クールジャパン予算の大半は人件費などで消えた? を精査してみた


先に結論
  • クールジャパン機構の累積赤字は540億円。政府が出した金は1,406億円で、民間は107億円しか出していない。「官民ファンド」の民は9割方お飾りである。
  • しかも累積赤字383億円(2025年3月末)のうち238億円は投資の失敗ですらなく、人件費と家賃と税金。人件費だけで101億円。投資でスッた分より、事務所を維持する経費のほうが大きいww
  • 「アニメが世界で売れたのはクールジャパンのおかげ」を裏づけるデータはひとつも見つからなかった。経産省自身の審議会資料が主因を「映像配信プラットフォームの普及」と書いている。ポケモンもセーラームーンも政策より前に売れている。
  • 韓国が勝ったのは金額ではなく金の出し方。政府はファンドに出資するだけで、投資判断は民間VCがやる。日本は役所系ファンドが自分で案件を選んだ。それだけの差。
  • そして骨太2026と知財計画2026は、反省ゼロで「2033年に20兆円」「50兆円」とまた数字だけ出している。原典を全部読んだが「反省」「失敗」「教訓」という語はひとつも出てこない。

クールジャパン機構が廃止されるらしい。累積赤字540億円。

まあニュースを見たあなたも「またか」くらいの感想だと思う。官民ファンドが溶かすのはいつものこと。でもね、中身を原典まで開いて調べたら、想像していたのと全然違う壊れ方をしていた。わたしはこれ、単なる投資の失敗の話じゃないと思う。

今回は法律の条文から国会の議事録、会計検査院の報告書、経産省が自分で作った資料、韓国側の統計まで全部あたりました。長いです。でも数字は全部出典つき。いきましょう。

まず「アニメが売れたのは誰のおかげか」から

クールジャパンを擁護する人が必ず言うのが「でも日本のアニメは世界で売れてるじゃないか」です。売れてます。めちゃくちゃ売れてる。

日本動画協会の集計だと、2024年のアニメ産業市場は3兆8,407億円で過去最高。うち海外市場が2兆1,702億円(前年比126.0%)。国内は1兆6,705億円で前年比102.8%。国内はほぼ横ばいで、海外だけが26%も伸びている。

じゃあこの伸びは政策のおかげなのか。時系列に並べてみました。

図1 アニメの海外市場は「機構ができた後」ではなく「配信が来た後」に伸びた

見ての通りです。2013年に機構ができてから2017年くらいまで、グラフは何も変わっていない。跳ね始めるのは2019年以降、つまりNetflixやCrunchyrollが世界中に行き渡ってから。

で、これはわたしの勝手な解釈じゃないんです。経産省自身の審議会資料にこう書いてある。

「映像配信プラットフォームの普及が、海外での日本アニメの人気拡大につながった」
──経済産業省「業界の現状及びアクションプラン(案)【アニメ】」コンテンツ政策小委員会 事務局資料(2025年1月)

クールジャパンの「く」の字も出てこない。自分たちの手柄だとは書いていないわけです。正直でよろしい。

ついでに言うと、みずほ銀行の産業調査によればアニメ制作会社の海外売上は2005年の約300億円から2012年には約144億円に減っていた。クール・ジャパン室ができたのが2010年、機構ができたのが2013年。政策を始めた時期は、むしろ海外が縮んでいた時期なんですよ。

さらに時系列で言えば、ポケモンが北米で放送開始したのが1998年、セーラームーンがイタリアで国鉄のキャンペーンキャラになったのが1995年。全部、政策より10年以上前。役所が旗を振る前に、現場が勝手に売っていた。

念のため「クールジャパン政策がアニメの海外普及に効果があった」ことを定量的に示した公的評価や学術研究を探しました。ひとつも見つかりませんでした。13年やって、効果を測った研究がないんです。これ、けっこうすごいことだと思いませんか。

