黒坂岳央です。
Xで「資産1億円と高年収のどちらに価値があるか」という議論があった。これは面白い問いだ。
資本主義システム上は明確に資産1億円といえる。年収1000万円は明確に高収入だが、1億円貯めるには仮にものすごくケチって年間500万貯金出来ても20年かかる。ケチらずに年500万円を貯めようと思えば、現実的に年収は1500万円ほど必要だ。
つまり今1億円持っている人は、年収1500万円の人間が20年間蓄財し続けた金額をすでに手にしているのに等しい。
だが、人の感情、感覚は教科書通りでないのが面白いところで筆者は「人の魅力なら資本家より高年収が勝つ」と思っている。
これは筆者だけでなく、たとえば婚活市場という他者評価の場においてもおそらく同じ結論になるはずで「資産家よりシゴデキの方がニーズがある」と思っている。
なお、本稿で言う「資産1億円」とは、1億円を達成した上で仕事をやめた、あるいは大幅にセーブした専業投資家を指す。高収入かつ1億円が通過点という人間は議論の対象外だ。

理由1. 資産1億円は「使えないお金」
まず30代、40代で1億円を貯める人は間違いなくすごい人だ。同世代の中でも上位一握りだろう。これ自体は誇ってもいいことだと思う。
それなのになぜ、魅力に乏しいと感じるのか?理由は資産1億円は「使えるお金」ではないからだ。当然だが使えば減る。取り崩した分だけ資産は目減りし、複利の力は弱まる。専業投資家にとってこの1億円は極端に言えば「使えない見せ金」に近い。
「その1億円はいざという時に使えるから安心材料だ」という反論もあるだろう。だが人が他人に魅力を感じる瞬間は、命綱の有無ではなく日常の質だ。日常的に役に立つのはキャッシュフローであって、使えない元本ではないのだ。
理由2. 人の魅力は人的資本
その人が魅力的かどうかは2つの要素がある。
1つ目は「現役」であることだ。よく言われる話で「あの人は昔はすごかった」みたいな話を考えると「元エリート」から感じる魅力のなさは分かるはずである。
現役で頑張っている人は男女関係なく、大変魅力的に映る。一緒にいればいろんな話が聞けるだろうし、面白いエピソードも飛び出してくるだろう。社会を支える一員という人としてのリスペクトもある。人的資本が魅力という自体が、その人に付帯する魅力そのものなのだ。つまり収入があるというだけでなく信用、面白さ、リスペクトなどその人自身の魅力になる。
一方で「もう働くのはやめました」という専業投資家のようになると、周囲は「ただの無職」という見え方になる。実際はお金を持っているかもしれないが、その人の人的資本力はゼロに近いという事実は変わらない。そうなると実際には「資産家」でも「無職」という見え方になってしまう。
これは個人の体験の域を出ないが、やはり現役のビジネスマンの方が専業投資家より面白いし、魅力的だと感じる。「今度、こんな事やろうと思っている」とか「AIはこのように活用している」といった相手からの話は刺激を受けるし、学べる点も多い。
一方で専業投資家の話題は端的に「ケチる話」が多い。ポイントを活用するとか、節税がどうといった話が中心である。その人が何をするのももちろん自由だが、一緒にいて学びになるとか面白いと感じることは少ない。異論は認めるが「人生経験が薄っぺらくなりやすい」と思っている。いつ会っても「自分の資産は」という話が多くなりがちだ。これは興味を持つのが難しい。
そして高収入ビジネスマンが魅力的なもう1つの理由は「使えるお金」を持っていること。羽振りよくお金を使う人も多いので、一緒に旅行へ行ったり雰囲気の良いお店で食事に誘うこともあまり遠慮しないで済むのだ。一方で専業投資家は「資産を減らしたくない」という人が多いので、正直お金を使わせるのが申し訳ないと遠慮することが多い。
年齢によって価値は逆転する
ここまでの話は一貫して「高収入の方が魅力」という話をしてきたが、あくまで30代、40代までの比較的若い小金持ちに焦点を当ててきた。一方でシニア層となると話はまったく異なる。
若い人だと稼ぐ力が大きいし、その期間も長い。筆者は40代だが、資産運用よりも遥かに仕事に熱中している。理由は単純で、頑張れる時期、市場価値がある時期に頑張っておきたいからで人的資本には賞味期限がある。まだやりたい仕事がある。
一方で50代以降になると話は逆転する。50代で年収1000万円でも、残された稼働年数はそう長くない。ざっくり1年に残るお金が200万円前後であと10年で退職なら、そこから得られる生涯収入の上限はある程度見えてしまう。それに対して資産1億円は、今この瞬間に確定している価値で運用で増やせる。人的資本が目減りしていく年代においては、金融資本の方が相対的に価値を持つようになる。
つまり「資産か年収か」という問いに唯一の正解はなく、年代によって最適な評価軸が変わるということだ。
◇
人が相手に魅力を感じるのは資産額より、市場価値という人的資本力の方だ。極論、資産5億円持っていて年収0より、大した資産はなくともメディア露出が多い著名人の方が遥かに人が集まる。
人は過去の結果としての資産額ではなく、そこに至るまでのプロセスと、今この瞬間に発揮できるフローとしての市場価値で価値を判断するのである。
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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)







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