円安をめぐる日米関係が、新しい段階に入った。G20財務相・中央銀行総裁会議に出席した片山さつき財務相は、記者会見で日本の財政に対する各国の懸念について「驚くほどなかった」と述べたが、実際はどうだったのか。

NYTimes
NYTが描いた「通貨戦争の中心人物」
ニューヨーク・タイムズは9月1日、片山氏を「日本の通貨をめぐる攻防の中心にいる女性」として大きく取り上げた。片山氏は積極財政を掲げる高市早苗首相と、円安是正を求めるワシントンという十字砲火の間でバランスを取らなければならない。
実際、7月の日米協調介入でいったん155円台まで戻った円は、再び160円前後まで下落した。為替介入だけでは円安を止められなかったのである。
そこで米国は、次の段階に踏み込んできた。ベッセント米財務長官は植田和男日銀総裁との会談で、円の大幅な過小評価に対処するため、日本が金融政策で「断固たる措置」を取ることを支持すると表明した。事実上、日銀の追加利上げを歓迎するメッセージである。
さらにベッセント氏は、日本はデフレ脱却のための「リフレ政策を終えるべきだ」とまで発言した。これは日銀だけでなく、高市政権の財政政策を批判している。
財政懸念ではなく「政策の矛盾」が問題
ここで片山氏の「日本財政への懸念は驚くほどなかった」という発言が興味深い。確かに日本国債が明日にでも暴落すると考えているG20参加国はほとんどいない。しかし市場を見ると、10年国債利回りは9月1日に3%に達した。1996年以来の水準である。
市場が警戒しているのは単純な「財政破綻」ではない。高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、巨額の成長投資を進める。他方で円安による物価上昇を抑えなければならない。そのためには日銀が利上げする必要がある。
ところが利上げすれば国債金利も上がり、財政が行き詰まる。これが高市政権をインフレで政府債務を踏み倒す冒険的な政策に追い込む可能性もある。そのとき世界のマネーが円から逃げて円は暴落し、世界経済に大混乱が起こるだろう。
ベッセント氏の狙いは円高だけではない
米国にとっても円安は日本だけの問題ではない。日本の金利が上昇すれば、日本の投資家が米国債から国内債券へ資金を戻す可能性がある。そうなれば米国債が売られ、米国の長期金利にも上昇圧力がかかる。
Reutersは、日本が金融政策の主導権を米国に譲りかねないほど、ワシントンからの圧力が強まっていると指摘している。
ベッセント氏は円相場だけを見ているのではない。日本の財政と日銀の金融政策に対して、明確に警戒の声を上げ始めた。
財政と金融の板ばさみになる片山氏
片山氏はベッセント氏との会談後、「秩序だった円相場は米国を含む世界の金融市場の安定のために不可欠」との認識で一致したと説明した。これはかなり異例の関係である。
本来、為替は財務省、金融政策は日銀、財政政策は政府がそれぞれ担当する。しかし高市氏は「積極財政」の旗を降ろさず、日銀は利上げモードに入った。アクセルとブレーキの板ばさみになっているのが片山氏である。さらにそこへ米財務省が入ってきた。
NYTが片山氏を「通貨をめぐる攻防の中心」と呼ぶのは大げさではない。今、市場とワシントンが問うているのは為替レートだけではない。
高市政権は積極財政を続けながら、円安とインフレを止められるのか。
その答えを出す役割を背負わされているのが、今や片山さつき財務相なのである。






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