「出馬しない」とは言わない山中竹春 横浜市長、辞職は「再選への助走」か

職員へのパワーハラスメント問題を受け、横浜市の山中竹春市長が7日、辞職した。山中氏は記者団に対し、「私の言動によって市民や職員、議会からの信頼を失墜させることになったことを心からおわび申し上げる」と謝罪し、退職金も受け取らない意向を明らかにした。

山中竹春横浜市長インスタグラムより

これだけを見れば、パワハラ問題の責任を取って市政から退くようにも見える。

ところが、話はそれほど単純ではない。辞職に伴う市長選は10月4日告示、18日投開票の日程で予定されており、山中氏は再出馬するかどうかを明言していない。

辞職は政治家としての「けじめ」なのか。それとも、有権者の審判をもう一度受けるための「助走」なのか。横浜市政の関心は早くも次の選挙へ移りつつある。

「出馬しない」とは言っていない

山中氏は辞職後、今後について「まだ考えられる状態にない」と述べるにとどめた。8月に辞職を表明した際にも、今後については「全くの未定」としている。

政治家が完全に身を引くのであれば、「次の市長選には出馬しない」と表明することはできる。ところが山中氏は、その一線を越えていない。

もちろん、これだけで再出馬すると断定することはできない。しかし、少なくとも選択肢を閉じてはいないと見るのが自然だろう。

さらに、山中氏の有力な支持基盤とされてきた横浜港運協会など港湾関係3団体が、パワハラ問題への反省を条件として再出馬を要請したとの報道もある。

本人は「白紙」、支援者は「再出馬要請」。少なくとも水面下では、すでに次の選挙を意識した動きが始まっている。

前回の「相乗り選挙」はもうない

もっとも、仮に山中氏が再出馬しても、2025年の市長選とは条件がまったく異なる。

前回、山中氏は66万票余りを獲得し、得票率52%で再選した。自民党、立憲民主党、公明党など幅広い勢力から支援を受け、事実上の「相乗り候補」だった。

今回は、その支援構造が崩れている。

パワハラ問題を受け、自民、公明、立憲民主の市議会各会派はいずれも山中氏に辞職を求めた。自民党側では別の候補者擁立が検討され、立憲民主党も独自候補を立てる方向で動いている。

つまり、前回山中氏を支えた巨大な選挙マシンが、そのまま再稼働する可能性は低い。

再出馬するとしても、「現職市長の再選」ではなく、事実上、組織を失った前職が市民に直接信を問う選挙になる。

候補乱立なら山中氏にも勝機?

一方で、皮肉なことに政党側がそれぞれ候補を立てれば、山中氏に有利に働く可能性もある。

横浜市長選は決選投票ではない。過半数を取らなくても、最も多く票を集めれば当選できる。

自民系、立憲系、共産系、無所属など候補者が乱立し、反山中票が分散すれば、知名度と一定の支持基盤を持つ山中氏が競り勝つシナリオも完全には否定できない。

ネット上でも、山中氏の再出馬を予想する声が出る一方、「パワハラで辞職してすぐ出直し選とは何だったのか」と疑問視する声も目立つ。

まさに、出馬すれば選挙そのものが「山中市政4年間への評価」ではなく、「辞職によって禊は済んだのか」を問う住民投票に近い構図になる。

辞職はゴールか、それともスタートか

近年は、不祥事や問題を抱えて辞職・失職した首長が、出直し選に立候補し再び当選するケースも珍しくなくなった。

そこで登場するのが「有権者の審判を受けた」という論理である。

しかし、選挙に勝てばパワハラ問題そのものが消えるわけではない。市長には政策遂行能力だけでなく、数万人規模の市役所組織を率いる管理能力も求められる。今回問われたのは、まさにその部分だった。

山中氏は本当に政治家として責任を取るために辞職したのか。それとも、いったん職を辞して「禊」を済ませ、再び市長室へ戻ることを考えているのか。

本人はまだ答えを示していない。

ただし、港湾関係団体から再出馬要請が出ている以上、10月の横浜市長選で「山中竹春」の名前が再び投票用紙に並ぶ可能性は、決して小さくなさそうだ。

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