回し蹴りでスイカを吹き飛ばす。時速45キロで走る。2メートルジャンプする。ユニツリーの人型ロボットには驚くばかり。だが、同社には、より心を沸き立たせるものがある。搭乗し操縦する大型ロボットである。
「ガンダムを操縦したい」
そう思ったことはないか? 同社が「発売」する大型ロボット「GD01」は、その実現に最も近い製品だ。
搭乗できるロボット
身長2.7メートル。重量500キログラム。価格約9000万円(390万元)。胴体のコクピット部にパイロットが搭乗し移動する。2足歩行はもちろん、4足歩行モードにトランスフォーム(変形)可能。ユニツリー社が公開したプロモーション映像を見てみよう。
堅い足音が倉庫から響いてくる。GD01の出陣だ。路上で停止した機体にパイロットが乗り込む。コクピットにドアは無い。フレームの間から体を入れるその様子は、やや窮屈そうだ。パイロットを乗せたGD01は、夕暮れの街を2足歩行で闊歩する。駐車場と思しき場所で、ブロック塀を殴り倒す。路上で体をのけぞらせ、地面に両手を着けブリッジし、4足歩行モードへトランスフォーム(変形)する。この変形で、天井が低い建物内や険しい地表上も移動が可能となる。変形した機体に再びパイロットが乗り込もうとするシーンで映像は終了する。
ユニツリー社は以下のように語っている。
「これはコンセプトモデルではなく、実際に量産が可能な一般向けの移動手段だ」
さて、このGD01は「本物」か。
「安全ではないかも」
独占取材したTIME誌によると、GD01は強化鋼梁(重いものを支えるための梁)に吊下げられており、取材陣による操作はもちろん中に入ることさえ拒否された。理由は「安全ではないかもしれないから」だという。安全ではない? 改めて映像を見直すと、いくつか気になる箇所がある。
例えば、パイロットが側面からよじ登る仕様だ。
バランスを崩し機体が倒れることはないのか? 2足歩行時の映像では、パイロットが全く動かない。ヘルメットをかぶせた人形ではないのか? のけぞって4足歩行モードになると座席も仰向けになる。パイロットは空を見上げながら操縦するのか?
等々。
過剰演出への警鐘
AIやロボットの過剰「演出」に警鐘を鳴らすのは、ロボット研究の第一人者であり、iRobot社の創業者でもあるロドニー・ブルックス博士である。グーグルやテスラの自動運転デモについて、以下のように語っている。
「カーテンの後ろの見えないところに多くのものが隠れている」
『人工知能のアーキテクトたち』オライリージャパン
インチキではない。だが、デモの背後には、多数の技術者チームが付いており、非常に手が込んでいる。この先私たちは、印象的なデモをいくつも目にすることになるだろう。だが、それらは実用には程遠いものである、と。この警鐘は、昨今の人型ロボットブームにも当てはまる。
演舞と家事はどちらが難しいか
ロボット大会等で、人型ロボットが見せた演舞は、まるで拳法の師範のように滑らかだった。だが洗濯物をたたむ様子は、幼児のようにぎこちなかった。大阪万博に出展した、バイクメーカーKawasaki(川崎重工)の4足走行ロボット「コルレオ」のコンセプト映像は、心躍るものだった。だが出品されたモックアップは腰を上下させることしかできなかった。
1960年代、1980年代。これまで、AIには過度な期待と失望が繰り返されてきた。昨今の、大袈裟なデモ映像・過剰な報道により急騰した期待値は、いずれ失望に繋がり、AIの技術進歩を遅らせかねない。
8月19日、上海市場に上場したユニツリーの株価は、時価総額が8兆円に跳ねあがった。だが、翌20日、ユニツリーCEO王氏が「転換点は早くて2~3年、遅ければ5~10年先」と発言した後、18.7%急落している。
ユニツリーは生産量で世界をリードしており、25年には5500台以上を出荷している。だが購入者の7割は、大学・研究機関・開発者。いわば、ロボットを作るため、あるいは、ロボットの使い方を模索するため買った人たちだ。産業向け・家庭向けロボットは、まだ「OJT」すら始まっていない。
人型ロボットのダンスにはもう飽きた。「実力を見せてくれ」。そう言えるのは、何年先になるだろうか。
【参考】







コメント