美智子さまのプロトコールへの誹謗中傷に反論する

カーテシーや外国王族との接し方は非礼なのか

先日、『紀子さまのプロトコールは酷いというデマに反論する』という記事を書いたが、今度は、やはり、『誤解だらけの皇位継承』(清談社)の内容も踏まえつつ、美智子さまのプロトコールについての誹謗中傷への反論である。

カーテシー(女性が礼儀や敬意を表すために片膝を少し曲げて体をかがめる挨拶)については、紀子さまのそれが大げさで優雅でないとネットでは攻撃がやまないが、先の記事でも書いたとおり、日本の女性皇族がやや古典的な深いカーテシーを好む傾向があるが、それは別に非礼なわけではない。

ただ、皇后は普通、カーテシーはしない。美智子さまも雅子さまも、画像で出てくるのは皇太子妃時代のものであって、皇后になってからは確認できない。したがって、「美智子さまがエリザベス2世にカーテシーをしなかった」という批判は見当外れである。

「外国王族に触れてはいけないのに握手したり手を添えている」というのもあって、たしかに、ミシェル・オバマ夫人がエリザベス女王の背に腕を回したことはやや問題視されたが、王室同士では問題にならない。

ベルギーのマティルド王妃と手を組まれたと批判する人もいるが、親子以上に年長の美智子さまが若いマティルド妃に手を差し伸べて組んでも、何の問題もない。

デンマークのメアリー皇太子妃(現王妃)と雅子皇后が会ったときに、本来ならば、まず、メアリー妃がカーテシーをし、そのあと、互いにチークキスをしてもいいのだが、先に互いにチークキスをしてしまい、そのあと、いったん離れて、メアリー妃が雅子さまにカーテシーをし、雅子さまが笑顔で応じた。

順番を間違えているが、とくに非礼ではない。美智子さまも皇太子妃時代は、深いカーテシーをされていたが、皇后になってからはされていない。雅子さまと同じである。

天皇陛下(現上皇)より先に外国要人へ話しかけたり、会話に割り込んだりすると批判する人もいるが、4人での歓談に、皇后は天皇から話を振られるまで口を利いてはいけないという国際儀礼はない。

また、「天皇や外国君主より前に出る」と言う人がいるが、正式な入場などの場合ならともかく、流れでたまたま美智子さまが前に出られても何という話でもない。

上皇上皇后両陛下ご近影(令和8年) 宮内庁HPより

美智子さまの皿形の帽子は奇妙なのか

服装について、「皿帽子は正式な帽子ではない」とか「ケープ・マントを着るのは礼装にならない」という批判がある。

女性皇族は日中の正式な行事で帽子を着用するのが普通だが、美智子さまが皇太子妃になられた直後の1960年代には、モダンなタイプの帽子が流行した。それが、最近は新型コロナ以来、少し大きくなっている。

美智子さまの皿形の帽子は、国民とできるだけ距離を狭めたいという希望で考案され、やや大きな帽子が再流行しても独自のスタイルとして進化し、「美智子スタイル」として定着したもので、個性的だが、とくにマナーの問題として問題になるものではない。

美智子さまは、ケープ、ストール、ボレロ等を好まれるが、不自然だという人もいる。たしかに目立つ趣味ではあるが、外国人から見て奇異なものではない。

1981年のチャールズ皇太子・ダイアナ妃結婚式で、美智子さまが白い色の服装だったことが花嫁に失礼だと問題にした人がいるが、日本では白は花嫁専用と言われるものの、欧米ではそのようなことはないし、ダイアナとチャールズの結婚式の写真でも白い服の人は多かった。また、ヘンリー王子とメーガンの結婚式では、キャサリン妃が真っ白なドレスを着ていた。

両陛下は1993年9月3日、カステル・ガンドルフォの夏季宮殿でヨハネ・パウロ2世と会見されているが、このときに、美智子さまが淡いブルー系のスーツと白系の帽子だったので、SNSで「真っ白なドレスを着た」と批判されている。

