金融資産がオルカン100%でほとんどが外国株式であったとしても、自身の人的資本(円建ての債券的資産)と合算すれば、円と外貨、債券と株式に分散されたバランスの良いポートフォリオであることがわかります。

したがって、安定した給与収入が得られる現役世代の間は、オルカンに集中投資しても問題ありません。

ただし、仕事を引退して人的資本という「円の債券」を失った後は、オルカン集中投資はやめ、配当や利息を生み出すインカム型資産などへ切り替え、リスクを抑えた運用へシフトしていくのが合理的な選択です。

上記の私の主張は話を単純化しているので「オルカン100%」は乱暴かもしれませんが、この考え方を基本にして金融資産以外の投資対象にも分散してポートフォリオを作っていくことには問題は無いと考えます。

という訳で経済新聞のコラムの論調に大きな違和感を感じてしまいましたが、果たしてコラムを書いている「中庸」というペンネームの方はどなたなのでしょうか。

b-bee/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント