群馬県富岡市の市庁舎で発生した軒裏の雨染みや鉄部のさびについて、設計を担当した隈研吾建築都市設計事務所が修繕費を全額負担することになった。施工者のタルヤ建設は「設計図書にのっとって施工しており、施工時にミスはなかった」として負担を拒否した。
隈研吾氏といえば「木の建築」で知られるが、その代表的な建築物では近年、木材の腐食や変色、維持管理をめぐる問題がたびたび話題になっている。

富岡市役所 隈研吾建築都市設計事務所HPより
富岡市庁舎は「木が腐った」わけではなかった
富岡市庁舎は2018年完成。2024年には「外装の木材が腐っている」とSNSで話題になったが、市の調査では木ルーバー自体に腐食は確認されなかった。

問題は軒裏だった。野地板合板に含まれていた不燃薬剤が金物の塗料を溶かして鉄部を腐食させ、さびによって水切りの隙間が塞がれた結果、雨水が軒裏へ回り込み、雨染みが生じたと推定されている。

市は2025年に試験施工を実施し、約1年間問題がないことを確認したうえで、2026年7月から本格修繕に入った。隈事務所は施工会社にも費用負担を求めたが拒否され、早期修繕を優先して全額負担することになった。
馬頭広重美術館では木製ルーバーをアルミに交換
より象徴的なのが、栃木県那珂川町の「馬頭広重美術館」だ。2000年に完成した隈氏の代表作で、屋根や外壁に大量の木製ルーバーを使用していた。

しかし約20年を経て、特に屋根部分で腐食や欠損が目立ち、雨漏りも発生した。大規模改修では、雨や紫外線にさらされる屋根部分を木材ではなく、木目を印刷したアルミ製ルーバーに変更した。

木で復元した場合、定期的な防腐処理や部材交換に多額の費用がかかるとの試算もあり、「木の建築」は建設費だけでなく、数十年単位の維持費まで考える必要があることを示している。
東大の隈建築でも風雨にさらされた木材の劣化が指摘
東京大学本郷キャンパスの「ダイワユビキタス学術研究館」でも、外装に木材が多用されている。報道では、風雨にさらされる部分を中心に変色や劣化が目立つ状況が指摘された。

ただし、これは行政が設計上の不具合と認定したものではなく、富岡市庁舎や馬頭広重美術館と同列に扱うことはできない。
それでも、外部に木材を露出させる建築が、雨や紫外線、湿気との長期的な戦いになることは確かだ。
問題は「木」ではなく材料工学とメンテナンス設計
富岡市庁舎の問題は、「木が腐った」という単純な話ではない。不燃処理木材、塗料、金物、水仕舞いを一つのシステムとして適切に設計できていたのか、という問題である。
隈事務所も今後、不燃木材を使用する際には鉄部を腐食させる薬剤が使われていないか、薬剤が溶脱する環境ではないかを事前に確認するとしている。
木を使うこと自体が悪いわけではない。しかし公共建築は美術作品ではない。何年もつのか、何年ごとに修繕するのか、その費用を誰が負担するのかまで含めて設計されるべきだ。
馬頭広重美術館が最終的に「木そっくりのアルミ」を選んだ事実は象徴的である。隈研吾建築をめぐる一連の問題が問うているのは、木材の是非よりも、公共建築のライフサイクルコストに対する認識なのである。







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