これについては、たしかにやや異例である。教皇は白い独特の服装で、それを目立たせるためにも、長袖の黒い服と黒いヴェールが普通である。ただ、慣習的にカトリック国の王妃だけは白い服装を着ることが習慣である。

ただ、黒だと決まっているわけではなく、たとえば、ライサ・ゴルバチョワが1989年に赤を着ているし、1997年にアイルランド大統領メアリー・ロビンソンが深緑で教皇に謁見した際にも、バチカン報道官は問題ないとしている。

もともとカトリック系の学校で育った美智子さまが、カトリックに対する愛着をそういう形でアピールしたかったのかもしれない。いずれにせよ、非礼ということはありえない。

ベルギー王妃の葬儀に私的に出席したのはおかしいのか

ベルギーのファビオラ元王妃が2014年12月5日に亡くなり、12日に国葬が行われたが、このときに、美智子さまは、陛下と一緒ではなく、お一人だけで葬儀に参列されている。これについて、必要のない私的な旅行で、オランダ国王の招きでオランダを私的に訪問された皇太子(当時)ご夫妻が批判を浴びていたのとの比較で、こちらこそ問題という批判をする人がいる。

ベルギー元王妃の国葬に参列された美智子皇后 ANNニュースチャンネルより 2014年

しかし、これは、ファビオラ王妃とベルギー王室が日本の皇室に見せてくれた格別の好意への返礼である。

戦後、昭和天皇は欧州歴訪を望んでおられたが、戦争の記憶があり、なかなかきっかけがつかめなかった。大阪万博のときに、ベルギーのアルベール皇嗣殿下が来日されて、その話を聞き、帰国後に兄のボードワン国王及びファビオラ妃と相談して、ヨーロッパ各国の王室に根回しし、国王から正式の招待を昭和天皇に出すことで欧州歴訪が実現したのである。

また、天皇陛下の英国留学のときも、各王室との交流を深めることはそれほど簡単ではなかった。それをベルギー国王ご夫妻が頻繁に招き、各王室との交流が円滑に行くように手引きしてくれたのである。そのあたりは、陛下の著書である『テムズのほとりにて』や私の『英国王室と日本人:華麗なるロイヤルファミリーの物語』(小学館)を読むと分かる。

こうした経緯からすれば、美智子さまが異例であっても単独で葬儀に参列されたことは、まったく私的な好き嫌いに基づくものではなく、批判の意味がわからない。

ヨーロッパ王室との交流に残る課題

ここまで、美智子さまのプロトコール的な問題として指摘されることは誹謗中傷にすぎないことを書いてきた。

しかし、それなら、日本の皇室がヨーロッパの王室などとの交流に問題がないわけではない。

なにしろ、ヨーロッパの王室の人々は、かなりマッチョで、たとえば、狩猟が好きだったり、軍隊の最高司令官でもあったりするから、そういう素養もある。また、お付きなど連れずに、友人たちと遊ぶのも好きである。

そういう意味で、たとえば、陛下が自動車の運転をされないなどというのは、陛下の留学生活を少し制約したように思うし、あるいは、美智子さまのピアノ演奏とか詩作といった趣味なども、どちらかといえば、ブルジョワ的な色彩のものである。雅子さまが伝統的なヨーロッパの貴族文化に精通されているわけでもない。

もっとも、現在ではヨーロッパの王族のほうが、庶民との結婚を繰り返して付き合いやすくなっている。キャサリン妃は狩猟が大嫌いだそうである。

そんななかで、両陛下が皇室外交のなかで特別にヨーロッパの王族との交流を重視されたり、悠仁さまが運転免許を高校生のときに取得して、普通の活発な青年としての活動を重視されているのはいいことだと思う。

あとは、願わくば、大学卒業を待たずに、短期の留学でもして、卒業後の本格留学の予行練習でもされるとよいと思うし、愛子さまには、もっと自由に独り立ちして行動されるといいと思う。


誤解だらけの皇位継承の真実(増補改定版)


系図でたどる日本の皇族


誤解だらけの沖縄と領土問題(増補改定版)

【関連記事】

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント