カナダは変貌するか?:日本も見習うべき一致団結して問題解決に向かう姿勢

カナダでカーニー首相が就任した時、私は最大級の賞賛と期待をこのブログに書き込みました。氏がまだカナダ中銀の総裁だった時の手腕、その後、請われて英国の中銀総裁に外国人として初めて就任するなど華々しいキャリアを積んできました。前任のトルドー首相が人権重視型で父親の七光りとも揶揄され、外交ではトランプ、習近平、モディ各氏と不仲になるなど首相就任期間中、私は苦しいものを感じていました。

カーニー氏がそのバトンを継いだ時、一部のカナダ人からは不平が出ていました。多分、トルドー氏と比較し、カーニー氏はエリートすぎるのかもしれません。ただ、私は国家の操縦桿を握る人はその国家で最も賢い人がなるべきだと思っています。賢いとは知識よりも戦略を練り、5年後、10年後を考え、かつそれを実行できる人であります。また人徳があり、強固なチームを作り上げることも重要です。

カーニー氏は国内外でそれぞれ大きな問題を抱えています。1つはトランプ氏との軋轢。これは皆さんは既にご存じかと思います。もう1つがアルバータ州の独立運動です。これは日本ではほとんど報じられていないので知らない方が殆どでしょう。

アルバータ州は長年連邦政府に対して不満を持っていました。「俺たちの州から生まれる原油、ガス、資源でカナダを潤しているのに連邦政府は冷たい。ならば独立するぞ」と。この問題は根が深く、特にアルバータ州のスミス首相の不明瞭な言動なども影響し、一時期大混乱をきたしました。結果として10月に州民投票を行い、独立するプロセス(リファレンダム)を実施するかを決めます。仮に独立投票実施が賛成となれば州政府は現状、6か月程度の期間でリファレンダムを実施するとしています。カーニー首相はもちろん反対で、反対派のその理由の根源を探り、様々なオファーを打ち出しています。現状の世論調査からは賛成派が過半を握ることはないと思います。

アルバータ州独立問題が思惑通り片付けば、カーニー氏は経済においてアメリカ依存度が7割を超える状況を変えるために全力でその構造的変革を図るはずです。それは今年のダボス会議での有名なスピーチ、中規模の先進国は中規模同士で連携していくべきだ、という指針を推し出すことになるでしょう。

高市首相とカナダのマーク・カーニー首相 2026年3月6日 首相官邸HPより

先般、カナダの4大空港(トロント、モントリオール、バンクーバー、カルガリー)の運営権の売却方針を打ち出しました。理由はその資金でもって地方空港の整備を行い、カナダの航空運輸を活性化させ、運賃を下げ、経済流通度を高めるためであります。

更にEUのフォンデアライエン欧州委員長が「カナダをEUの準加盟国にご招待する」と発表しました。多分、この話も突然生まれたわけではなく、カーニー首相があしげく欧州に通って下地を作ってきた成果の一つだと思います。

実際に「準加盟国」が何を意味しているのか、EUにその定義がないので判断できませんが、思うに貿易についてEU域内と同等の便益をもらうのではないかと思います。通貨と人の往来は難しいと思います。一方で東部カナダはケベック州の在り方を含め、喜ばしい話だろう察しています。

次いで、トレードパートナー国の戦略的増大もあります。カーニー氏は「米国以外の国への輸出を今後10年で倍増させる」と公表していますが、今年上半期のカナダから中国への輸出額が前年比30%増となり過去最高になっています。また中国製EVをごく少量ですがカナダ国内で販売することを認めています。この際、トランプ氏はカーニー氏をぼろくそに言ったのですが、ごく最近、トランプ氏は中国のEVをアメリカ国内で作るなら構わない、と発言しトランプ氏の方向転換が明白になっています。つまりアメリカも焦っているのです。

カナダは変貌するか、といえば少なくともカーニー氏の指導下では大きく居所を変えると思います。それはトランプ氏がくれた教訓でもあります。今までアメリカに甘え過ぎていたのだという意識を強烈に打ち出しました。事実、カナダ国民の8割がカーニー氏の対米政策に賛同し、カーニー政権の支持率も6割以上をキープしています。

私は窮地に追い込まれた強みが今、出ているのだと考えています。そしてトランプ氏に決して負けないという意識を感じるのです。ホッケーの世界対抗戦で一番盛り上がるのはカナダ対アメリカです。カナダ人はアメリカを良き友と思うと同時にライバル心をむき出しにしています。もちろん、人口も経済規模も10倍大きな相手です。まともにぶつかればかなうわけない、だけどカナダ人が一致団結して問題解決に向かおうという姿勢は買うべきでしょう。

日本もどこか見習うところがあればよいですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年9月17日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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