赤字540億円。でも本当にヤバいのは中身のほう

2026年6月24日、機構が2025年度決算を発表しました。官報の決算公告にはこう出ています。

  • 当期純損失 156億9,652万円
  • 利益剰余金(=累積損益) ▲540億314万円

経産省は2022年11月に「修正後計画」というのを作っていて、2025年度の累積赤字は426億円に収める目標でした。実績540億円。114億円の未達。しかも直前の2024年度は単年度で+15億円の黒字を出して「改善しました」と言っていた矢先です。

図2 単年度黒字を出した翌年に、過去最大の穴が空いた

で、ここからが本題。この赤字、何で溶けたと思いますか。

経産省が2026年2月に作った資料に、ちゃんと書いてあるんです。2024年度時点の累積損益▲383億円の内訳。

図3 累積赤字383億円のうち238億円は、投資の失敗ですらない

はい。383億円のうち238億円、約6割が「ファンド運営の必要経費」。投資の失敗じゃない。人を雇って、家賃を払って、税金を納めて、調査研究をしただけで238億円。

人件費だけで101億円ですよ。

13年で投資決定した案件は78件(経産省資料ベース。報道ベースだと83件)。1件決めるのに人件費1.3億円かかっている計算になる。民間のVCでこの効率だったら3年で潰れます。

よく「官民ファンドは民間が取れないリスクを取るのが仕事だから、赤字=失敗ではない」という反論があります。それは正しい。正しいんだけど、この238億円はリスクテイクの結果じゃない。ただの固定費です。ここを混ぜて議論するのはズルい。

意外な事実。実は「全部ダメ」ではなかった

ここでちょっと、あなたの予想を裏切る数字を出します。

同じ経産省資料に、投資を決めた年度ごとの回収率が載っている。これがめちゃくちゃ面白い。

図4 「クールジャパンだから全部ダメ」ではない。壊れたのは特定の3年間

2016〜2018年に決めた案件は1.32倍。ちゃんと儲かっている。

壊滅しているのは2019〜2021年に決めた8件だけ。0.30倍。投じた金の7割が消えた。ここに報道ベースですが、Spiberへの追加出資110億円(2021年9月)が入ってきます。Spiberは2026年に私的整理となり、機構は保有株を創業者に譲渡して回収ほぼゼロで撤退した。累計140億円。

つまりこれ、「クールジャパンという思想がダメ」という話ではないんですよ。特定の3年間の投資判断が壊滅的だった、という話。ここを一緒くたにして「日本の産業政策はぜんぶダメ」と言うのは、雑すぎて逆に本質を隠します。

ちなみに分野別で見ると、メディア・コンテンツは16件506億円を投資してEXIT12件の平均回収率0.74倍。食0.87倍、ライフスタイル等1.10倍。いちばん下手なのがコンテンツ分野という結果でした。アニメで儲けようとして、アニメでいちばん損している。

そもそも、この予算は誰が決めているのか

ここが今回いちばん驚いたところ。

クールジャパンには「クールジャパン戦略担当大臣」という特命担当大臣がいます。司令塔として知的財産戦略本部とクールジャパン戦略会議がある。ちゃんとした体制に見える。

ところが内閣府の基礎資料を読むと、この司令塔に予算配分権はありません。役割は「関係府省の連携強化」。実態は各省が勝手に概算要求して財務省が査定するという、いつもの流れです。担当大臣がいるのに、何も配れない。

じゃあ全体でいくら使ったのか。内閣府が「クールジャパン関連予算」という集計を出しています。令和8年度当初で518.79億円。ただしこの資料、注意書きにこう書いてある。

「知財戦略関連予算として各府省庁等より登録のあった」もの/「予算額が抽出困難なものは各合計額に含まれない」
──内閣府「クールジャパン関連予算」

つまり各省の自己申告で、しかも「〇〇億円の内数」と書かれた事業は合計に入っていない。外務省のジャパン・ハウス(サンパウロ・ロンドン・ロサンゼルスの3拠点)に至っては、建設費と運営費の分離すらできない。全部「内数」なので。

クールジャパンに総額いくら使ったのか、政府自身が把握していないんです。そりゃ効果測定なんかできるわけがない。分母がないんだから。

補助金のほうも褒められたものじゃなくて、コロナ禍のJ-LOD live(コンテンツグローバル需要創出促進事業)については、会計検査院が令和4年度の決算検査報告で約23.7億円の開差を試算して指摘しています。中小・小規模事業者向けの特例が、想定していない事業者にも適用されていた、と。

※よくある誤解を1つ。「J-LOD liveは電通とパソナが中抜きした」という話をたまに見ますが、あれは持続化給付金の話で別事業です。J-LOD liveの事務局はVIPO(映像産業振興機構)。ここは混同しないほうがいい。

韓国との差は「金額」ではなく「配り方」だった

さて、みんな大好き日韓比較。

まず先に、よくある誤解をぶっ壊しておきます。

誤解1:韓国のコンテンツ輸出=K-POPとドラマ
違います。2024年の韓国コンテンツ輸出135.7億ドルのうち、ゲームが76.3億ドルで56.2%。放送(ドラマ等)は約23%。韓流の実体は半分以上がゲームです。誤解2:日本は韓国に負けている
金額では負けてません。日本のコンテンツ海外売上は2023年で約5.8兆円(経産省)。韓国の135.7億ドルは日本円で2兆円前後。額なら日本の勝ちです。負けているのは規模じゃなくて、税金の使い方の効率。

そのうえで、制度の差を並べます。ここが本質。

日本(クールジャパン機構) 韓国(母胎ファンド 文化計定)
金の出し方 機構が個別案件に直接出資 政府はファンドにLP出資するだけ
誰が投資を決めるか 機構の海外需要開拓委員会 民間VC(運用管理は韓国ベンチャー投資=KVIC)
損の見え方 機構1社の累積赤字としてドカンと出る 多数のVCファンドに分散して吸収される
何に金を出すか 案件(施設・現地法人・事業体) 人材育成、インフラ、金融、字幕・吹替の再制作費、見本市出展
出発点 2013年に箱(ファンド)を作った 1999年に規制を緩めた(文化産業振興基本法。関連規制の約7割を廃止・改善)

わかりますかね。韓国は「金は出すが口は出さない。やるのは民間」、日本は「金も出すが案件も役所が自分で選ぶ」。この一点です。

役所が案件を選ぶと何が起きるか。ハイリスクな案件を引き受けろと言われつつ、税金だから損はするなとも言われる。この矛盾を抱えたまま13年やった結果が540億円です。ちなみにこの矛盾、韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が2026年8月にわざわざレポートで分析している。研究対象にされてるんですよ、日本はww

予算規模も見ておきましょう。韓国の文化体育観光部の2026年度予算は7兆7,962億ウォン(前年比+10.3%)で、うちコンテンツ部門が1兆6,103億ウォン(+26.5%)。K-コンテンツファンドへの出資は2,950億→4,650億ウォンに増額。桁違いに多いわけじゃないんです、実は。配り方が違うだけ。

で、公平を期すために言っておくと韓国も別に理想郷ではない

  • 朴槿恵政権の文化界ブラックリスト事件。政権に批判的な芸術家を支援から排除していた件で、2022年8月にソウル中央地裁が国の責任を認定している。政府が金を握るというのはこういうリスクとセット。
  • Netflixのバイアウト契約問題。制作費+利益率15%程度で買い切られ、世界的ヒットが出ても韓国側にIPも二次利用権も残らない。韓国コンテンツ産業の売上162.8兆ウォンのうち、IP活用由来は47.7兆ウォン(29.3%)しかない。
  • その結果どうなったか。2026年2月、KOCCAが「日本の製作委員会方式を導入すべき」と提言した。笑い話みたいだけど本当の話です。

日本がダメで韓国が偉い、という単純な話じゃないんですよ。制度の一点で負けているだけ。だからこそ直せるはずなんですが──

で、誰の責任なの? 答え:誰も取らなくていい設計です

「責任者出てこい」と言いたくなりますよね。わたしも思った。だから法律を読みました。

株式会社海外需要開拓支援機構法(平成25年法律第51号)。これ、経産大臣の権限がめちゃくちゃ強いんです。

条文 経済産業大臣の権限
第13条 取締役・監査役の選任・解任の決議は、経産大臣の認可がなければ効力を生じない
第23条 支援基準(何に投資してよいか)は経産大臣が定める
第29条 毎年度の予算は経産大臣の認可事項
第33条 経産大臣が監督し、必要な監督命令ができる
第38条 報告徴収・立入検査ができる

役員を選ぶのも、投資ルールを決めるのも、予算を通すのも、命令を出すのも経産大臣。おまけに政府は株式の約93%を持つ支配株主です。「民間が勝手にやった」という逃げ道は、法律上ありません。

問題は、回収率0.30倍の案件が積み上がっていた2019〜2021年に、第33条の監督命令が使われた記録がないこと。権限があって、使わなかった。それが監督官庁の責任の中身です。

じゃあ実際に投資を決めたのは誰か。「海外需要開拓委員会」という法定機関です。ここが第16条で、取締役会の議決を経ずに投資を決められる。取締役3〜7人で構成され、現在は代表取締役1名+社外取締役6名。誰が何に賛成したかの議事録は公表されていません。

責任を特定できないように設計されているんですよ、最初から。

13年前、国会でこう言っていた

ここが今回の調査でいちばん効いた一次資料。2013年6月11日、参議院経済産業委員会。この法案の審議で、当時の茂木敏充経済産業大臣がこう答弁しています。国会会議録に残っています。

「焦げ付きが最終的に出ると、そうなったら人事的に責任を取ってもらう、当然のことだと思います。」
──茂木敏充 経済産業大臣(当時)/第183回国会 参議院経済産業委員会 第11号(2013年6月11日)

13年経ちました。焦げ付きは540億円出ました。で、誰か責任取りました?

同じ審議で國重徹議員が「500億円の血税を使う」ことによる責任の曖昧化を懸念していて、大臣は報告徴収と監督命令で対応すると答えている。懸念は当時から出ていて、口頭で否定されただけだったわけです。

そしてこの「人事的に責任を取ってもらう」を担保する条文は、機構法のどこにもありません。損失がいくら出たら誰がどうする、という規定がゼロ。

じゃあ官民ファンド全体の横断ルールはどうか。「官民ファンドの運営に係るガイドライン」(2013年9月決定、その後7回改正)を全部読みました。書いてあるのはKPI設定と情報開示と「サンセット条項の下で」という一般論だけ。撤退基準も、経営責任・監督責任の取り方も、一行も書かれていません。

誰も責任を取らずに済む4つの仕掛け
  1. 株式会社なので行政処分が効かない。役員は民間人。国家公務員法も懲戒処分も及ばない。
  2. 政府が「株主」と「監督者」を兼ねている。自分が認可して選んだ役員を、自分で責める構図。だから動きにくい。
  3. サンセットが言い訳になる。法律上2034年3月31日までに全株式を処分すればいいので、「まだ途中です」と言い続けられる。
  4. 決めた人と損が出る人がズレる。これが最強。損が確定するのはEXITのとき。2019〜2021年に決めた案件が2026年に爆発する。その頃には決めた社長はもういない。

歴代社長は太田伸之氏(2013〜2018年、イッセイミヤケ出身)、北川直樹氏(2018〜2021年、ソニー・ミュージック出身)、川﨑憲一氏(2021年〜現在)。図4を見ればわかる通り、時期で成績がまったく違う。だから責任を問おうとすると必ず「前の体制の判断ですので」になる。

前例も見ておきましょう。A-FIVE(農林漁業成長産業化支援機構)。農水省が2020年に検証報告を出して「投資規模・投資収益を過大に見込んだ」「EXIT戦略の不備」と指摘しました。ただしこの報告書、経営陣や担当者個人の責任についての記述は一行もありません。累積損失▲190億円で2025年度末に解散予定。産業革新投資機構(JIC)では2018年に民間出身取締役9人が全員辞任しましたが、あれは役員報酬をめぐる抗議辞任であって引責ではない。政府側の処分もなし。

構造的問題を指摘 → 組織を統廃合 → 個人の責任は問わない。これが日本の官民ファンドの定型処理です。今回も同じ道を通ると思いますよ、わたしは。

2026年7月29日、経産省がようやく検討会を設置しました(座長・土居丈朗慶應大教授、年内に結論)。経産省の井上博雄・商務サービス審議官は「監督責任を持つ経産省として重く受け止める」と挨拶している。法律的にはその通り。あとは実際にやるかどうか。

そして骨太2026。反省ゼロでまた数字だけ出してきた

ここまで読んで「まあ廃止するならいいか」と思ったあなた。甘い。

政府が今なんと言っているか、原典を全部開いて確認しました。

  • 新たなクールジャパン戦略(2024年6月4日 知的財産戦略本部):2033年までに50兆円以上の海外展開規模。中間目標2028年30兆円。おまけに「各国・地域における『日本が大好き』の割合を10ポイント上昇させる」
  • 知的財産推進計画2026(2026年6月12日):2033年までにコンテンツ海外市場規模20兆円
  • 骨太の方針2026(2026年7月21日閣議決定):「知的財産・クールジャパン戦略」の項あり。ただし目標額も財源も具体的な記載なし。「官民連携」で下位計画に丸投げ
  • エンタメ・クリエイティブ産業戦略2026(2026年8月20日 経産省):20兆円目標、民間の「売上3倍・投資3倍」を促す

現状5.8兆円を2033年に20兆円。3.4倍です。7年で。どうやって達成するのかの機序は、原典を読んだ限り書かれていません。

既視感ありませんか。機構だって「2033年度までに累積損失を解消する」と言っていたんですよ。同じ構文です。

そして極めつけ。「新たなクールジャパン戦略」は機構の累積赤字356億円という数字はちゃんと書く。書いたうえで、結論がこれ。

「今後の同機構の政策性・収益性の目標の達成状況を見つつ、関係機関との連携も含め、政策効果を最大化するよう取組を進めていくことが必要である。」
──「新たなクールジャパン戦略」(2024年6月4日 知的財産戦略本部)

なんで失敗したのかの総括はナシ。誰の判断が間違っていたのかもナシ。これらの戦略文書に「反省」「失敗」「教訓」という語は、確認できた範囲でひとつも出てきません。出てくるのは「政策効果を最大化する」という前向きな言葉だけ。

検証しないまま、司令塔だけ増える。コンテンツ産業官民協議会、映画戦略企画委員会。会議体は増えるけど、相変わらず予算配分権を持つ司令塔にはなっていない

唯一の変化は、機構型の直接投資をたたんで、補助金・基金型(クリエイター支援基金、コンテンツ産業成長投資支援事業350.2億円)にシフトしつつあること。方向としては韓国型に一歩近い。でも器を変えただけで検証プロセスが同じなら、結果も同じです。補助金型はすでにJ-LOD liveで会計検査院に23.7億円指摘されているわけで。

とにかく内容が薄っぺらいクールジャパン機構HP(編集部)

じゃあどうすればいいのか

文句だけ言って終わるのは趣味じゃないので、わたしの意見を書きます。

1. 役所は案件を選ぶな。韓国方式でいい。政府はファンドに出資するだけ。投資判断は民間VCがやる。失敗した民間VCは次の資金調達ができなくなるので、市場が勝手に淘汰してくれる。政治家や役所には無理なんですよ、目利きは。13年やって0.30倍という結果が出ている。

2. 撤退基準を法律に書け。「累積損失が計画から〇%乖離したら解散」を条文にする。裁量で判断させるから「まだ途中です」が永遠に続く。

3. 投資決定の議事録と賛否を公表しろ。誰が何に賛成したかが残れば、それだけで判断の質は上がる。名前が残るというのは最強のガバナンスです。

4. 固定費に上限をかけろ。人件費101億円で78件。1件1.3億円。運営経費を投資決定額の一定%以内に縛れば、少なくとも「何もしないで溶かす」は防げる。

そしてもうひとつ。クールジャパンという言葉そのものをやめたほうがいい。あれ、外から見て「クール」なものを内側から「うちの国クールでしょ」と言い出した時点で終わってるんですよ。ポケモンもセーラームーンも鬼滅も、誰も国策で売れたわけじゃない。役所が「日本が大好きの割合を10ポイント上げる」とか言い出すのが、いちばんクールじゃないですよ。

やるべきなのは応援じゃなくて、邪魔しないことと、インフラを整えること。韓国が1999年に規制の7割を廃止したように。字幕と吹替に金を出すように。地味だけど、そっちのほうが効くんです。

まとめ

540億円が消えた。うち238億円は投資ですらなく人件費と家賃。アニメが世界で売れたのは配信のおかげで、政策の効果を示したデータは13年間ひとつも作られていない。責任を取る仕組みは法律にも横断ガイドラインにも書かれていない。

そして2026年、政府は反省の一言も書かないまま「2033年に20兆円」と言っている。

これ、次も同じことになりますよ。賭けてもいい。

主な出典(すべて原典を開いて確認)
  • 経済産業省「株式会社海外需要開拓支援機構について」令和8年2月(出資構成・投資実績・累積損益・必要経費内訳・年度別回収率)
  • 株式会社海外需要開拓支援機構法(平成25年法律第51号)/e-Gov法令API
  • 第183回国会 参議院経済産業委員会 第11号(2013年6月11日)/国会会議録検索システム
  • 会計検査院「官民ファンドにおける業務運営の状況に関する会計検査の結果について」令和7年5月
  • 会計検査院「コンテンツグローバル需要創出促進事業」令和4年度決算検査報告
  • 「官民ファンドの運営に係るガイドライン」(2013年9月27日 関係閣僚会議決定)
  • 「新たなクールジャパン戦略」(2024年6月4日 知的財産戦略本部)
  • 「知的財産推進計画2026」(2026年6月12日)
  • 「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026年7月21日閣議決定)
  • 経済産業省「業界の現状及びアクションプラン(案)【アニメ】」コンテンツ政策小委員会事務局資料(2025年1月)
  • 内閣府「クールジャパン関連予算」/「クールジャパン戦略関連基礎資料」
  • 農林水産省「A-FIVEの検証に係る検討会 検証報告」(2020年7月31日)
  • 日本動画協会「アニメ産業レポート2025」(2024年市場規模 速報値)
  • JETRO「韓国のコンテンツ輸出を牽引するゲーム産業と日韓協力の可能性」/VIPO「2022年韓国コンテンツ産業支援政策調査報告書」/韓国ベンチャー投資(KVIC)

※2026年3月末の累積赤字540億円・当期純損失157億円、投資83件2,040億円、Spiber・ジャングリア等の個別案件金額、検討会の座長名と発言、2027年度概算要求見送り、韓国の年度予算については、機構の発表・官報決算公告・報道に基づいています。本文中で「報道ベース」と明記しなかった数値は、すべて上記の原典で確認しています。

まったく関係ない話

こういう記事を書くと胃が痛くなるので、最近ハマってるものを。昨日もダイエットは筋トレとタンパク質を一緒にやらないとタルタルの体になるというエントリーを書いたのだが、こちらは毎朝飲んでいます。ポーチにも入れていて小腹が減ったらお湯入れて飲んでます。高齢になると若者の2倍のタンパク質を摂らないと吸収できないのは昨日書いた通りです。


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年8月25の記事より転載させていただきました。

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